債権を目的とする質権の設定者は,質権者の同意があるなどの特段の事情のない限り,当該債権に基づきその債務者に対して破産の申立てをすることはできない。
債権を目的とする質権の設定者が当該債権に基づきその債務者に対して破産の申立てをすることの可否
民法367条,破産法132条
判旨
債権が質権の目的とされた場合、質権設定者は、質権者の同意があるなどの特段の事情がない限り、当該債権に基づき債務者の破産申立てをすることはできない。
問題の所在(論点)
質権設定者は、質権の目的とした債権を「原因債権」として、債務者の破産申立てを行うことができるか。質権設定者の処分権限の有無が問題となる。
規範
質権の目的となった債権については、質権設定者は原則として取立権を有せず、質権者が専らこれを行使し得る(民法367条)。したがって、質権者の同意がある等の特段の事情がない限り、質権設定者は当該債権を原因とする破産申立てを行うことはできない。
重要事実
債権者が、自己の有する債権を目的として質権を設定した。その後、質権設定者である債権者が、質権者の同意を得ることなく、当該債権に基づき、債務者(株式会社)に対して破産申立てを行った。
事件番号: 平成10(許)2 / 裁判年月日: 平成11年5月17日 / 結論: 棄却
一 銀行甲が、輸入業者乙のする商品の輸入について信用状を発行し、約束手形の振出しを受ける方法により乙に輸入代金決済資金相当額を貸し付けるとともに、乙から右約束手形金債権の担保として輸入商品に譲渡担保権の設定を受けた上、乙に右商品の貸渡しを行ってその処分権限を与えたところ、乙が、右商品を第三者に転売した後、破産の申立てを…
あてはめ
債務者の破産は、質権者に対し、破産手続によらなければ取立てができなくなるという制約を課す(破産法16条)。さらに、債務者が株式会社である場合には解散事由となり、質権者は配当で満足を受けられなかった残額の履行を求めることが実効的に不可能となる。このような破産申立ては、質権者が専ら有する取立権の行使に対して重大な影響を及ぼす行為である。本件において質権者の同意がある等の特段の事情は認められないため、質権設定者による申立ては許されない。
結論
質権設定者による破産申立ては却下されるべきである。特段の事情がない限り、質権設定者には申立権限が認められない。
実務上の射程
質権設定による処分権限の制限が、単なる取立て(支払請求)のみならず、破産申立てという債権の帰趨を左右する強力な法的手段にも及ぶことを示した。答案上は、質権設定者の権利行使が質権者の利益を害するか否かの判断基準として活用できる。
事件番号: 平成11(許)8 / 裁判年月日: 平成11年3月9日 / 結論: その他
民訴法三一八条一項の事件に当たらないことを理由として、原裁判所は、同条五項、同法三一六条一項により上告受理の申立てを却下することができない。
事件番号: 令和4(許)16 / 裁判年月日: 令和5年2月1日 / 結論: 棄却
破産管財人が、別除権の目的である不動産の受戻しについて上記別除権を有する者との間で交渉し、又は、上記不動産につき権利の放棄をする前後に上記の者に対してその旨を通知するに際し、上記の者に対して破産者を債務者とする上記別除権に係る担保権の被担保債権についての債務の承認をしたときは、その承認は上記被担保債権の消滅時効を中断す…
事件番号: 昭和34(ク)172 / 裁判年月日: 昭和34年6月17日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特別に許容された場合に限られ、民事事件においては旧民事訴訟法419条の2(現行336条相当)所定の特別抗告のみが認められる。適法な違憲の主張を具体的に示さず、単なる事実誤認や手続違背を主張する抗告は、特別抗告の要件を欠き不適法である。 第1 事案…
事件番号: 昭和26(ク)199 / 裁判年月日: 昭和26年12月3日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に許容された場合に限定される。民事事件においては、原決定の憲法適合性に関する判断を不当とするもの(特別抗告)に限り適法となる。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。抗告理由は、原決定が憲法に適合するか否かにつ…