1 検察官は,金融商品取引法21条の2第3項にいう「当該提出者の業務若しくは財産に関し法令に基づく権限を有する者」に当たる。 2 金融商品取引法21条の2第3項にいう「虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項」とは,虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実をいう。 3 金融商品取引法21条の2第5項にいう「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り」とは,投資者が虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券を取得するに当たって実際に支払った額と当該取得の時点において当該虚偽記載等がなかった場合に想定される当該有価証券の市場価額との差額に相当する分の値下がりに限られず,有価証券報告書等の虚偽記載等と相当因果関係のある値下がりの全てをいう。 4 虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券につき,投資者がこれを複数回にわたってそれぞれ異なる価額で取得しこれを複数回にわたってそれぞれ異なる価額で処分した場合において,個々の取引ごとの取得と処分との対応関係の特定並びに取得価額及び処分価額の具体的な主張,立証がされていないときは,裁判所は,当該有価証券の取得価額の総額と処分価額の総額との差額をもって金融商品取引法21条の2第1項にいう「第19条第1項の規定の例により算出した額」とした上で,当該差額と同法21条の2第2項によって推定される損害額の総額とを比較し,その小さい方の金額をもって,上記投資者が同条に基づき請求することのできる額とするという算定方法によることができる。 5 金融商品取引法21条の2に基づく損害賠償債務は,損害の発生と同時に,かつ,何らの催告を要することなく,遅滞に陥る。 (3につき補足意見及び反対意見がある。)
1 検察官は金融商品取引法21条の2第3項にいう「当該提出者の業務若しくは財産に関し法令に基づく権限を有する者」に当たるか 2 金融商品取引法21条の2第3項にいう「虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項」の意義 3 金融商品取引法21条の2第5項にいう「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り」の意義 4 虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券につき,投資者がこれを複数回にわたってそれぞれ異なる価額で取得しこれを複数回にわたってそれぞれ異なる価額で処分した場合における,上記投資者が金融商品取引法21条の2に基づき請求することのできる額の算定方法 5 金融商品取引法21条の2に基づく損害賠償債務が遅滞に陥る時期
(1〜5につき)金融商品取引法21条の2 (5につき)民法412条
判旨
金融商品取引法21条の2第2項の「公表」とは、発行者の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実が周知されることで足り、真実の情報までの開示は不要である。また、虚偽記載と相当因果関係のある損害には、虚偽記載の発覚に伴う強制捜査や上場廃止等の事情(本件各事情)による値下がり分も含まれる。
問題の所在(論点)
1.検察官による容疑内容の伝達(本件開示)が、金商法21条の2第2項の「公表」に当たるか。 2.虚偽記載発覚後の強制捜査や上場廃止等の事情(本件各事情)による株価下落分は、同条5項により賠償額から控除すべき「虚偽記載等以外の事情により生じた損害」に当たるか。
規範
1.金商法21条の2第2項にいう「公表」とは、有価証券に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実について、多数の者が知り得る状態に置く措置がとられたことをいい、真実の情報が明らかにされることまでを要しない。 2.同条1項及び2項にいう「損害」とは、虚偽記載等と相当因果関係のある損害を全て含む。また、同条5項の「虚偽記載等によつて生ずべき当該有価証券の値下り」も、虚偽記載等と相当因果関係のある値下がりの全てを指す。重大な粉飾決算を行えば、強制捜査、代表者解任、上場廃止、信用失墜及びそれに伴う売り注文の殺到や市場の混乱が生じることは通常予想される事態であり、これらによる値下がりは虚偽記載と相当因果関係がある。
重要事実
上告人(ライブドア)は、実際には赤字であったにもかかわらず、架空売上の計上等により約50億円の黒字であるとする虚偽の有価証券報告書を提出した。その後、検察当局による強制捜査が開始され、検察官が報道機関に対し、粉飾決算の容疑がある旨の情報を開示した(本件開示)。これを受けて株価は暴落し、代表者の逮捕・解任、上場廃止に至った。本件開示日前後1か月間の平均株価の差額(推定損害額)は585円であった。取得者である被上告人らは、金商法21条の2に基づき損害賠償を請求した。
あてはめ
1.本件開示により、上告人が預金の付け替え等で約14億円を粉飾した容疑があるという、市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実が周知されたといえるため、「公表」があったと認められる。 2.本件虚偽記載は経常赤字を巨額の黒字に見せかける重大なものであり、これに起因して強制捜査や代表者解任、上場廃止、信用失墜、マスコミ報道、市場の混乱が生じることは通常予想される範囲内である。したがって、本件各事情による値下がりは本件虚偽記載と相当因果関係があり、同条5項による控除の対象とはならない。
結論
本件開示をもって「公表」にあたるとし、本件各事情による値下がり分を控除せず、推定損害額から本件虚偽記載と無関係な他社買収報道の影響(1割)のみを控除した原審の判断は正当である。
実務上の射程
流通市場における虚偽記載の賠償範囲について、いわゆる「取得時差額」限定説を否定し、発覚後の二次的影響による値下がり分も広く相当因果関係を認めた点に大きな意義がある。答案上は、金商法21条の2第5項の反証(控除)を検討する際、単なる市場の混乱や信用失墜は「虚偽記載等以外の事情」には当たらないと論じる際に活用する。
事件番号: 平成21(受)1177 / 裁判年月日: 平成23年9月13日 / 結論: その他
1 有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が当該虚偽記載がなければこれを取得することはなかったとみるべき場合,上記投資者に生じた当該虚偽記載と相当因果関係のある損害の額は,上記投資者が,当該虚偽記載の公表後,上記株式を取引所市場において処分したときはその取得価額と処分価額との…