1 民法733条1項の規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は,憲法14条1項,24条2項に違反しない。 2 民法733条1項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は,平成20年当時において,憲法14条1項,24条2項に違反するに至っていた。 3 法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などにおいては,国会議員の立法過程における行動が個々の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したものとして,例外的に,その立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けることがある。 4 平成20年当時において国会が民法733条1項の規定を改廃する立法措置をとらなかったことは,(1)同項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分が合理性を欠くに至ったのが昭和22年民法改正後の医療や科学技術の発達及び社会状況の変化等によるものであり,(2)平成7年には国会が同条を改廃しなかったことにつき直ちにその立法不作為が違法となる例外的な場合に当たると解する余地のないことは明らかであるとの最高裁判所第三小法廷の判断が示され,(3)その後も上記部分について違憲の問題が生ずるとの司法判断がされてこなかったなど判示の事情の下では,上記部分が違憲であることが国会にとって明白であったということは困難であり,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。 (1につき補足意見,1,2につき補足意見及び意見,1~4につき補足意見及び反対意見がある。)
1 民法733条1項の規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分と憲法14条1項,24条2項 2 民法733条1項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分と憲法14条1項,24条2項 3 立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける場合 4 国会が民法733条1項の規定を改廃する立法措置をとらなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとされた事例
(1~4につき)憲法14条1項,憲法24条,民法733条,民法772条 (3,4につき)国家賠償法1条1項
判旨
民法733条1項が女性に対し6ヶ月の再婚禁止期間を設ける規定のうち、父性の推定の重複を回避するために必要な100日を超える部分は、合理性を欠く過剰な制約として憲法14条1項及び24条2項に違反するが、平成20年当時にその違憲性が明白であったとはいえず、国家賠償法上の違法性は認められない。
問題の所在(論点)
1. 民法733条1項が女性にのみ6ヶ月の再婚禁止期間を設けていることは、法の下の平等(14条1項)及び婚姻に関する両性の本質的平等(24条2項)に違反するか。 2. 国会が同規定を改廃しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるか。
規範
婚姻の自由(憲法24条1項)は十分尊重に値する。婚姻制度に係る差別的取扱いの合憲性は、①立法目的が合理的根拠に基づき、かつ②手段としての区別の具体的内容が目的との関連で合理性を有するかにより判断される。国会の立法裁量は第一次的に認められるが、事柄の性質上、個人の尊厳と両性の本質的平等(24条2項)の要請に照らした限界がある。また、立法不作為が国賠法1条1項上違法となるのは、違憲性が明白であるにもかかわらず正当な理由なく長期にわたり立法措置を怠るなどの例外的な場合に限られる。
重要事実
上告人の女性は、平成20年3月に前夫と離婚し、民法733条1項(本件規定)による6ヶ月の再婚禁止期間の経過を待って同年10月に後夫と再婚した。上告人は、同規定が女性にのみ再婚を禁じ婚姻の自由を不当に制約するもので憲法14条1項・24条2項に違反するとして、法改正を怠った立法不作為を理由に国家賠償を請求した。
あてはめ
1. 本件規定の目的は、父性の推定(民法772条)の重複を回避し父子関係をめぐる紛争を未然に防ぐことにあり、合理的な目的といえる。しかし、推定の重複を回避するには計算上100日の禁止期間で足りる。医療・科学技術の発展や社会状況の変化により、100日を超える部分について「家庭の不和を避ける」等の観点から一律に婚姻を制限することを正当化する根拠は失われており、国会の立法裁量の範囲を超える過剰な制約である。 2. 立法不作為の違法性については、平成7年の最高裁判決が本件規定を違憲と判示せず、立法政策に委ねる余地があるとしていた経緯に鑑みれば、平成20年当時において、100日超過部分が憲法に違反することが国会にとって明白であったとは認められない。
結論
民法733条1項のうち、100日を超える再婚禁止期間を定める部分は憲法14条1項及び24条2項に違反するが、100日以内の部分は合憲である。また、本件立法不作為は国賠法上の違法とはいえず、損害賠償請求は棄却される。
実務上の射程
婚姻・家族法の分野における国会の広範な立法裁量を認めつつも、科学的知見(DNA鑑定等)や社会情勢の変化により、その裁量が収縮し違憲となり得ることを示した。答案上は、制度目的と手段の合理的関連性を検討する際の「裁量の限界」の画定基準として活用する。また、一部違憲(100日超の部分のみ)という手法も重要である。
事件番号: 平成4(オ)255 / 裁判年月日: 平成7年12月5日 / 結論: 棄却
再婚禁止期間について男女間に差異を設ける民法七三三条を改廃しない国会ないし国会議員の行為は、国家賠償法一条一項の適用上、違法の評価を受けるものではない。