小規模個人再生において,再生債権の届出がされ(民事再生法225条により届出がされたものとみなされる場合を含む。),一般異議申述期間又は特別異議申述期間を経過するまでに異議が述べられなかったとしても,住宅資金特別条項を定めた再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合に当たるか否かの判断に当たっては,当該再生債権の存否を含め,当該再生債権の届出等に係る諸般の事情を考慮することができる。 (補足意見がある。)
小規模個人再生において住宅資金特別条項を定めた再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合に当たるか否かの判断に当たり無異議債権の存否等を考慮することの可否
民事再生法38条2項,民事再生法202条2項4号,民事再生法225条,民事再生法231条1項
判旨
小規模個人再生における住宅資金特別条項を定めた再生計画に関し、実際には存在しない債権を意図的に債権者一覧表に記載するなどして再生計画案を可決させた場合には、民事再生法202条2項4号にいう「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」に該当し得る。この不認可事由の判断に際しては、当該債権につき異議申述期間内に異議が述べられず債権が手続内で確定していたとしても、裁判所はその存否を含めた諸般の事情を考慮できる。
問題の所在(論点)
住宅資金特別条項を定めた再生計画において、再生債務者が虚偽の疑いがある債権を記載して可決を得た場合、当該債権について手続内で異議が出されず確定していても、裁判所は「不正の方法」(法202条2項4号)としてその存否を調査し、不認可とすることができるか。
規範
1. 民事再生法202条2項4号(小規模個人再生の不認可事由)にいう「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」とは、議決権者が詐欺・強迫等を受けた場合のみならず、再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合を含む。 2. 裁判所は、再生債務者が債権者に対し公平かつ誠実に再生手続を追行する義務(同法38条2項参照)を負うことに鑑み、後見的な見地から不認可事由を審査すべきである。 3. したがって、債権者一覧表の記載が「みなし届出」となり(法225条)、異議が出されず議決権が確定した場合であっても、裁判所は不認可事由の有無を判断するために、当該債権の存否を含めた諸般の事情を調査・考慮することができる。
事件番号: 平成19(許)24 / 裁判年月日: 平成20年3月13日 / 結論: 棄却
1 民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には,議決権を行使した再生債権者が詐欺,強迫又は不正な利益の供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合も含まれる。 2 次の(1)及び(2)の事情の下で…
重要事実
1. 税理士である再生債務者(抗告人)は、相手方からの損害賠償請求訴訟中に、実弟に対する2000万円の借入債務(本件貸付債権)を担保するための仮登記を自宅に設定した。 2. 判決確定後、抗告人は仮登記を抹消した直後に小規模個人再生を申し立て、債権者一覧表に本件貸付債権を記載した。 3. 本件貸付債権について異議は述べられず、実弟は議決権の過半数を占めることとなった。結果、相手方のみが反対したものの、再生計画案は可決とみなされた。 4. しかし、本件貸付債権は発生から16年以上経過しており、抗告人は送金記録や借用証等の客観的資料を一切提示できなかった。
あてはめ
1. 抗告人は実弟からの多額の貸付けを主張するが、発生から長期間経過後の仮登記設定や、資料提出の拒絶など、債権の不存在をうかがわせる事情が顕著である。 2. このような実態のない債権を意図的に記載し、身内を利用して可決要件を満たす行為は、再生債務者の公平誠実義務に著しく反し、信義則に反する可決といえる。 3. 本件貸付債権が手続内で無異議債権として扱われているとしても、それは不認可事由の審査を妨げるものではない。裁判所が債権の存否を調査せず、形式的に可決を認めることは、少数債権者の保護を図る法の趣旨に反する。
結論
抗告人が存在しない債権を意図的に記載して可決させた疑いがある以上、裁判所はその存否を調査すべきであり、調査を尽くさずに認可した原々審を取り消して差し戻した原審の判断は妥当である。
実務上の射程
小規模個人再生において、債務者が身内や知人の架空債権を利用して反対債権者の否決権を封じ込める脱法行為を防止する。債権調査手続(異議申述)と再生計画の認可審査(不正方法の有無)は別個のプロセスであることを明確にした。
事件番号: 令和3(許)4 / 裁判年月日: 令和3年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再生計画案の可決に関し、管財人が一部の再生債権者と和解契約を締結し、債権の相殺処理や計画案への賛成を約させたとしても、その内容に合理性があり、専ら議決権行使に影響を及ぼす意図とまでいえない場合には、民事再生法174条2項3号の「不正の方法」には当たらない。 第1 事案の概要:医療法人Aの再生手続に…
事件番号: 平成29(許)10 / 裁判年月日: 平成29年12月19日 / 結論: 棄却
賃借人Yが契約当事者を実質的に変更したときは賃貸人Xは契約を解除し違約金を請求することができる旨の定めのある建物の賃貸借契約において,Yが吸収分割の後は責任を負わないものとする吸収分割により契約当事者の地位をAに承継させた場合に,次の(1)~(3)など判示の事情の下においては,Yが,上記賃貸借契約を解除したXに対し,上…
事件番号: 昭和32(ク)236 / 裁判年月日: 昭和32年11月29日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、法律により特に許された場合に限られ、特別抗告の理由が実質的に法令違憲を伴わない単なる法令違反の主張にとどまる場合は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人らは、会社更生法に関する下級審の裁判に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。その際、抗告理由…
事件番号: 昭和59(ク)258 / 裁判年月日: 昭和60年1月22日 / 結論: 棄却
更生計画認否の裁判に対する抗告審の裁判は、公開・対審の手続によらなくても、憲法三二条、八二条に違反しない。