私道の用に供されている宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は,私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず,当該宅地の位置関係,形状等や道路としての利用状況,これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし,当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か,また,その低下がどの程度かを考慮して決定する必要がある。
私道の用に供されている宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度の判断の方法
相続税法22条
判旨
相続税法22条にいう時価(客観的交換価値)の算定において、私道供用宅地としての減額評価を行うべきかは、建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず、位置関係、形状、利用状況、転用の難易等を総合考慮して決定すべきである。したがって、開発許可の際に自治体の指導等により設置された歩道状空地についても、客観的交換価値の低下が認められる場合には減額評価の対象となる。
問題の所在(論点)
相続税法22条の「時価」の評価において、法令上の制約(建築基準法44条等)がない歩道状空地であっても、事実上の利用状況や行政指導による制約を理由に、評価通達24に準じた私道としての減額評価が認められるか。
規範
相続税法22条にいう「時価」とは、課税時期における財産の客観的交換価値をいう。私道の用に供されている宅地については、第三者の通行の用に供され、所有者が自由に使用・収益・処分することに制約が存在することで客観的交換価値が低下する場合、減額評価されるべきである。この減額の要否及び程度は、建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず、当該宅地の位置関係、形状、道路としての利用状況、道路以外の用途への転用の難易等に照らし、客観的交換価値の低下が認められるか否かによって決定される。
重要事実
事件番号: 令和2(行ヒ)283 / 裁判年月日: 令和4年4月19日 / 結論: 棄却
1 相続税の課税価格に算入される財産の価額について、財産評価基本通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、当該財産の価額を上記通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは租税法上の一般原則としての平等原則に違反しない。 2 相続税の…
被相続人は、都市計画法上の開発許可を受け共同住宅を建築する際、自治体の指導要綱に基づき、市道に接する形で幅員2mの歩道状空地を整備した。当該空地はインターロッキング舗装が施され、居住者以外の第三者も自由に通行可能な状態にあり、後に通学路にも指定された。相続人である上告人らは、当該空地を「私道供用宅地」として減額評価(または評価ゼロ)で申告したが、税務署長は、建築基準法上の道路等の制約がないこと等を理由に、貸家建付地として評価すべきであるとして更正処分等を行った。
あてはめ
本件各歩道状空地は、車道沿いに2mの幅員で舗装され、第三者の自由な通行に供されている。また、これらは開発許可にあたっての行政指導により設置されたものであり、共同住宅が存在する限り、所有者が道路以外の用途へ転用することは容易ではない。このような事情は、土地の客観的交換価値を低下させる要因となる。原審のように、減額対象を建築基準法等の法令による制限がある場合に限定し、本件が開発行為に伴う選択の結果であることのみをもって減額を否定することは、実態に即した客観的交換価値の把握を誤るものである。
結論
法令上の制約がない私道であっても、利用実態や転用困難性により交換価値が低下している場合は、その程度に応じて減額評価されるべきである。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
評価通達24の「私道」の意義を、法令上の制限があるものに限定せず、事実上の制約も含めた「客観的交換価値の低下」という観点から広く解釈した。開発許可に伴う歩道状空地の評価において、実務上極めて重要な指針となる。
事件番号: 昭和47(行ツ)69 / 裁判年月日: 昭和49年9月20日 / 結論: 破棄差戻
相続税の課税価格の算出上控除すべき弁済期未到来の金銭債務につき、通常の利率による利息の定めがあるときは、右債務の元本金額をそのまま控除すべき債務の額と評価するが、約定利率が通常の利率より低いときは、その利率差によつて相続人に留保される弁済期までの毎年の経済的利益について通常の利率による中間利息を控除して得られた現在価額…
事件番号: 平成17(行ヒ)91 / 裁判年月日: 平成19年1月23日 / 結論: その他
被相続人の居住の用に供されていたが土地区画整理事業における仮換地の指定に伴い相続開始の直前には更地となっていた土地につき,(1)仮換地の指定がされ上記土地及びその仮換地の使用収益が共に禁止されたことにより,被相続人が仮設住宅への転居及び上記土地上の居宅の取壊しを余儀なくされたこと,(2)その後,上記仮換地について使用収…
事件番号: 平成28(行ヒ)406 / 裁判年月日: 平成30年7月17日 / 結論: 破棄差戻
固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格について,当該土地に接する街路が建築基準法42条1項3号所定の道路に該当するための要件を満たすか否かは明らかでないとしながら,上記街路が同号所定の道路に該当する旨の市長の判定がされていること等を理由に,建築確認を受けることができないために当該土地上に建…
事件番号: 令和2(行ヒ)103 / 裁判年月日: 令和3年6月24日 / 結論: 破棄自判
相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)55条に基づく申告の後にされた増額更正処分の取消訴訟において,個々の財産につき上記申告とは異なる価額を認定した上で,その結果算出される税額が上記申告に係る税額を下回るとの理由により当該処分のうち上記申告に係る税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合…