個人の居住の用に供される不動産の譲渡による譲渡取得の金額の計算上、当該不動産の取得のために代金の全部又は一部の借入れをした場合における借入金の利子は、当該不動産の使用開始の日以前の期間に対応するものに限り、所得税法三八条にいう「資産の取得に要した金額」に含まれる。 (意見及び反対意見がある。)
個人の居住の用に供される不動産を取得するための借入金の利子と所得税法三八条一項にいう「資産の取得に要した金額」
所得税法38条1項
判旨
居住用不動産の取得に要した借入金の利子のうち、当該不動産の使用開始日以前の期間に対応するものは所得税法38条1項の「資産の取得に要した金額」に含まれるが、使用開始日後のものは含まれない。
問題の所在(論点)
居住用不動産を取得するために借り入れた資金の利子のうち、どの範囲までが所得税法38条1項の「資産の取得に要した金額」(取得費)として譲渡所得の計算上控除できるか。
規範
所得税法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」とは、資産を取得するために要した客観的な対価を指す。借入金の利子は、借入金という資金の利用の対価である。個人の居住用不動産の取得において、不動産の使用を開始するまでの利子は、その取得を完了させ居住の用に供するための付随費用として取得費に含まれるが、使用開始後の利子は、資産の取得自体ではなく取得後の生活維持のための費用(家計費)としての性格を有するため、取得費には含まれない。
重要事実
上告人は、昭和49年12月に居住用不動産を1035万円で買い受け、昭和50年1月31日に居住を開始した。上告人は取得資金のうち767万7000円を銀行から借り入れており、借入れから居住開始日までの利子額は4万9786円であった。その後、昭和54年5月に当該不動産を1100万円で譲渡した際、上告人は居住開始後の分を含む全期間の利子を取得費に算入すべきと主張して争った。
事件番号: 昭和61(行ツ)115 / 裁判年月日: 平成4年7月14日 / 結論: 棄却
個人の居住の用に供される不動産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上、当該不動産の取得のために代金の全部又は一部の借入れをした場合における借入金の利子は、当該不動産の使用開始の日以前の期間に対応するものに限り、所得税法三八条一項にいう「資産の取得に要した金額」に含まれる。
あてはめ
本件において、上告人が不動産を買い受け、自己の居住の用に供した日は昭和50年1月31日である。この日までの期間に対応する利子4万9786円は、不動産を居住可能な状態として取得するために必要な費用といえるため、「資産の取得に要した金額」に該当する。しかし、昭和50年2月1日以降の利子は、既に不動産の取得・使用開始という目的が達成された後のものであり、借入金の継続的な利用は個人の生活維持の便宜に資するものと解される。したがって、使用開始後の利子は取得費に該当しないと評価される。
結論
本件利子のうち、使用開始日である昭和50年1月31日までの期間に対応する分のみが取得費に含まれ、それ以降の期間分は取得費に含まれない。
実務上の射程
所得税法上の譲渡所得の計算において、負債利子の取得費算入の限界を「使用開始時」という明確な基準で画した判例である。事業用資産の減価償却等における取扱いと整合的であり、実務上も居住開始日を基準として計算を峻別する。答案上は、利子の二面性(取得のためのコストか、取得後の資金維持コストか)を意識して論じる際に用いる。
事件番号: 平成6(行ツ)78 / 裁判年月日: 平成6年9月13日 / 結論: 棄却
相続人の一人が遺産分割協議に従い他の相続人に対し代償金を交付して単独で相続した不動産を売却した場合、譲渡所得の計算上、右代償金を右不動産の取得費に算入することはできない。
事件番号: 平成13(行ヒ)276 / 裁判年月日: 平成17年2月1日 / 結論: 破棄自判
1 受贈者が贈与者から資産を取得するために要した付随費用の額は,受贈者が同資産を譲渡した場合に所得税法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において,同法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に当たる。 2 ゴルフ会員権の受贈者が贈与を受けた際に支払った名義書換手数料の額は,受贈者が同会員権を譲渡した場合に…
事件番号: 昭和61(行ツ)7 / 裁判年月日: 平成元年3月28日 / 結論: 棄却
租税特別措置法(昭和五七年法律第八号による改正前のもの)三五条一項にいう「当該家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたもの」の譲渡は、当該家屋を所有者として居住の用に供していた者のする譲渡であることを要する。 (反対意見がある。)
事件番号: 平成9(行ツ)13 / 裁判年月日: 平成10年11月10日 / 結論: 棄却
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法一四条に基づき同法三条の規定による土地の使用に関して適用される土地収用法七二条所定の使用する土地に対する補償金は、その銭全額を、その払渡しを受けた日…