株式会社の株主が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)294条1項に基づき裁判所に当該会社の検査役選任の申請をした時点で,当該株主が当該会社の総株主の議決権の100分の3以上を有していたとしても,その後,当該会社が新株を発行したことにより,当該株主が当該会社の総株主の議決権の100分の3未満しか有しないものとなった場合には,当該会社が当該株主の上記申請を妨害する目的で新株を発行したなどの特段の事情のない限り,上記申請は,申請人の適格を欠くものとして不適法である。
株式会社の株主が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)294条1項に基づき検査役選任の申請をした時点で総株主の議決権の100分の3以上を有していたが新株発行により総株主の議決権の100分の3未満しか有しないものとなった場合における上記申請の適否
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)294条1項
判旨
株式会社が特定の株主に対し、その権利の行使に関し、その計算において、株主を実質的に一人にする目的で、その有する株式を会社が指定する第三者に売り渡すよう要求し、その代わりとして金銭を支払うことを約したことは、会社法120条1項(旧商法294条の2第1項)の禁ずる「株主の権利の行使に関し、株式会社の計算においてした利益の供与」に該当する。
問題の所在(論点)
株式会社が特定の株主に対し、その持株を第三者に売却させる目的で、会社自身の計算により金銭を支払う行為が、会社法120条1項(旧商法294条の2第1項)にいう「株主の権利の行使に関し、株式会社の計算においてした利益の供与」に該当するか。
規範
「株主の権利の行使に関し」てなされた利益供与とは、株主が株主総会における議決権の行使等の株主の権利を行使し、または行使しないことへの対価として、会社が経済上の利益を提供することをいう。また、会社が特定の株主に対し、他の株主に提供されない利益を提供し、その結果として特定の株主の持株比率を低下させ、あるいは実質的に株主の地位を失わせる行為も、会社の支配構造に影響を及ぼす株主権行使への干渉として、これに含まれると解すべきである。
事件番号: 平成12(許)17 / 裁判年月日: 平成13年1月30日 / 結論: 破棄自判
取締役会の意思決定が違法であるとして取締役に対し提起された株主代表訴訟において,株式会社は,特段の事情がない限り,取締役を補助するため訴訟に参加することが許される。 (反対意見がある。)
重要事実
1. 会社Aは、特定の株主Bの有する株式(発行済株式総数の約3.2%)が特定の第三者に分散することを防ぎ、かつ自社の支配権を安定させるため、Bに対し、その株式を会社が指定する第三者へ売り渡すよう要請した。 2. 会社Aは、Bが右要請に応じ株式を譲渡したことに対する対価として、会社Aの計算において多額の金銭をBに支払った。 3. この取引により、Bの持株比率は約0.53%まで低下し、最終的にBが株主総会等で及ぼし得る影響力(権利行使)が大幅に制限されることとなった。
あてはめ
1. 本件において、会社AがBに対し金銭を支払ったのは、Bの持株比率を低下させ、Bによる株主権の行使を封じ、会社の経営支配を安定させる目的で行われたものである。これは株主としての地位や議決権行使の態様に直接影響を及ぼす目的といえる。 2. また、会社が指定する者に株式を売却させ、その代償として金銭を交付する行為は、実質的に株主に対して特定の方向での権利行使(本件では権利行使の余地の剥奪)を強いるものに他ならない。 3. したがって、本件金銭の支払は、株主としての地位に基づく権利行使に関連してなされたものであり、「株主の権利の行使に関し」なされた利益供与といえる。
結論
本件のような特定の株主の持株を排除するための金銭支払は、会社法120条1項に違反し、無効(または不法行為)となり得る。したがって、会社は当該利益供与の返還請求等を免れない。
実務上の射程
判決文からは不明(ただし、本件判断は旧商法下のものであるが、現行会社法120条1項下においても同様の規範が維持されると解される)。
事件番号: 平成16(許)5 / 裁判年月日: 平成16年10月1日 / 結論: 破棄自判
破産者が株式会社である場合において,破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき,別除権者が破産者の破産宣告当時の代表取締役に対してした別除権放棄の意思表示は,これを有効とみるべき特段の事情の存しない限り,無効である。
事件番号: 令和4(許)11 / 裁判年月日: 令和5年10月26日 / 結論: 破棄自判
吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って当該吸収合併に反対する旨の議決権の代理行使を第三者に委任することを内容とする委任状を上記会社に送付した場合において、次の⑴及び⑵の事実関係の下では、上記株主が上記会社に対して上記委任状を送付したことは、会社法785条2項1号イにいう、吸収合併等をするため…
事件番号: 平成11(許)40 / 裁判年月日: 平成12年4月28日 / 結論: 破棄自判
破産者が株式会社である場合を含め、破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき別除権者がその放棄の意思表示をすべき相手方は、破産者である。
事件番号: 平成14(許)10 / 裁判年月日: 平成15年2月27日 / 結論: 破棄自判
定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めのある会社の株式について,会社に対して株式の譲渡を承認すべきこと及びこれを承認しないときは他に譲渡の相手方を指定すべきことを請求した株主は,取締役会から指定された者が株主に対して当該株式を売り渡すべき旨を請求するまで,その請求を撤回することができる。 (反対意見がある…