判旨
不貞行為によって婚姻関係を破綻させた第三者に対し、精神的苦痛に対する慰謝料請求が認められることを前提とし、事実認定や証拠採用の適否は事実審の合理的な裁量に属する。
問題の所在(論点)
他人の配偶者との情交を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求において、事実審が行った事実認定や、証拠申請の却下が違法となるか(民法709条、710条、および民事訴訟法上の証拠採否の裁量)。
規範
他人の配偶者と情交を重ねる行為は不法行為を構成し、これにより生じた精神的苦痛について賠償責任を負う。また、事実の認定および証拠調べの必要性の判断は、特段の事情がない限り、事実審裁判所の専権に属する。
重要事実
上告人は、被上告人の妻であるDと数回にわたり情交を重ねた。その結果、Dは妊娠し、昭和21年1月16日に女児を出産するに至った。被上告人はこれによって精神的苦痛を受けたとして、上告人に対し損害賠償を請求した。一審および原審はこれらの事実を認め、上告人による本人尋問および再鑑定の申請を「必要なし」として却下した上で、上告人の責任を認めた。
あてはめ
原審は、各証拠を総合して上告人とDとの間の情交事実およびその間の懐胎・出産の事実を認定しており、その過程に経験則に反する等の違法は認められない。また、上告人が求めた本人尋問や鑑定については、既に他の証人の証言や鑑定結果が存在しており、原審がさらなる証拠調べを不要と判断して申請を却下したことは、裁判所の合理的な裁量の範囲内である。
結論
原判決に理由不備や審理不尽の違法はなく、上告人の不法行為責任を認めた判断は正当であるとして、上告を棄却した。
実務上の射程
不貞慰謝料請求における事実認定の枠組みを示す。特に、不貞事実の存否や証拠の採否が事実審の裁量に委ねられている点を確認するものであり、実務上は、証拠の総合評価によって不貞事実を推認する手法の正当性を裏付ける判例として機能する。
事件番号: 昭和33(オ)395 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求において、夫権侵害を理由とする慰謝料が認められるためには、妻の貞操を侵したか、またはそれと同程度の違法な行為の存在が立証される必要がある。 第1 事案の概要:上告人(夫)は、被上告人(男)が自己の妻Dに対し、情交を迫りこれを遂げ、または遂げようとして未遂…