民訴法三一八条一項の事件に当たらないことを理由として、原裁判所は、同条五項、同法三一六条一項により上告受理の申立てを却下することができない。
民訴法三一八条一項の事件に当たらないことを理由として原裁判所が上告受理の申立てを却下することの可否
民訴法316条1項,民訴法318条1項,民訴法318条5項
判旨
上告受理の申立てに係る事件が民事訴訟法318条1項の要件を満たすか否かは、上告裁判所である最高裁判所のみが判断し得る事項である。したがって、原裁判所が当該要件の不充足を理由に申立てを却下することは許されない。
問題の所在(論点)
上告受理の申立てを受けた原裁判所が、当該事件が民事訴訟法318条1項の事件に当たらないことを理由として、同法318条5項に基づき準用される316条1項により申立てを却下することができるか。
規範
上告受理の申立てに係る事件が、最高裁判所の判例と相反する判断を含んでいることその他の法令の解釈に関する重要な事項を含むこと(民事訴訟法318条1項)に該当するか否かの判断権能は、専ら上告裁判所である最高裁判所に属する。したがって、原裁判所による却下事由(同法318条5項、316条1項)に、申立てに係る事件が同法318条1項の事件に当たらないという実質的理由は含まれない。
重要事実
抗告人は、相手方との退職金請求事件の控訴審判決に対し、最高裁判所へ上告受理の申立てを行った。これに対し、原裁判所(大阪高等裁判所)は、当該事件が民事訴訟法318条1項に規定する「法令の解釈に関する重要な事項を含む」事件等に当たらないと判断し、同法318条5項、316条1項を根拠に、決定で当該上告受理の申立てを却下した。抗告人はこの却下決定を不服として抗告した。
事件番号: 昭和39(ク)326 / 裁判年月日: 昭和39年12月25日 / 結論: 棄却
原裁判所の決定によつて上告却下ができる旨規定した民訴法第三九九条は、違憲ではない。
あてはめ
民事訴訟法318条1項の事由の有無は、最高裁判所の裁量的な判断に委ねられた事項であり、その性質上、最高裁判所のみが判断し得る。本件において、原裁判所は申立てが同項の事件に当たらないことを理由に却下決定を行っているが、これは最高裁判所にのみ認められた専権的判断を代行するものであり、原裁判所の権限を逸脱したものといえる。したがって、かかる事由による却下は法令の違反を免れない。
結論
原裁判所は、上告受理の申立てが民事訴訟法318条1項の事件に当たらないことを理由に申立てを却下することはできない。本件却下決定には裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるため、破棄を免れない。
実務上の射程
本判決は、上告受理申立てにおける原裁判所と最高裁判所の役割分担を明確にしたものである。原裁判所による形式的審査権限(期間徒過や手数料未納等)と、最高裁判所による実質的受理事由の審査権限を峻別する際の根拠として機能する。
事件番号: 平成10(ク)699 / 裁判年月日: 平成11年3月12日 / 結論: 棄却
高等裁判所のした保全抗告についての決定は、許可抗告の対象となる。
事件番号: 平成10(ク)646 / 裁判年月日: 平成11年3月9日 / 結論: 棄却
上告の理由が、理由の不備をいうがその実質は事実誤認を主張するものであって、明らかに民訴法三一二条一項及び二項に規定する事由に該当しないときでも、原裁判所が同法三一六条一項一号によって上告を却下することはできない。
事件番号: 平成10(許)8 / 裁判年月日: 平成11年4月16日 / 結論: 棄却
債権を目的とする質権の設定者は,質権者の同意があるなどの特段の事情のない限り,当該債権に基づきその債務者に対して破産の申立てをすることはできない。
事件番号: 平成21(許)9 / 裁判年月日: 平成21年6月30日 / 結論: その他
特別抗告の理由として形式的には憲法違反の主張があるがそれが実質的には法令違反の主張にすぎない場合であっても,原裁判所が民訴法336条3項,327条2項,316条1項により特別抗告を却下することはできない。