判旨
金銭債務の不履行による損害賠償は、特約のない限り法定利率による金額を超えることができず、また不法行為責任の追及には相手方の故意または過失が必要である。
問題の所在(論点)
1.金銭債務の不履行において、法定利率を超える損害賠償を請求できるか。2.不法行為による損害賠償請求において、相手方の故意・過失が認められない場合に賠償責任を負わせることができるか。
規範
1.金銭債務の不履行による損害賠償額は、原則として法定利率によって定めるものとし(民法419条1項参照)、これを超える損害の賠償を請求することはできない。2.不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)が認められるためには、加害者に故意または過失があることが必要不可欠である。
重要事実
上告人(会社)は、被上告人の債務不履行および不法行為を理由として、事故により被った損害の賠償を求めて提訴した。原審は、債務不履行に基づく賠償については法定利率を超える請求を認めず、不法行為については、損害の発生は認めたものの、被上告人に故意または過失があったとは認められないと判断した。これを不服とした上告人が、憲法違反や法令違背を理由に上告した事案である。
あてはめ
1.上告人が主張する債務不履行による損害賠償は、その性質が金銭債務の不履行に帰するものである。したがって、民法419条1項の趣旨に照らし、法定利率を超える損害賠償を認める余地はない。2.不法行為については、民法709条の文言通り、過失責任の原則が支配する。原審において被上告人の故意過失が否定されている以上、たとえ財産的損害が発生していたとしても、同条に基づく賠償義務は発生しない。上告人の違憲主張も、故意過失が認められないという事実認定を前提とする限り、その根拠を欠くものである。
結論
金銭債務不履行につき法定利率を超える賠償は認められず、故意過失のない不法行為につき賠償責任は成立しない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
民法419条の特則性および不法行為法における過失責任の原則を確認した極めて基礎的な判例である。答案上は、特別損害(416条2項)の主張があっても金銭債務不履行においては法定利率に限定される点、および709条の要件充足性の検討において故意過失が必須である点を論証する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和31(オ)832 / 裁判年月日: 昭和35年2月19日 / 結論: 棄却
債権者が債務者に対する強制執行として第三者の店舗において第三者の所有占有にかかる営業用動産を差押えた場合でも、(イ)右第三者は債務者から営業譲渡を受けたものであつて、同一店舗で同一商号を用い右商号のみを表示する従前と同一の看板を掲げ従前の従業員数名を使用して営業を続け、右店舗には自ら居住せず自己の標札も掲げていない等の…