再生計画の決議について民事再生法174条2項3号所定の不認可事由があるとはいえないとされた事例
判旨
再生計画案の可決に関し、管財人が一部の再生債権者と和解契約を締結し、債権の相殺処理や計画案への賛成を約させたとしても、その内容に合理性があり、専ら議決権行使に影響を及ぼす意図とまでいえない場合には、民事再生法174条2項3号の「不正の方法」には当たらない。
問題の所在(論点)
管財人が特定の債権者との間で、紛争の解決と引き換えに再生計画案への賛成を約させる和解を締結することが、民事再生法174条2項3号の「不正の方法」による決議に該当するか。
規範
民事再生法174条2項3号にいう「不正の方法」により再生計画が可決されたか否かは、当該和解契約等の内容、再生債務者が置かれていた客観的状況、契約締結の経緯等に照らし、それが特定の債権者に「不正な利益を供与」するものであるか、あるいは「信義則に反する行為」といえるかによって判断する。具体的には、契約に一方的な有利性があるか、再生債務者にとっての合理性があるか、専ら議決権行使に影響を及ぼす不当な意図があるかといった観点から総合的に考慮すべきである。
重要事実
医療法人Aの再生手続において、管財人が大口債権者B(議決権約20%)に対し、Bの届出債権全額の否認および請求異議訴訟を提起していた。その後、管財人とBは、(1)管財人が訴え等を取り下げ、(2)Bは再生計画案に賛成票を投じ、(3)認可確定後にBの債権を大幅に減額した額で相殺処理する、という和解を裁判所の許可を得て締結した。Bの賛成により計画案は可決(賛成約61%)されたが、他の債権者が「不正の方法」に当たるとして認可に異議を申し立てた。
あてはめ
本件では、(1)Bの債権には公正証書という相応の根拠がある反面、管財人側の主張を裏付ける証拠は不十分であり、(2)B自身も再生手続中で回収可能性が低かったことから、現金の流出を伴わない早期和解は再生債務者Aにとっても合理性があったといえる。また、(3)和解の経緯等に照らしても、専らBの議決権行使を不当に操作する意図があったとは断じ難い。したがって、特定の債権者に対する不正な利益供与や信義則違反は認められず、不正の方法には当たらないと解される。
事件番号: 平成19(許)24 / 裁判年月日: 平成20年3月13日 / 結論: 棄却
1 民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には,議決権を行使した再生債権者が詐欺,強迫又は不正な利益の供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合も含まれる。 2 次の(1)及び(2)の事情の下で…
結論
本件和解契約の締結およびそれに基づく決議は、民事再生法174条2項3号に該当せず、再生計画の認可決定は適法である。
実務上の射程
管財人による「議決権買収」的な合意の限界を示した。裁判所の許可があることは有利な事情となるが、補足意見によれば、許可があること自体で直ちに不正が否定されるわけではない。答案では、和解内容の対価バランス(合理性)と、手続迅速化等の目的の正当性を慎重に検討する枠組みとして活用する。
事件番号: 平成29(許)19 / 裁判年月日: 平成29年12月19日 / 結論: 棄却
小規模個人再生において,再生債権の届出がされ(民事再生法225条により届出がされたものとみなされる場合を含む。),一般異議申述期間又は特別異議申述期間を経過するまでに異議が述べられなかったとしても,住宅資金特別条項を定めた再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合に当たるか否かの判断に当たっては,当該再生…
事件番号: 令和4(許)16 / 裁判年月日: 令和5年2月1日 / 結論: 棄却
破産管財人が、別除権の目的である不動産の受戻しについて上記別除権を有する者との間で交渉し、又は、上記不動産につき権利の放棄をする前後に上記の者に対してその旨を通知するに際し、上記の者に対して破産者を債務者とする上記別除権に係る担保権の被担保債権についての債務の承認をしたときは、その承認は上記被担保債権の消滅時効を中断す…
事件番号: 平成28(許)43 / 裁判年月日: 平成29年12月12日 / 結論: 破棄差戻
1 仲裁人が当事者に対して仲裁法18条4項にいう「自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある」事実が生ずる可能性があることを抽象的に述べたことは,同項にいう「既に開示した」ことに当たらない。 2 仲裁人が,当事者に対して仲裁法18条4項にいう「自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある」事実を開示し…
事件番号: 令和3(許)8 / 裁判年月日: 令和4年6月21日 / 結論: 棄却
ハーグ条約実施法134条に基づき子の返還を命ずる終局決定を債務名義としてされた間接強制の方法による子の返還の強制執行の申立ては、当該申立ての後に当該終局決定を債務名義とする子の返還の代替執行により子の返還が完了したという事実関係の下においては、不適法である。