立法不作為の違法を理由とする国家賠償請求訴訟において,民法750条及び戸籍法74条1号は憲法24条に違反するとの意見が付された事例
判旨
夫婦同氏制を定める民法750条及び戸籍法74条1号(以下「本件各規定」)を改廃しない立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではない。
問題の所在(論点)
夫婦同氏制を定める本件各規定を改廃しない国会の立法不作為が、国家賠償法1条1項にいう職務上の法的義務違反として違法と評価されるか。
規範
国会議員の立法行為または立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるのは、当該立法の内容または不作為が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらずあえてこれを行うなど、国会議員がその職務上の法的義務に違反したことが明白な場合に限られる。
重要事実
上告人は、本件各規定が憲法24条に違反するにもかかわらず、これを改廃する立法措置を怠ったことは違法であるとして国家賠償請求を提起した。本件各規定については、過去の最高裁大法廷判決(平成27年12月16日、令和3年6月23日)により、憲法24条に違反するものではない旨の判断が繰り返し示されてきた。一方で、渡邉意見等によれば、氏名は個人の尊厳の基礎であり、婚姻に伴う氏の変更強制は実質的に婚姻の自由を制約する側面があること、世論調査で選択的夫婦別氏制の容認派が増加していること、通称使用では不利益が解消されないこと等の事実が存在する。
あてはめ
本件各規定が憲法24条に違反するか否かについて、裁判官の個別意見では、氏名の人格権的性質や婚姻の自由への制約に客観的合理性がないとして違憲性を肯定する見解も示されている。しかし、本案の損害賠償請求の成否を判断するにあたっては、過去の累次の最高裁大法廷判決において本件各規定を合憲とする判断が示されているという経緯が極めて重要である。このような司法判断が存する状況下においては、国会が本件各規定を改廃しなかったことが、直ちに憲法24条に違反することが明白であるにもかかわらず正当な理由なく放置した「職務上の法的義務に違反した」事態に当たるとはいえない。したがって、国家賠償法上の違法性は認められないと解される。
結論
本件各規定が憲法24条に違反するか否かの議論にかかわらず、過去の合憲判決の存在に照らせば、国会の立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。上告棄却。
実務上の射程
婚姻の自由(24条)、国家賠償請求(国賠法1条1項)、立法不作為の違法性評価、夫婦別氏問題。
事件番号: 平成25(オ)1079 / 裁判年月日: 平成27年12月16日 / 結論: 棄却
1 民法733条1項の規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は,憲法14条1項,24条2項に違反しない。 2 民法733条1項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は,平成20年当時において,憲法14条1項,24条2項に違反するに至っていた。 3 法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益…