個人の居住の用に供される不動産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上、当該不動産の取得のために代金の全部又は一部の借入れをした場合における借入金の利子は、当該不動産の使用開始の日以前の期間に対応するものに限り、所得税法三八条一項にいう「資産の取得に要した金額」に含まれる。
個人の居住の用に供される不動産を取得するための借入金の利子と所得税法三八条一項にいう「資産の取得に要した金額」
所得税法38条1項
判旨
居住用不動産の取得に係る借入金利子のうち、使用開始までの期間に対応するものは、取得に要した付随費用として所得税法38条1項の「資産の取得に要した金額」に含まれる。一方で、使用開始後の利子は日常的な生活費ないし家事費としての性質を有するため、同項の取得費には当たらない。
問題の所在(論点)
居住用不動産を取得するために要した借入金の利子が、所得税法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」として取得費に算入されるか。また、算入される場合の範囲が問題となる。
規範
所得税法38条1項の「資産の取得に要した金額」には、取得代金のほか登録免許税や仲介手数料等の付随費用も含まれる。もっとも、資産の維持管理費等の日常的生活費(家事費)はこれに含まれない。借入金利子は、原則として家事費としての性格を有するが、不動産を居住の用に供するまでの準備期間に対応する利子については、当該用途に供する上で必要な準備費用といえるため、例外的に付随費用として「資産の取得に要した金額」に該当する。
重要事実
上告人は、昭和46年4月に自己の居住用として宅地(本件土地)及び建物(本件建物)を一括購入し、同年6月6日から居住を開始した。取得に際し、上告人は銀行から3500万円を借り入れ、そのうち3000万円を本件土地建物の取得代金に充てた。上告人は後に本件土地建物を分割して譲渡したが、その譲渡所得の計算において、借入れから完済までの全期間の利子を取得費に算入できると主張して、課税処分の取消しを求めた。なお、借入れから居住開始までの51日間における利子額は38万5643円であった。
事件番号: 昭和61(行ツ)83 / 裁判年月日: 平成4年9月10日 / 結論: 棄却
個人の居住の用に供される不動産の譲渡による譲渡取得の金額の計算上、当該不動産の取得のために代金の全部又は一部の借入れをした場合における借入金の利子は、当該不動産の使用開始の日以前の期間に対応するものに限り、所得税法三八条にいう「資産の取得に要した金額」に含まれる。 (意見及び反対意見がある。)
あてはめ
本件借入金利子のうち、居住用として使用を開始する昭和46年6月6日までの期間(51日間)に対応する38万5643円については、本件土地建物を取得目的である居住の用に供するための「準備費用」としての性質を有する。したがって、これは不動産取得のための付随費用といえ、「資産の取得に要した金額」に含まれる。これに対し、使用開始日である同年6月7日以降の期間に対応する利子は、不動産の客観的価格を構成せず、単なる個人の家事上の必要に基づく「家事費」にすぎないため、取得費に該当しないと評価される。
結論
不動産の使用開始日以前の期間に対応する借入金利子のみが「資産の取得に要した金額」に含まれる。よって、居住開始後の利子を取得費に算入しなかった原審の判断は妥当であり、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
譲渡所得の計算における「取得費」の範囲を画定した重要な判例である。答案上は、取得費を「客観的価格を構成する代金」と「付随費用」に分け、利子について「使用開始前(準備費用=付随費用)」と「使用開始後(家事費)」を峻別する基準として用いる。事業用資産の利子に関する必要経費算入とは枠組みが異なる点に注意が必要である。
事件番号: 平成13(行ヒ)276 / 裁判年月日: 平成17年2月1日 / 結論: 破棄自判
1 受贈者が贈与者から資産を取得するために要した付随費用の額は,受贈者が同資産を譲渡した場合に所得税法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において,同法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に当たる。 2 ゴルフ会員権の受贈者が贈与を受けた際に支払った名義書換手数料の額は,受贈者が同会員権を譲渡した場合に…
事件番号: 昭和61(行ツ)7 / 裁判年月日: 平成元年3月28日 / 結論: 棄却
租税特別措置法(昭和五七年法律第八号による改正前のもの)三五条一項にいう「当該家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたもの」の譲渡は、当該家屋を所有者として居住の用に供していた者のする譲渡であることを要する。 (反対意見がある。)
事件番号: 平成18(行ヒ)295 / 裁判年月日: 平成19年7月6日 / 結論: その他
納税者が平成12年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,納税者が同権利行使益を一時所得として申告し,同権利…