破産者が株式会社である場合において,破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき,別除権者が破産者の破産宣告当時の代表取締役に対してした別除権放棄の意思表示は,これを有効とみるべき特段の事情の存しない限り,無効である。
破産者が株式会社である場合において破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき破産者の破産宣告当時の代表取締役に対してした別除権放棄の意思表示の効力
破産法96条,破産法197条12号,破産法277条,商法254条3項,商法417条,民法653条
判旨
株式会社である破産者の財産が放棄された場合、別除権放棄の意思表示は旧取締役ではなく清算人に対してなされるべきであり、特段の事情がない限り、旧取締役に対する放棄の意思表示は無効である。
問題の所在(論点)
破産財団から放棄された不動産について、別除権者が「旧取締役」に対して行った別除権放棄の意思表示は有効か。配当加入の要件たる別除権放棄の相手方が問題となる。
規範
1. 破産財団から放棄された財産を目的とする別除権の放棄の相手方は破産者である。 2. 破産した株式会社の旧取締役は、解散により管理処分権限を失い、財産放棄後も当然にはその権限を回復しない。したがって、放棄の意思表示の受領等は、法定の清算人または裁判所が選任した清算人(旧商法417条1項・2項、現行会社法475条・478条参照)に対してなされるべきである。 3. 以上より、旧取締役に対してした別除権放棄の意思表示は、有効とみるべき「特段の事情」がない限り、無効である。
重要事実
1. 破産管財人(抗告人)は、被担保債権額が時価を超過する不動産を、別除権者(相手方)への事前通知を経て破産財団から放棄した。 2. 相手方は、最後配当の除斥期間内に、破産会社の旧取締役に対し別除権放棄の意思表示を行い、根抵当権抹消登記を完了させた。 3. 相手方は別除権を放棄したとして配当加入を求めたが、配当表に記載されなかったため異議を申し立てた。
事件番号: 平成11(許)40 / 裁判年月日: 平成12年4月28日 / 結論: 破棄自判
破産者が株式会社である場合を含め、破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき別除権者がその放棄の意思表示をすべき相手方は、破産者である。
あてはめ
1. 本件では、最後配当の公告から除斥期間終了まで15日間であり、破産法上の期間制限に準拠している。したがって、清算人選任等の手続期間が短いことをもって、旧取締役への意思表示を有効とする「特段の事情」には当たらない。 2. 相手方は管財人から事前通知を受けており、放棄前に管財人へ意思表示を行うか、放棄後に清算人選任を申し立てる機会もあった。ゆえに、旧取締役への意思表示を無効としても相手方の利益を不当に害さない。 3. 権限のない旧取締役に対する意思表示は原則通り無効であり、別除権の放棄は認められない。
結論
別除権放棄の意思表示は無効である。したがって、相手方の債権を配当に加えることはできず、異議申立ては却下される。
実務上の射程
破産者が株式会社の場合の意思表示の相手方を画定した重要判例。答案では、配当加入(破産法198条等)の前提として別除権放棄の有効性が争われる場面で、会社法上の清算人制度と絡めて論じる必要がある。「特段の事情」の有無の検討に際しては、手続保障の観点から事前通知の有無や手続的な猶予期間を具体的に検討すべきである。
事件番号: 平成29(許)3 / 裁判年月日: 平成29年9月12日 / 結論: 棄却
破産債権者が破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた場合において,破産手続開始の時における債権の額として確定したものを基礎として計算された配当額が実体法上の残債権額を超過するときは,その超過する部分は当該債権について配当すべきである。 (補足意見がある。)
事件番号: 平成10(許)8 / 裁判年月日: 平成11年4月16日 / 結論: 棄却
債権を目的とする質権の設定者は,質権者の同意があるなどの特段の事情のない限り,当該債権に基づきその債務者に対して破産の申立てをすることはできない。
事件番号: 平成18(許)12 / 裁判年月日: 平成18年9月28日 / 結論: 破棄差戻
株式会社の株主が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)294条1項に基づき裁判所に当該会社の検査役選任の申請をした時点で,当該株主が当該会社の総株主の議決権の100分の3以上を有していたとしても,その後,当該会社が新株を発行したことにより,当該株主が当該会社の総株主の議決権の100分の3未満しか有しないものと…
事件番号: 令和4(許)11 / 裁判年月日: 令和5年10月26日 / 結論: 破棄自判
吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って当該吸収合併に反対する旨の議決権の代理行使を第三者に委任することを内容とする委任状を上記会社に送付した場合において、次の⑴及び⑵の事実関係の下では、上記株主が上記会社に対して上記委任状を送付したことは、会社法785条2項1号イにいう、吸収合併等をするため…