競売法による不動産競売手続において配当異議訴訟が提起された場合には、競売裁判所は、異議ある債権の配当額を供託すべきである。
競売法による不動産競売手続において配当異議訴訟が提起された場合と異議ある債権の配当額の供託
民訴法(昭和41年法律第111号による改正前のもの)630条3項,民訴法697条
判旨
法律解釈に疑義があり、実務上の取扱いも分かれている状況下で、公務員がいずれか一方の解釈に基づいて職務を執行した場合には、直ちに国家賠償法上の過失があったとは認められない。
問題の所在(論点)
国家賠償法1条1項の「過失」の成否に関し、法律解釈について見解が対立し、拠るべき判例・学説が未確立な状況でなされた公務員の判断に、職務上の注意義務違反(過失)が認められるか。
規範
国家賠償法1条1項にいう「過失」とは、公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を怠ることを指す。法律解釈に疑義が生じ、依るべき明確な判例・学説がなく、実務上の取扱いも分かれており、そのいずれの見解にも一応の論拠が認められる場合には、後にその執行が違法と判断されたとしても、特定の解釈を採用したことについて直ちに公務員の過失を認めることは相当ではない。
重要事実
不動産の任意競売手続において、配当表に不服がある抵当権者が異議の訴えを提起した。競売裁判所(浦和地裁)は、当時の民事訴訟法(改正前)の規定に準用がないとの解釈に基づき、異議のある配当額を供託することなく保管する措置をとった。しかし、本来は同法規定を類推適用して配当額を供託すべきであったとして、裁判所の措置の違法性と過失が争われた。
事件番号: 昭和41(オ)846 / 裁判年月日: 昭和43年4月19日 / 結論: 棄却
判決理由参照。 参照(昭和三五年(オ)第五四号、同年一〇月七日第二小法廷判決、民集一四巻一二号二四二〇頁登載源泉徴収所得税並びに加算税決定取消請求事件)
あてはめ
本件における配当額の供託義務の有無については、当時、先例的な判例や通説的な学説が存在せず、積極・消極の両説があり得た。また、裁判実務上の取扱いも二様に分かれていた。このような状況下で、競売裁判所がいずれかの解釈(非準用説)を前提として措置を講じたことは、一応の論拠に基づくものといえる。したがって、その解釈が後に誤り(違法)と評価されるべきものであったとしても、当時の公務員の判断として通常尽くすべき注意義務に欠けるところがあったとはいえない。
結論
公務員に過失があったとは認められないため、国家賠償請求は棄却される。
実務上の射程
法令の解釈・適用に関する国家賠償請求において、過失の有無を判断する際のリーディングケースである。特に「判例・学説の未確立」という状況を過失否定のメルクマールとして活用する。答案上は、公務員の職務上の注意義務が「法令の正しい解釈」を保証することまでを常に含むわけではないことを論理の軸とする。
事件番号: 昭和39(オ)532 / 裁判年月日: 昭和41年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公務員の職務執行上の行為について、法令の解釈に複数の有力な説があり実務も分かれている状況下で、当該公務員が特定の説に従い誠実に行動した場合には、国家賠償法1条1項の「過失」を否定できる。 第1 事案の概要:債務者が仮処分命令の条件(現状維持)に違反して建物の現状を変更したため、執行吏代理が債務者を…