判旨
普通郵便による発送および還付の不存在という事実のみから、直ちに当該郵便物の到達を経験則上断定することはできない。
問題の所在(論点)
普通郵便が発送され、かつ還付されなかったという事実や、近隣への同時発送郵便が到達したという事実がある場合に、経験則に基づき当該郵便物の到達を断定・推認できるか。
規範
意思表示の到達(民法97条1項)に関し、書留郵便と異なり普通郵便においては、発送後に返送されなかったことや、同時期に近隣へ発送された他の郵便物が到達したという事実があったとしても、それらのみを理由として当然に到達の事実を推認すべきとの経験則は認められない。到達の事実は、証拠に基づき個別具体的に判断されるべきものである。
重要事実
上告人は、被上告人に対し決定通知書を普通郵便で発送し、これが返送されなかった事実がある。また、被上告人の近隣に住む第三者Eに対しても同時期に同様の通知を発送しており、Eには予定通り到達していた。上告人は、これらの事情から被上告人への到達が推認されるべきだと主張したが、原審は証人尋問に基づき、当該通知は被上告人に到達しなかった事実を認定した。
あてはめ
本件において、上告人が主張する「発送済・未還付」および「近隣への到達」という事実は、郵便制度の一般的な信頼性を背景とするものであるが、それらのみをもって直ちに「被上告人へ到達した」と断定することはできない。むしろ原審における証人の証言等の諸事情を総合すれば、本件通知書は結果的に被上告人に到達しなかったという認定が可能である。上告人の主張は、原判決が採用していない推定を前提とするものであり、経験則に反するとはいえない。
結論
普通郵便の発送および未還付等の事情があっても、他の証拠により不到達の事実が認められる場合には、到達したと断定することはできず、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、到達の立証には書留郵便(内容証明等)を利用することが通例であるが、本判決は普通郵便の場合に到達を当然に推認する経験則を否定している。答案上では、到達の成否が争点となる場合に、発送側の立証責任の観点から、普通郵便のみでは立証として不十分である(推認力が弱い)ことを指摘する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)1259 / 裁判年月日: 昭和38年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】課税処分における所得金額の推計に関し、被上告人が採用した所得標準率の作成方法が適正である限り、これを用いて農業所得を算出することは、推計の手法として不相当とはいえず適法である。 第1 事案の概要:上告人は農業所得等の金額算出において、被上告人が採用した所得標準率に不服を申し立てた。具体的には、麦の…
事件番号: 昭和29(オ)64 / 裁判年月日: 昭和31年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】課税処分における所得額の算定について、仕入商品に対する利益率を推計により認定すること、および雑損金の有無を原審の判断に委ねることは、法令の解釈に関する重要な主張を含まない適法なものとされる。 第1 事案の概要:上告人は、税務当局による所得算定の基礎となった利益率の推計方法および雑損金の不算入につい…
事件番号: 昭和33(オ)224 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】審査請求の対象は、審査決定書の記載にかかわらず、不服申立人の真意に基づいて客観的に判断されるべきであり、加算税等のみを対象とした場合には所得金額等に関する訴えは適法な前置手続を欠く。また、既存の通知の誤謬を訂正する通知がなされても、それが新たな処分を構成しない限り、訴訟の対象が当然に拡大することは…