密輸の被疑者が搭乗した船舶につき、刑事判決確定まで検察官が差押を継続したとしても、原判示事情(原判決引用の一審判決理由参照)のもとにおいては、右検察官の処置は船舶所有者に対する不法行為とならない。
刑事判決確定までの検察官の差押継続が不法行為とならないとされた事例
民法709条,旧関税法83条
判旨
法律が違憲と判断される以前において、有効に存在していた当該規定を前提とした公務員の職務執行は、特段の事情がない限り直ちに国家賠償法1条1項の過失を認めることはできず、不法行為を構成しない。
問題の所在(論点)
後に違憲と判断された法律の規定を前提としてなされた公務員の処分について、国家賠償法1条1項の「過失」が認められ、不法行為が成立するか。
規範
国家賠償法1条1項の過失の有無は、公務員が職務上尽くすべき注意義務を尽くしたか否かにより判断される。後に憲法違反と判断される可能性があったとしても、現に効力を有する法律の規定に基づき、それを前提としてなされた処分については、直ちに不法行為を構成するものではなく、公権力の濫用ともいえない。
重要事実
上告人は、旧関税法83条1項の規定に基づき検察官が行った処置(船舶「三幸丸」等の占有関係等に係る判断)が不法行為にあたるとして国家賠償を請求した。当該規定については、後に最高裁判所大法廷により違憲判断(いわゆる第三者没収事件判決)がなされている。上告人は、違憲な法律に基づく処分は不法行為を構成し、また占有関係の判断に過失があると主張して争った。
あてはめ
本件において、検察官の処置は当時の旧関税法83条1項の規定に基づいてなされている。同規定について後に大法廷による違憲判決が出されたとしても、その判決がなされる以前において、現に存在する法律を前提としてなされた検察官の判断は正当として是認できる。また、三幸丸の占有関係に関する判断についても、証拠関係に照らし検察官に注意義務違反があったとは認められない。したがって、職務上の過失は否定される。
結論
本件検察官の処置は不法行為を構成せず、公権力の濫用にもあたらないため、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
違憲判決の遡及的効力と国家賠償責任を区別する。法令の存在自体を前提とした公務員の行為に過失を認めるためには、単に法令が違憲であるだけでなく、当該公務員がその法令を適用・執行すべきでないことが明白であった等の特段の事情が必要とされる。
事件番号: 昭和45(オ)886 / 裁判年月日: 昭和49年12月12日 / 結論: 棄却
競売法による不動産競売手続において配当異議訴訟が提起された場合には、競売裁判所は、異議ある債権の配当額を供託すべきである。