特別抗告の理由として形式的には憲法違反の主張があるがそれが実質的には法令違反の主張にすぎない場合であっても,原裁判所が民訴法336条3項,327条2項,316条1項により特別抗告を却下することはできない。
特別抗告の理由として形式的には憲法違反の主張があるがそれが実質的には法令違反の主張にすぎない場合に原裁判所が特別抗告を却下することの可否
民訴法316条1項,民訴法317条2項,民訴法336条1項
判旨
特別抗告の理由に形式的な憲法違反の主張があれば、実質が法令違反にすぎない場合であっても、原裁判所が民訴法336条3項、327条2項、316条1項により却下することはできない。
問題の所在(論点)
特別抗告の理由が形式的には憲法違反を主張しているが、実質的には法令違反の主張にすぎない場合、原裁判所において民訴法316条1項を準用して特別抗告を却下することができるか。
規範
特別抗告(民訴法336条1項)が提起された場合、その理由として形式的に憲法違反の主張が含まれているのであれば、それが実質的には単なる法令違反をいうものにすぎない場合であっても、最高裁判所が棄却(同法336条3項、327条2項、317条2項)できるにとどまり、原裁判所が却下(同法316条1項準用)することはできない。
重要事実
抗告人は、名古屋高裁による訴訟救助却下決定に対し、憲法25条1項、32条、76条に違反するとして特別抗告を申し立てた。原審(名古屋高裁)は、当該特別抗告の理由が実質的には法令違反をいうものにすぎず、民訴法336条1項に規定する事由に該当しないと判断し、同法336条3項、327条2項、316条1項に基づき、当該特別抗告を却下する決定を行った。
事件番号: 昭和25(ク)40 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所への抗告が許されるのは、憲法違反を理由とする場合に限られる。単なる法令解釈の不当を憲法違反と主張することは、適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、相手方の占有を解いて執行吏に保管させ、現状変更を禁止する仮処分決定を得ていた。その後、相手方が現状を変更したことを理由に…
あてはめ
本件では、抗告人は形式上憲法25条、32条、76条違反を主張して特別抗告を行っている。民訴法上の不適法な上告等の却下権限は、形式的な要件の具備を確認する趣旨である。憲法違反の主張の当否という実質的判断は、上告審裁判所(最高裁判所)の権限に属する。したがって、形式的に憲法違反の主張がある以上、たとえ内容が法令違反の主張にすぎないとしても、原裁判所が却下権限を行使することは法令の解釈を誤ったものといえる。
結論
原決定を破棄する。特別抗告の理由に形式的な憲法違反の主張がある以上、原裁判所は却下決定をすることができず、事件を最高裁判所に送付しなければならない。
実務上の射程
上告(特別抗告)における原裁判所の却下権限の限界を画した判例である。答案上は、不適法な上告の処理において、原裁判所による門前払いが許されるのは形式的要件(理由の記載の有無等)に限定され、理由の内容的当否(実質的な主張内容の評価)に踏み込むことは許されないという論理で活用できる。
事件番号: 昭和24新(つ)5 / 裁判年月日: 昭和24年9月7日 / 結論: 棄却
公判期日において刑訴法第一四六條により証言を拒んだ証人並びに供述をした証人の檢察官に対する各供述録取書及び被告人の司法警察職員に対する供述録取書を、檢察官が証拠として提出したのに対して、弁護人から証人の右供述録取書は同法第三二一條第一項第二号に定める要件を備えていないものであり、被告人の右供述録取書は同法第三二二條によ…
事件番号: 昭和25(ク)130 / 裁判年月日: 昭和26年3月10日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民事訴訟法上の特別抗告(現行民訴法336条)に限定され、憲法違反の主張を実質的に伴わないものは不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し最高裁判所へ抗告を申し立てた。その理由は、文言上は「違憲」という言葉を使用していたものの、その実質的な内容は、原審が認定し…
事件番号: 昭和31(ク)233 / 裁判年月日: 昭和31年9月14日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては旧民訴法419条の2(現行民訴法336条)の特別抗告に限定される。憲法違反を主張しても、その実質が単なる事実誤認の主張にすぎない場合は、適法な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:抗告人は、裁判官の…
事件番号: 平成10(ク)699 / 裁判年月日: 平成11年3月12日 / 結論: 棄却
高等裁判所のした保全抗告についての決定は、許可抗告の対象となる。