1 民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には,議決権を行使した再生債権者が詐欺,強迫又は不正な利益の供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合も含まれる。 2 次の(1)及び(2)の事情の下では,再生債務者Xについての再生計画の決議は,民事再生法172条の3第1項1号の少額債権者保護の趣旨を潜脱し信義則に反するXらの行為によって成立したものというべきであり,上記再生計画には同法174条2項3号所定の不認可事由がある。 (1) 民事再生手続による方が破産手続によるよりも債権の回収に不利な債権者がいて,再生計画案が可決されないことが見込まれていた状況の下で, Xが再生手続開始の申立てをする直前に,Xの取締役であってそれまでXに対する債権を有していなかったAが,回収可能性のないXに対する債権を譲り受け,その一部を同じくXの取締役であってそれまでXに対する債権を有していなかったBに譲渡した。 (2) AとBが再生計画案に同意するものとして議決権を行使したことにより民事再生法172条の3第1項1号の要件を充足し,再生計画案が可決された。
1 民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合が含まれるか 2 民事再生法172条の3第1項1号の趣旨を潜脱し信義則に反する再生債務者らの行為に基づいて再生計画案が可決されたとして,再生計画に同法174条2項3号所定の不認可事由があるとされた事例
(1,2につき)民事再生法38条2項,民事再生法174条2項3号 (2につき)民事再生法172条の3第1項1号
判旨
民事再生法174条2項3号にいう「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には、議決権行使にあたり詐欺や強迫等があった場合のほか、再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合も含まれる。
問題の所在(論点)
再生計画案の可決要件を満たすために、再生債務者の関係者が意図的に債権を分割・取得して議決権を行使した場合、民事再生法174条2項3号の「不正の方法」による決議に該当するか。
規範
民事再生法174条2項3号は、後見的な見地から少数債権者の保護を図る趣旨である。したがって、議決権を行使した再生債権者が詐欺、強迫又は不正な利益の供与等を受けた場合はもとより、再生計画案の可決が「信義則に反する行為」に基づいてされた場合も、「不正の方法」に含まれると解すべきである。
事件番号: 令和3(許)4 / 裁判年月日: 令和3年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再生計画案の可決に関し、管財人が一部の再生債権者と和解契約を締結し、債権の相殺処理や計画案への賛成を約させたとしても、その内容に合理性があり、専ら議決権行使に影響を及ぼす意図とまでいえない場合には、民事再生法174条2項3号の「不正の方法」には当たらない。 第1 事案の概要:医療法人Aの再生手続に…
重要事実
再生債務者(抗告人)は、不動産賃貸業者であり、多額の債務を抱え経営破綻した。反対派債権者による担保権実行が避けられない状況下で、代表取締役Aの子であり取締役であるDは、再生申立て直前に回収可能性のない他社の債権を譲り受け、その一部を同じく取締役のEに譲渡した。これにより、A、C(Aが代表の会社)、D、Eの親族・関係者4名が債権者となり、債権者集会において、この4名の同意によって議決権者の過半数という可決要件を充足させた。本来、これらの操作がなければ再生計画案は否決される見込みであった。
あてはめ
本件では、再生計画案が可決されないことが見込まれる状況下で、取締役DおよびEが、申立て直前にあえて回収可能性のない債権を譲り受け、議決権を行使している。この行為は、議決権者の過半数の同意を求める法172条の3第1項1号の「少額債権者保護」の趣旨を潜脱するものである。したがって、これら再生債務者の関係者による議決権行使は、信義則に反する行為によって可決を成立させたものといえる。
結論
本件再生計画の決議は「不正の方法」によって成立したものというべきであり、法174条2項3号に基づき、不認可とされるべきである。
実務上の射程
再生手続における多数決濫用の典型例であり、特に同族会社等で関係者が債権を「創出」または「細分化」して議決権を操作した場合の不認可事由を判断する際のリーディングケースとなる。答案上は、同法38条2項(誠実義務)を援用しつつ、可決要件の趣旨(潜脱の有無)に着目して論じるべきである。
事件番号: 平成29(許)19 / 裁判年月日: 平成29年12月19日 / 結論: 棄却
小規模個人再生において,再生債権の届出がされ(民事再生法225条により届出がされたものとみなされる場合を含む。),一般異議申述期間又は特別異議申述期間を経過するまでに異議が述べられなかったとしても,住宅資金特別条項を定めた再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合に当たるか否かの判断に当たっては,当該再生…
事件番号: 平成23(受)392 / 裁判年月日: 平成24年12月21日 / 結論: 破棄差戻
多額の債務を負い資金繰りが悪化していた株式会社が,転換社債型新株予約権付社債の発行によって得る払込金の使途につき,実際にはこれをスワップに係る契約における支払金に充てる予定であり,上記社債の発行による資金調達は不確実であったのに,上記払込金を債務の返済に充てる旨の虚偽記載等がされた臨時報告書及び有価証券報告書を提出し,…
事件番号: 昭和24(ク)53 / 裁判年月日: 昭和24年9月8日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法が特に最高裁判所の権限に属するものと定めた場合を除いてはすることができず、憲法判断の不当を理由とする場合等に限られる。 第1 事案の概要:抗告人は、何らかの裁判(詳細は判決文からは不明)に対して最高裁判所への抗告を申し立てた。しかし、その抗告申立書の内容からは、原決…
事件番号: 平成29(許)10 / 裁判年月日: 平成29年12月19日 / 結論: 棄却
賃借人Yが契約当事者を実質的に変更したときは賃貸人Xは契約を解除し違約金を請求することができる旨の定めのある建物の賃貸借契約において,Yが吸収分割の後は責任を負わないものとする吸収分割により契約当事者の地位をAに承継させた場合に,次の(1)~(3)など判示の事情の下においては,Yが,上記賃貸借契約を解除したXに対し,上…