(省略)
上告棄却判決が基本的人権を侵害したとの上告論旨が前提を欠くとして排斥された事例。
判旨
裁判官が判決を下すに際して職務上の義務に違反したなどの違法行為が認められない限り、当該判決に基づく人権侵害等の主張は理由を欠く。
問題の所在(論点)
裁判官の判決行為が、国家賠償法1条1項における「違法」な公権力の行使に該当するか、またその判断基準が問題となる。
規範
国家賠償法上の違法性が問われる裁判官の行為については、当該裁判官がその職務上の義務に背いて、違法又は不当な目的をもって裁判をなし、あるいは裁判官が通常具備すべき職務上の注意義務を著しく怠ったと認められるような特別の事情がない限り、違法とは評価されない(本判決の趣旨)。
重要事実
上告人は、従前の最高裁判所第二小法廷による上告棄却判決が不当であり、基本的人権を侵害されたと主張した。また、当該判決に関与した裁判官が職務上の義務に違反し、公権力の違法行使や職権濫用を行ったと主張して、本件原判決の違法性を訴えた。
あてはめ
記録に照らしても、先行する上告棄却判決に関与した裁判官において、職務上の義務違背や職権濫用といった客観的・主観的な違法性が認められる事情は存在しない。したがって、当該判決を正当とした原審の判断に違法はないと解される。
結論
裁判官に職務上の義務違反や職権濫用等の事実が認められない以上、上告人の主張は前提を欠き、上告は棄却される。
実務上の射程
裁判官の裁判活動に関する国家賠償責任については、本判決後、昭和57年判決(最三小判昭57.3.12)によって「裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をした」等の特段の事情を必要とする厳格な要件が確立された。実務上は、単なる裁判内容の誤りでは違法とはならず、司法権の独立を尊重した極めて高いハードルが設定されている。
事件番号: 昭和39(オ)1390 / 裁判年月日: 昭和43年3月15日 / 結論: 棄却
裁判官の行なう裁判についても、国家賠償法の適用は当然には排除されない。