多額の債務を負い資金繰りが悪化していた株式会社が,転換社債型新株予約権付社債の発行によって得る払込金の使途につき,実際にはこれをスワップに係る契約における支払金に充てる予定であり,上記社債の発行による資金調達は不確実であったのに,上記払込金を債務の返済に充てる旨の虚偽記載等がされた臨時報告書及び有価証券報告書を提出し,その約1箇月半後に上記虚偽記載等の事実の公表をするとともに,同日,再生手続開始の申立てをし,上記会社の株式が大幅に値下がりした場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記虚偽記載等の事実の公表前に上記会社の株式を取引所市場で取得した投資者の被った損害の額につき,金融商品取引法21条の2第2項の規定によりこれを算定するに当たり,上記投資者の損害は全て上記虚偽記載等により生じたものであるとして,同条4項又は5項の規定による減額を否定した原審の判断には,違法がある。 (1) 上記会社が再生手続開始の申立てに至ったのは,金融機関の融資姿勢の厳格化等に伴う資金繰りの悪化によるものであって,上記虚偽記載等や,その事実の公表に起因して,上記の資金繰りの悪化がもたらされたわけではない。 (2) 上記会社は,再生手続開始の申立ての約2箇月前から,米国の大手投資銀行等との間で業務・資本提携の交渉を開始しており,近々上記会社の株式の公開買付けが実施されることも見込まれていたのであって,上記虚偽記載等がされた当時,上記会社が既に倒産状態又は近々倒産することが確実な状態であったとはいえない。 (3) 上記会社の株式は,上記臨時報告書及び有価証券報告書の提出前から上記虚偽記載等の事実の公表の日に至るまで,ほぼ一貫して値下がりを続けており,上記値下がりには,上記会社の経営状態など上記虚偽記載等とは無関係な要因により生じた分が含まれている。 (補足意見がある。)
株式会社が,臨時報告書及び有価証券報告書の虚偽記載等の事実の公表をするとともに,同日,再生手続開始の申立てをした場合において,金融商品取引法21条の2第2項の規定により損害の額を算定するに当たり,同条4項又は5項の規定による減額を否定した原審の判断に違法があるとされた事例
金融商品取引法21条の2
判旨
金商法21条の2第4項及び5項にいう「虚偽記載等によつて生ずべき当該有価証券の値下り」とは、当該虚偽記載等と相当因果関係のある値下がりを指し、虚偽記載等とは無関係な要因(再生申立てや公表前の市場動向等)による値下がりは、同項による減額の対象となる。
問題の所在(論点)
1. 公表と同日になされた「再生申立て」による値下がりが、虚偽記載等と相当因果関係のある値下がりといえるか(金商法21条の2第4項、5項の減額事由)。 2. 公表当日の株価を2項の平均額算定に含めることができるか。 3. 公表当日に取得した株式について2項の推定規定を適用できるか。
事件番号: 平成29(受)761 / 裁判年月日: 平成29年11月16日 / 結論: 棄却
再生債務者が無償行為若しくはこれと同視すべき有償行為の時に債務超過であること又はその無償行為等により債務超過になることは,民事再生法127条3項に基づく否認権行使の要件ではない。
規範
1. 金商法21条の2第4項及び5項にいう「虚偽記載等によつて生ずべき当該有価証券の値下り」とは、当該虚偽記載等と相当因果関係のある値下がりをいう。 2. 同条2項の損害算定の基礎となる「公表日前」及び「公表日後」に公表当日は含まれない。 3. 同項の損害推定規定は、公表日前に取得した者にのみ適用され、公表当日に取得した者には適用されない。
重要事実
上告人(再生債務者)は、転換社債型新株予約権付社債(CB)発行の臨時報告書等において、実際にはCB払込金が即座にスワップ契約の支払に充てられる仕組みであったにもかかわらず、使途を「債務の返済」とのみ記載し、スワップ契約の存在を秘匿した(本件虚偽記載等)。その後、スポンサーの支援見送りにより資金繰りが行き詰まり、上告人は虚偽記載等の公表と同日に再生手続開始の申立てを行った。株主である被上告人は、公表前日及び当日に株式を取得したが、公表後の株価下落により損害を被ったとして賠償を求めた。
あてはめ
1. 再生申立てに至った主因は、従前からの資金繰り悪化と支援交渉の頓挫であり、虚偽記載等そのものが破綻を招いたわけではない。また、記載当時、既に倒産が確実でそれを隠蔽していた等の事情もない。よって、再生申立てによる値下がりは虚偽記載等と相当因果関係があるとはいえず、減額対象となる。 2. 公表前の市場価格についても、本件臨時報告書提出前から経営難を反映して一貫して下落しており、虚偽記載等と無関係な要因が含まれるため、これも減額対象となる。 3. 金商法21条の2第2項の文言上、「公表日前」および「公表日後」に当日は含まれず、また公表日当日の取得者に同項の適用はない。
結論
再生申立て等の虚偽記載等以外の要因による値下がり分を控除すべきである。また、公表日当日の取得分に2項の適用は認められない。原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
発行市場の虚偽記載(18条)における損害推定規定の適用範囲・減額事由についても類推可能な判断枠組みである。特に「倒産による暴落」が「虚偽記載等による下落」に含まれるか否かの判断において、虚偽記載が破綻を隠蔽していたかという実質的関連性を重視する実務指針となる。
事件番号: 平成19(許)24 / 裁判年月日: 平成20年3月13日 / 結論: 棄却
1 民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には,議決権を行使した再生債権者が詐欺,強迫又は不正な利益の供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合も含まれる。 2 次の(1)及び(2)の事情の下で…
事件番号: 平成29(許)19 / 裁判年月日: 平成29年12月19日 / 結論: 棄却
小規模個人再生において,再生債権の届出がされ(民事再生法225条により届出がされたものとみなされる場合を含む。),一般異議申述期間又は特別異議申述期間を経過するまでに異議が述べられなかったとしても,住宅資金特別条項を定めた再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合に当たるか否かの判断に当たっては,当該再生…