高等裁判所のした保全抗告についての決定は、許可抗告の対象となる。
高等裁判所のした保全抗告についての決定と許可抗告の対象
民訴法337条1項,民事保全法41条3項
判旨
民事訴訟法337条1項ただし書は、高等裁判所がした保全抗告についての決定を許可抗告の対象から除外する趣旨ではない。法令解釈の統一という制度趣旨に基づき、保全抗告決定も許可抗告の対象に含まれると解すべきである。
問題の所在(論点)
民事訴訟法337条1項ただし書が、高等裁判所のした保全抗告についての決定を許可抗告の対象から除外する趣旨であるか。すなわち、保全抗告決定に対する許可抗告の可否が論点となる。
規範
民事訴訟法337条に規定する許可抗告制度は、法令解釈の統一を図ることを目的として、最高裁判所への上訴制限に対する例外として設けられたものである。したがって、高等裁判所の決定のうち、法令の解釈に関する重要な事項が含まれ、法令解釈の統一を図る必要性が高いものについては、同条1項ただし書の規定にかかわらず、許可抗告の対象に含まれると解すべきである。
重要事実
抗告人は、高等裁判所が下した保全抗告についての決定に対し、民事訴訟法337条に基づき最高裁判所への抗告の許可を求めた。しかし、原審(高等裁判所)は、保全抗告についての決定は同条1項ただし書の「抗告をすることができる決定」に該当しない等として、許可抗告の対象から除外されると判断した。これに対し、抗告人が最高裁判所に特別抗告および許可抗告の可否を争った事案である。
事件番号: 平成10(ク)379 / 裁判年月日: 平成10年7月13日 / 結論: 棄却
抗告許可申立ての対象とされる裁判に法令の解釈に関する重要な事項が含まれるか否かの判断を高等裁判所にさせることとしている民訴法三三七条の規定は、憲法三一条、三二条に違反しない。
あてはめ
保全抗告についての決定は、その性質上、法令の解釈に関する重要な事項が含まれ得る。これは、執行抗告等についての決定と同様に、法令解釈の統一を図る必要性が高い事案が存在することを意味する。許可抗告制度が法令解釈の統一を目的とする以上、保全抗告決定をあえて対象から除外する合理的な理由は認められない。したがって、同条1項ただし書は、保全決定を許可抗告の対象から除外する趣旨ではないと解される。
結論
高等裁判所のした保全抗告についての決定は、民事訴訟法337条1項に基づく許可抗告の対象となる。本件の原審による対象外との判断は法令解釈の誤りであるが、憲法違反とはいえないため、結論として抗告は棄却される。
実務上の射程
民事保全手続においても、法令解釈の統一が必要な重要事項については最高裁によるチェックを可能とする判断である。答案上は、許可抗告の対象範囲を制度趣旨(法令解釈の統一)から解釈する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和32(ク)78 / 裁判年月日: 昭和32年6月11日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に最高裁判所への抗告が許容されている場合に限られる。 第1 事案の概要:抗告人が、ある民事事件に関して最高裁判所に対して抗告を申し立てた。しかし、当該抗告は当時の民事訴訟法419条の2が定める特別の申立事由を備えていなかった。 第2 問題…
事件番号: 平成21(許)9 / 裁判年月日: 平成21年6月30日 / 結論: その他
特別抗告の理由として形式的には憲法違反の主張があるがそれが実質的には法令違反の主張にすぎない場合であっても,原裁判所が民訴法336条3項,327条2項,316条1項により特別抗告を却下することはできない。
事件番号: 平成11(許)8 / 裁判年月日: 平成11年3月9日 / 結論: その他
民訴法三一八条一項の事件に当たらないことを理由として、原裁判所は、同条五項、同法三一六条一項により上告受理の申立てを却下することができない。
事件番号: 昭和31(ク)47 / 裁判年月日: 昭和31年3月27日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告を特別抗告のみに限定することは立法政策の問題であり、憲法32条に違反しない。また、審級制度の構成は憲法81条の場合を除き立法府の裁量に委ねられている。 第1 事案の概要:抗告人らが、高等裁判所のなした決定に対し最高裁判所に抗告を申し立てた事案。抗告人は憲法違反を主張の根拠とし…