具体的事件と離れて、抽象的に法律命令等の憲法に適合するかどうかを争うことは、許されない。
抽象的に法律命令等の合憲性を争う訴の適否。
憲法81条,裁判所法3条
判旨
裁判所が司法権を行使するためには、具体的な争訟事件が前提でなければならず、具体的事件を離れて抽象的に法律等の合憲性を争うことは許されない。紀元節廃止の違法を前提とする損害賠償請求については、前提となる違法の主張に理由がない以上、請求を棄却すべきである。
問題の所在(論点)
具体的事件を離れて抽象的に法律・命令等の合憲性を争うことが許されるか、および紀元節廃止を違法として損害賠償請求を行うことができるか。
規範
日本国憲法下の司法権は、具体的な権利義務に関する紛争を解決するために行使されるものである。したがって、具体的事件を離れて抽象的に法律や命令の憲法適合性を審査する権限(抽象的違憲審査制)は認められず、裁判所が付随的違憲審査を行うためには「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に該当することが必要である。
重要事実
上告人は、紀元節(建国記念の日)の廃止が違法であると主張し、国に対して損害賠償を請求する訴えを提起した。上告人は、具体的事件を離れても抽象的に法律等の違憲を争うことが許されるべきであるとの学説を根拠に、紀元節廃止の不当性を争点として争ったものである。
あてはめ
まず、抽象的違憲審査については、当裁判所が採用しないところであり、具体的事件を離れた憲法判断は認められない。次に、上告人の損害賠償請求は形式的には具体的権利に関する請求といえる。しかし、その請求の前提となっている「紀元節廃止が違法である」という主張には正当な理由がない。したがって、前提を欠く損害賠償請求もまた、法的な理由を欠くものと言わざるを得ない。
結論
抽象的な違憲審査は認められず、また紀元節廃止に違法性は認められないため、これに基づく損害賠償請求を棄却した原判決は正当である。
実務上の射程
司法権の限界および付随的違憲審査制を論じる際の基礎判例である。警察予備隊違憲訴訟(最大法判昭27.10.8)の流れを汲み、わが国の裁判所が「具体的争訟」を前提とすることを再確認している。答案上は、憲法81条の性格や裁判所法3条1項の「法律上の争訟」の意義を定義する際の引用根拠として活用する。
事件番号: 昭和38(オ)425 / 裁判年月日: 昭和40年12月3日 / 結論: 棄却
密輸の被疑者が搭乗した船舶につき、刑事判決確定まで検察官が差押を継続したとしても、原判示事情(原判決引用の一審判決理由参照)のもとにおいては、右検察官の処置は船舶所有者に対する不法行為とならない。