1 仲裁人が当事者に対して仲裁法18条4項にいう「自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある」事実が生ずる可能性があることを抽象的に述べたことは,同項にいう「既に開示した」ことに当たらない。 2 仲裁人が,当事者に対して仲裁法18条4項にいう「自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある」事実を開示しなかったことについて,同項所定の開示すべき義務に違反したというためには,仲裁手続が終了するまでの間に,仲裁人が当該事実を認識していたか,仲裁人が合理的な範囲の調査を行うことによって当該事実が通常判明し得たことが必要である。
1 仲裁人が当事者に対して仲裁法18条4項にいう「自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある」事実が生ずる可能性があることを抽象的に述べたことは,同項にいう「既に開示した」ことに当たるか 2 仲裁人が,当事者に対して仲裁法18条4項にいう「自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある」事実を開示しなかったことについて,同項所定の開示義務に違反したというための要件
(1,2につき)仲裁法18条1項2号,仲裁法18条4項
判旨
仲裁人は、法18条4項に基づき、自己の公正性等に疑いを生じさせるおそれのある事実につき、仲裁人が認識していた事実のみならず、合理的範囲の調査により通常判明し得る事実をも開示すべき義務を負う。また、将来の利益相反の可能性を抽象的に述べただけでは、同条項にいう「既に開示した」ことには当たらない。
問題の所在(論点)
仲裁人が、自己の公正性等に疑いを生じさせる事実を「認識していなかった」場合であっても、仲裁法18条4項の開示義務違反が成立するか。また、将来の可能性を抽象的に述べた表明書の提出により同義務を免れるか。
規範
1. 仲裁人が法18条4項に基づき開示すべき「公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実」は、忌避事由の実効性を担保する趣旨から、将来の可能性を抽象的に述べるのみでは「既に開示した」ものとはいえない。 2. 仲裁人の開示義務の範囲は、仲裁人が認識している事実に限られず、仲裁手続終了までの間に、合理的範囲の調査により通常判明し得た事実も含まれる。
事件番号: 平成29(許)9 / 裁判年月日: 平成29年12月21日 / 結論: 棄却
国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づくXの申立てによりその子であるA,B,C及びDを米国に返還するよう命ずる終局決定が確定した場合において,次の(1)~(4)などの事情の下では,A及びBについては同法28条1項ただし書の規定を適用すべきであるとはいえず,C及びDについては同項4号の返還拒否…
重要事実
本件仲裁事件の仲裁人Aは、法律事務所K&Sに所属する弁護士であった。Aは選任時、将来K&Sの弁護士が当事者の関連会社を代理する等の利益相反が生じる可能性がある旨の抽象的な「本件表明書」を提出した。しかし、仲裁手続進行中、K&Sの他都市のオフィスの弁護士Bが、本件当事者である抗告人の親会社の別件訴訟代理人を務めている事実(本件事実)が生じたが、Aはこれを開示しなかった。相手方らは、法44条1項6号(仲裁手続が日本の法令に違反すること)に基づき、仲裁判断の取消しを求めた。
あてはめ
1. 本件表明書は、利益相反の可能性を抽象的に述べたにすぎず、当事者が忌避の申立てを的確に行うための具体的情報の提供となっていないため、法18条4項の「既に開示した」ものとは扱えない。 2. 開示義務違反の成否については、仲裁人が当該事実を認識していたか、あるいは「合理的な範囲の調査を行うことによって当該事実が通常判明し得たこと」が必要である。本件では、Aが本件事実を認識していたか、またK&Sの利益相反確認態勢に照らして合理的調査で判明し得たかが不明であるため、これらを確定せずに義務違反を認めることはできない。
結論
原決定を破棄し、差し戻す。仲裁人が事実を認識していたか、または合理的調査により通常判明し得たといえる場合には、開示義務違反(法18条4項)となり、仲裁判断取消事由(法44条1項6号)に該当し得る。
実務上の射程
仲裁人の独立性・公正性に関する開示義務の範囲を、認識していた事実だけでなく「合理的調査により判明し得る事実」まで広げた重要な判断である。答案上は、仲裁判断の取消事由を検討する際、手続違反(法44条1項6号)の前提となる開示義務違反(18条4項)の有無を判定する基準として活用する。特に大規模法律事務所に所属する実務家が仲裁人となる場合の利益相反調査の程度が問題となる事案で射程が及ぶ。
事件番号: 平成24(許)43 / 裁判年月日: 平成25年11月21日 / 結論: 破棄差戻
1 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は,上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって,上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになる。 2 新株発行の無効の訴えの被告とされた株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており,上記訴えに係る請求を認容する確…
事件番号: 平成11(許)40 / 裁判年月日: 平成12年4月28日 / 結論: 破棄自判
破産者が株式会社である場合を含め、破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき別除権者がその放棄の意思表示をすべき相手方は、破産者である。
事件番号: 平成18(許)39 / 裁判年月日: 平成19年3月20日 / 結論: 破棄差戻
1 受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた民訴法106条1項所定の同居者等と受送達者との間に,その訴訟に関して事実上の利害関係の対立があるにすぎない場合には,当該同居者等に対して上記書類を交付することによって,受送達者に対する補充送達の効力が生ずる。 2 受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた民訴法106条1項所定…
事件番号: 令和4(許)3 / 裁判年月日: 令和4年6月27日 / 結論: 破棄自判
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