1 一時所得に係る支出が所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に該当するためには,それが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえることを要する。 2 死亡保険金の受取人を法人とし,満期保険金の受取人を当該法人の代表者とする養老保険契約の保険料を当該法人が支払い,満期保険金を当該代表者が受け取った場合において,上記保険料のうち当該代表者に対する役員報酬として損金経理がされその給与として課税された部分がその2分の1である一方,その余の部分が当該法人における保険料として損金経理がされたものであるなど判示の事情の下では,上記満期保険金に係る当該代表者の一時所得の金額の計算上,後者の部分は所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に当たらない。 3 一時所得に係る支出が所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に該当するためにはそれが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえることを要するにもかかわらず,これと異なる法令解釈に基づいて行われた過少申告について,課税実務上の運用や税務当局等の示した見解の有無などの点につき十分に審理することなく,関係する通達の文言の一部や上記の法令解釈と同旨の見解を採る市販の解説書の記載のみをもって,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとした原審の判断には,違法がある。
1 所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」の支出の主体 2 法人が保険料を支払った養老保険契約に係る満期保険金を当該法人の代表者が受け取った場合において,上記満期保険金に係る当該代表者の一時所得の金額の計算上,上記保険料のうち当該法人における保険料として損金経理がされた部分が所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に当たらないとされた事例 3 国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとした原審の判断に違法があるとされた事例
(1〜3につき)所得税法34条2項,所得税法施行令(平成23年政令第195号による改正前のもの)183条2項2号 (3につき)国税通則法65条4項
判旨
一時所得の金額の計算上控除される「その収入を得るために支出した金額」(所得税法34条2項)とは、収入を得た個人が自ら負担して支出したものといえる金額に限られる。また、過少申告加算税の「正当な理由」(国税通則法65条4項)とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、加算税の賦課が不当又は酷になる場合をいう。
問題の所在(論点)
1.法人が負担した保険料のうち、役員報酬として給与課税されていない部分が、所得税法34条2項の「支出した金額」に該当するか。 2.所得税基本通達の文言や市販の解説書を根拠に過少申告したことが、国税通則法65条4項の「正当な理由」に該当するか。
事件番号: 平成21(行ヒ)404 / 裁判年月日: 平成24年1月13日 / 結論: その他
1 一時所得に係る支出が所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に該当するためには,それが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえることを要する。 2 死亡保険金の受取人を会社とし,満期保険金の受取人を当該会社の代表者らとする養老保険契約の保険料を当該会社が支払い,満期保険金を当該代…
規範
所得税法34条2項の「その収入を得るために支出した金額」とは、個人の担税力に応じた課税を図る趣旨から、収入を得た個人が自ら負担して支出したものといえる金額に限られる。また、国税通則法65条4項の「正当な理由」とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨(客観的不公平の是正等)に照らしてもなお納税者に課税することが不当又は酷になる場合を指す。
重要事実
医療法人の理事長である納税者(原告)は、法人が保険料を支払った養老保険の満期保険金を受領した。法人は支払保険料の2分の1を役員報酬として経理処理し原告に給与課税されたが、残る2分の1は法人の保険料として損金処理されていた。原告は、一時所得の計算において、法人が負担し給与課税されていない部分も含めた全額を「支出した金額」として控除し申告した。税務署長がこれを認めず更正処分と過少申告加算税の賦課決定を行ったため、原告がその取消しを求めた。
あてはめ
1.法人が負担し損金経理した保険料(本件保険料経理部分)は、役員報酬として原告に帰属しておらず、原告が自ら負担して支出したとはいえない。これを控除対象とすることは、法人側での損金算入と相まって二重控除を認める結果となり不当である。 2.所得税基本通達34-4や市販の解説書の存在は、直ちに納税者の責めに帰せない客観的事情とはいえない。通達は法令解釈に従い確定されるべきものであり、課税実務の運用や当局の具体的見解の有無を十分に審理せずに「正当な理由」を認めることはできない。
結論
1.給与課税されていない法人負担の保険料は「支出した金額」に含まれない(上告棄却)。 2.「正当な理由」の有無については更なる審理が必要である(原判決の加算税取消部分を破棄し、差し戻し)。
実務上の射程
所得概念における「自らの負担」の要件を明確化した。また、過少申告加算税における「正当な理由」を狭く解し、通達の曖昧な文言や民間解説書の存在だけでは免責されないことを示した実務上重要な判例である。
事件番号: 昭和63(行ツ)192 / 裁判年月日: 平成2年3月23日 / 結論: 棄却
給与所得者が、自家用自動車を譲渡した場合において、当該自動車の全走行距離の約八パーセントを通勤のために使用しているにすぎないなど判示の事情の下においては、当該自動車は所得税法六九条二項にいう「生活に通常必要でない資産」に当たり、その譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額を同人の給与所得の金額から控除することはできない。
事件番号: 平成17(行ヒ)20 / 裁判年月日: 平成18年10月24日 / 結論: その他
納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係…
事件番号: 平成24(行ヒ)408 / 裁判年月日: 平成27年6月12日 / 結論: その他
1 匿名組合契約に基づき匿名組合員が営業者から受ける利益の分配に係る所得は,①当該契約において,匿名組合員に営業者の営む事業に係る重要な意思決定に関与するなどの権限が付与されており,匿名組合員が実質的に営業者と共同して事業を営む者としての地位を有するものと認められる場合には,当該事業の内容に従って事業所得又はその他の各…
事件番号: 平成18(行ヒ)295 / 裁判年月日: 平成19年7月6日 / 結論: その他
納税者が平成12年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,納税者が同権利行使益を一時所得として申告し,同権利…