未乾燥の印刷物を断截して製本作業をするとその結果インキの光沢を失い、断截機の押力でインキが印刷物の紙の裏に附着したりインキが飛んだり紙を汚染し出来上りが不良になるという事実を、公知の事実ということはできない。
公知の事実ではないとされた事例。
民訴法257条
判旨
不法行為に基づく損害賠償請求において、因果関係を中断させる事情の有無や、代表者による示談成立の事実は、証拠に基づき原審が判断する事実認定の範疇に属する。
問題の所在(論点)
不法行為における因果関係の中断および代表権を有する者による示談の成否が、上告審における破棄事由(理由不備、判断遺脱、法則違反等)に該当するか。
規範
因果関係の存否や中断の有無、および権利義務の消滅をもたらす示談成立の事実は、証拠の取捨選択に基づく事実認定の問題であり、特段の事情がない限り、原審の専権に属する。
重要事実
上告人は、被上告人会社に対し不法行為に基づく損害賠償を請求した。これに対し、因果関係の中断や、訴外Dが被上告人会社を代表して行った示談による解決が争点となった。原審は、証拠に基づき、因果関係の中断を認めず、また示談成立の事実も認められないと判断した。
あてはめ
最高裁は、原審が適法に認定した事実関係によれば、因果関係の中断に関する原判決の判断に法律解釈の誤りはなく、公知の事実や経験則に反する点も認められないとした。また、示談成立の事実が認められないとした原審の判断も、挙示された証拠に照らして首肯できる。したがって、原判決に理由不備や判断遺脱の違法はない。
結論
本件上告は棄却される。原審の事実認定および法律判断に違法はない。
実務上の射程
因果関係の中断や示談の成否といった具体的な事実認定については、それが経験則や論理則に反しない限り、上告審での争点化は困難であることを示している。答案作成上は、因果関係の判断要素や合意の成立要件を具体的事実から検討する際の指針となる。
事件番号: 昭和36(オ)1050 / 裁判年月日: 昭和38年8月30日 / 結論: 棄却
不法行為による肉体的精神的苦痛に対する慰藉料請求を理由あらしめる事実として、当事者の主張しない「左耳が遠くなり」「時々腰痛がある」との事実も認定したからといつて、当事者の申し立てざる事項に付き判決したことには当らない。