判旨
裁判所が判決の理由を述べる際、第一審判決の理由を引用しつつ、これと矛盾しない範囲で独自の説示を付加して結論を導くことは許される。また、事実認定において個々の証拠判断の理由をいちいち明示しなくても、結論に至る理由が理解可能であれば違法ではない。
問題の所在(論点)
控訴審判決において第一審判決の理由を引用し、付加的な説示のみを行う手法が「判決に理由を付さない」等の違法にあたるか。また、事実認定において証拠判断の具体的な理由を個別に説示する必要があるか。
規範
判決書に記載すべき「理由」(民事訴訟法253条1項6号、旧民訴法191条1項6号)とは、当事者の主張に対する判断を示し、主文を導き出すプロセスを明らかにするものである。控訴審において、第一審判決の理由を引用し、これに自らの説示を付加して結論を維持することは、理由の記載として適法である。また、事実認定の基礎となった証拠の判断理由を個別に明示することは、必ずしも必要ではない。
重要事実
上告人は、原審(控訴審)が所得金額を認定するにあたり、第一審判決の理由を引用したこと、および証拠判断の理由を個々に明示しなかったことを不服として上告した。上告人は、このような判決のあり方が、判決に理由を付さない、あるいは理由に食い違いがあるなどの違法(旧民訴法395条1項6号相当)に該当すると主張した。
あてはめ
原審は第一審判決と矛盾しない独自の判断を付加しており、これらを総合すれば第一審の結論を維持した理由は容易に理解できる。したがって、引用による構成は不当ではない。また、所得金額の認定についても、挙示された証拠に基づき妥当に行われており、個別の証拠判断の理由を明示せずとも、認定プロセスの合理性は損なわれない。
結論
本件原判決に理由不備等の違法はなく、上告を棄却する。
事件番号: 昭和32(オ)1156 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として主張された憲法違反が原審で未主張の事実を前提とする場合、または原判決に影響を及ぼさない事実を前提とする場合は、上告理由として不適法である。 第1 事案の概要:上告人が原判決に対して上告を提起し、憲法違反を主張した事案。しかし、その主張の前提となっている事実は、原審(控訴審)では主張さ…
実務上の射程
民事訴訟における「理由の不備・食い違い」の主張に対する防御として重要である。実務上、控訴審が第一審判決を引用する実務(民訴法297条、253条2項)の適法性を支える判例である。事実認定の過程における「証拠の取捨選択の理由」を詳細に書く必要まではないという判断枠組みとして、答案上の「理由不備」の検討において活用できる。
事件番号: 昭和41(行ツ)109 / 裁判年月日: 昭和42年9月8日 / 結論: 棄却
行政処分は、法令に別段の規定がある場合のほか、その理由附記を欠く故をもつて違法となるものではない。
事件番号: 昭和32(オ)953 / 裁判年月日: 昭和34年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】青色申告書の提出がなかったという原審の事実認定に不服を申し立てる上告については、単なる事実誤認の主張にすぎないため、上告理由として採用されない。 第1 事案の概要:上告人は、所得税等に関して青色申告書を提出したと主張したが、原審は青色申告書の提出がなかったものと事実認定した。これに対し、上告人が原…
事件番号: 昭和40(行ツ)5 / 裁判年月日: 昭和47年3月31日 / 結論: 棄却
法人税青色申告についてした再更正処分の通知書に、その理由として、「借地権計上洩金三三〇万円」等と記載されており、また、その再調査請求棄却決定の通知書に、その理由として「(株)B工業所並びに(株)Gはともに同族会社であり、資産の譲渡による行為計算は同族会社の行為計算否認に該当するとした当初の処分は相当であり、計算過程によ…