被相続人が所得税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分に基づき所得税,過少申告加算税及び延滞税を納付するとともに上記各処分の取消訴訟を提起していたところ,その係属中に被相続人が死亡したため相続人が同訴訟を承継し,上記各処分の取消判決が確定するに至ったときは,上記所得税等に係る過納金の還付請求権は,被相続人の相続財産を構成し,相続税の課税財産となる。
被相続人が生前に提起して相続人が承継していた所得税更正処分等の取消訴訟において同処分等の取消判決が確定した場合,被相続人が同処分等に基づき納付していた所得税等に係る過納金の還付請求権は相続税の課税財産となるか
国税通則法56条1項,相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)2条1項,民法896条
判旨
被相続人が違法な所得税更正処分等に基づき税金を納付し、その取消訴訟の係属中に死亡した場合、後に確定した取消判決によって生じる過納金還付請求権は、被相続人の相続財産を構成する。
問題の所在(論点)
違法な課税処分に基づき納付された税金に係る「過納金還付請求権」の発生時期。特に、相続開始後に取消判決が確定した場合に、当該権利が相続税法上の相続財産(課税価格に算入される財産)に含まれるか。
規範
所得税更正処分等の取消判決が確定した場合、当該処分は処分時にさかのぼってその効力を失う。したがって、当該処分に基づいて納付された税金は納付の時点から法律上の原因を欠いていたこととなり、過納金還付請求権は「納付の時点」において既に発生していたものと解される。
重要事実
被相続人は、所得税更正処分等に基づき所得税等を納付したが、その取消訴訟を提起した。訴訟係属中に被相続人が死亡し、上告人がその訴訟を承継した。その後、取消判決が確定したため、上告人は過納金の還付を受けた。これに対し、税務署長は当該還付請求権が相続財産を構成するとして相続税の更正処分を行った。上告人は、当該権利は相続開始後に発生したものであると主張してその取消しを求めた。
事件番号: 令和2(行ヒ)103 / 裁判年月日: 令和3年6月24日 / 結論: 破棄自判
相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)55条に基づく申告の後にされた増額更正処分の取消訴訟において,個々の財産につき上記申告とは異なる価額を認定した上で,その結果算出される税額が上記申告に係る税額を下回るとの理由により当該処分のうち上記申告に係る税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合…
あてはめ
本件では、被相続人が生前に税金を納付しており、その原因となった更正処分等は後に確定判決によって取り消されている。前述の規範に照らせば、処分が遡及的に無効となる結果、還付請求権は判決時ではなく「納付時」に発生していたといえる。そうすると、被相続人の死亡時点において、既に当該還付請求権は被相続人に帰属する潜在的な債権として存在していたと評価できる。したがって、当該権利は被相続人の死亡により相続人が承継した財産に含まれる。
結論
過納金還付請求権は被相続人の相続財産を構成し、相続税の課税対象となる。したがって、本件更正処分は適法であり、上告人の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
更正処分等の取消判決の遡及効(行政事件訴訟法32条1項等)と、相続税法上の「相続財産」の範囲の確定に関する判断基準を示した。公法上の不当利得返還請求権的な性格を持つ還付請求権の発生時期を、処分時・納付時まで遡らせる実務を確立した。
事件番号: 昭和57(行ツ)18 / 裁判年月日: 昭和61年12月5日 / 結論: 棄却
一 農地の売買契約締結後農業委員会の許可前に買主が死亡した場合における相続税の課税財産は、右売買契約に基づき買主たる被相続人が売主に対して取得した当該農地の所有権移転請求権等の債権的権利である。 二 農地の買主の死亡により相続人が取得した当該農地の所有権移転請求権等の相続税の課税財産としての価額は、売買契約による当該農…
事件番号: 昭和60(行ツ)125 / 裁判年月日: 昭和62年10月30日 / 結論: 破棄差戻
租税法規に適合する課税処分について信義則の法理の適用による違法を考え得るのは、納税者間の平等公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合でなければならず、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たつては、少なくとも、税務官庁…
事件番号: 平成17(行ヒ)91 / 裁判年月日: 平成19年1月23日 / 結論: その他
被相続人の居住の用に供されていたが土地区画整理事業における仮換地の指定に伴い相続開始の直前には更地となっていた土地につき,(1)仮換地の指定がされ上記土地及びその仮換地の使用収益が共に禁止されたことにより,被相続人が仮設住宅への転居及び上記土地上の居宅の取壊しを余儀なくされたこと,(2)その後,上記仮換地について使用収…
事件番号: 昭和47(行ツ)69 / 裁判年月日: 昭和49年9月20日 / 結論: 破棄差戻
相続税の課税価格の算出上控除すべき弁済期未到来の金銭債務につき、通常の利率による利息の定めがあるときは、右債務の元本金額をそのまま控除すべき債務の額と評価するが、約定利率が通常の利率より低いときは、その利率差によつて相続人に留保される弁済期までの毎年の経済的利益について通常の利率による中間利息を控除して得られた現在価額…