破産者が株式会社である場合を含め、破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき別除権者がその放棄の意思表示をすべき相手方は、破産者である。
破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき放棄の意思表示をすべき相手方
破産法96条・破産法197条12号・破産法277条
判旨
破産管財人によって破産財団から放棄された財産について、別除権者がその別除権を放棄する場合、その意思表示の相手方は、管理処分権が回復した破産者である。
問題の所在(論点)
破産管財人が破産財団から放棄した財産について、別除権者が当該権利を放棄しようとする場合、その意思表示の相手方は誰か。破産管財人か、あるいは破産者か。
規範
破産管財人が破産財団に属する特定の財産を放棄した場合には、当該財産の管理及び処分権限は破産管財人から離脱し、破産者に回復する。したがって、当該財産を目的とする別除権につき、別除権者がその放棄の意思表示をすべき相手方は、破産管財人ではなく破産者である。
重要事実
破産者である株式会社Dの破産手続において、破産管財人(抗告人)は本件建物を破産財団から放棄した。その後、本件建物に別除権を有する相手方は、最後の配当に関する除斥期間内に、破産管財人に対して別除権放棄の意思表示を行った。しかし、破産者自身に対しては当該意思表示を行っていなかった。相手方は、破産管財人への意思表示をもって別除権放棄の効果が生じたと主張し、被担保債権を配当に加えるよう配当表の更正を求めて異議を申し立てた。
事件番号: 平成16(許)5 / 裁判年月日: 平成16年10月1日 / 結論: 破棄自判
破産者が株式会社である場合において,破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき,別除権者が破産者の破産宣告当時の代表取締役に対してした別除権放棄の意思表示は,これを有効とみるべき特段の事情の存しない限り,無効である。
あてはめ
本件において、本件建物は既に破産財団から放棄されている。この放棄により、本件建物の管理及び処分に関する権限は破産管財人から消滅し、破産者である株式会社Dに復活している。別除権の放棄は、対象物件の管理処分権を有する者に対してなされるべきであるところ、本件での管理処分権者は破産者である。したがって、相手方が破産管財人に対して行った放棄の意思表示は、権限のない者に対するものであり、別除権放棄の法的効果を生じさせない。
結論
別除権放棄の効果は認められず、相手方の配当表に対する異議申立ては理由がないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
破産手続における「財団放棄」後の権利関係の帰属を明確にした判例である。答案上では、破産管財人の職務権限の範囲(破産法78条1項参照)が放棄によっていかに変化するかを論ずる際の根拠となる。破産者が法人であっても同様に破産者に権限が回復すると判示している点も実務上重要である。
事件番号: 平成29(許)3 / 裁判年月日: 平成29年9月12日 / 結論: 棄却
破産債権者が破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた場合において,破産手続開始の時における債権の額として確定したものを基礎として計算された配当額が実体法上の残債権額を超過するときは,その超過する部分は当該債権について配当すべきである。 (補足意見がある。)
事件番号: 平成8(行ツ)111 / 裁判年月日: 平成9年12月18日 / 結論: 棄却
破産者の財産に対する滞納処分手続において交付要求がされたときは、交付要求に係る請求権に基づき破産宣告前に国税徴収法又は国税徴収の例による差押え又は参加差押えがされている場合を除き、交付要求に係る配当金は、破産管財人に交付すべきである。
事件番号: 平成10(許)8 / 裁判年月日: 平成11年4月16日 / 結論: 棄却
債権を目的とする質権の設定者は,質権者の同意があるなどの特段の事情のない限り,当該債権に基づきその債務者に対して破産の申立てをすることはできない。
事件番号: 平成18(許)12 / 裁判年月日: 平成18年9月28日 / 結論: 破棄差戻
株式会社の株主が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)294条1項に基づき裁判所に当該会社の検査役選任の申請をした時点で,当該株主が当該会社の総株主の議決権の100分の3以上を有していたとしても,その後,当該会社が新株を発行したことにより,当該株主が当該会社の総株主の議決権の100分の3未満しか有しないものと…