公判期日において刑訴法第一四六條により証言を拒んだ証人並びに供述をした証人の檢察官に対する各供述録取書及び被告人の司法警察職員に対する供述録取書を、檢察官が証拠として提出したのに対して、弁護人から証人の右供述録取書は同法第三二一條第一項第二号に定める要件を備えていないものであり、被告人の右供述録取書は同法第三二二條により証拠能力を有しないとの主張があつた場合に、これを証拠書類として受理することができるかどうかは、もつぱら同法第三二一條及び第三二二條の解釈如何によるものであつて憲法上の問題ではない。
供述録取書を証拠として受理したことの適否と憲法上の問題
刑訴法146條,刑訴法321條2項2号,刑訴法322條,刑訴法309條,刑訴法419條,刑訴法420條1項,刑訴法433條項,同法第四〇五條,日本國憲法第三一條,同法第三七條第二項
判旨
裁判所が伝聞証拠の証拠能力の有無を判断し、証拠調を決定する手続は、もっぱら訴訟法上の問題であって憲法上の問題ではないため、特別抗告の対象とはならない。
問題の所在(論点)
伝聞証拠の証拠能力に関する裁判所の判断(証拠決定)に対し、憲法違反を理由として特別抗告を申し立てることができるか。伝聞法則の適用誤りが、当然に憲法上の問題に昇華されるかが問われた。
規範
刑事訴訟法433条1項に基づく最高裁判所への特別抗告は、憲法違反または憲法解釈の誤りがあることを理由とする場合に限定される。証拠書類が伝聞例外の要件(刑訴法321条、322条等)を満たすか否かの判断は、純然たる訴訟法上の解釈問題であり、直ちに憲法31条(適正手続)や37条2項(証人審問権)の問題を構成するものではない。
重要事実
被告人Aに対する衆議院議員選挙法違反等の事件において、第一審裁判所は、検察官請求に係る供述録取書等(証言拒絶された検察官面前調書や任意性に疑いのある被告人の供述録取書を含む)につき、弁護人の異議を却下して証拠採用を決定した。これに対し、弁護人は当該決定が憲法31条、37条2項に違反すると主張して特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和24新(つ)3 / 裁判年月日: 昭和24年9月7日 / 結論: 棄却
原審が、被告人と共犯関係にある証人の檢察官に対する供述録取書を証拠として受理したことに対する異議申立を却下した決定に対して、右録取書は、憲法第三八條第一項に違反し予め供述を拒み得ることを告げないで作成されたものであるから、これを証拠として受理することも違憲であると主張することは、刑事訴訟手続のみに関する主張に帰し、特別…
あてはめ
抗告人は、伝聞例外の要件を欠く証拠の採用が憲法違反にあたると主張する。しかし、供述録取書が刑訴法321条1項2号の要件(特信情況等)を備えているか、あるいは同法322条の任意性を備えているかの判断は、あくまで同法の解釈・適用に関する訴訟手続上の問題である。抗告人の主張は、訴訟法違反を実質において主張しながら強いて憲法問題に結びつけたものに過ぎない。
結論
本件証拠決定はもっぱら訴訟法上の問題にとどまり、憲法上の問題に触れないものであるから、刑訴法433条1項の特別抗告の要件を満たさない。よって、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
伝聞法則の違反を理由に直ちに憲法違反を主張して特別抗告(または上告)を行うことは困難であることを示している。司法試験においては、伝聞証拠の許容性が直接的には法律上の問題であることを確認する際に参照されるが、実務上は上告理由の構成における「憲法違反」の主張の限界を画する判例である。
事件番号: 昭和24(つ)14 / 裁判年月日: 昭和24年4月25日 / 結論: 棄却
所論の書面は、いずれも司法警察職員の作成した捜査報告書である、右書面は被告人以外の者が作成した供述書で供述者の署名押印はあるが刑訴第三二一條第三二四條所定の證據とすることのできる要件は一つも具えていない、檢察官は右書面は刑訴法第三二三條第一項第一號の書面であると主張するが同條の書面は、その成立並に内容において信用度が特…
事件番号: 昭和24新(つ)11 / 裁判年月日: 昭和25年3月27日 / 結論: 棄却
辯護人が「訴訟の途中に於て本件公訴の提起が合憲性を有するや否やに付重大なる疑問を生じた」からといつて公訴棄却の申立をしても裁判所が事案を審理するに當り、これに關する辯護人の申立を却下するに際し、公訴提起の憲法適否につき理由を示さなければならぬことは憲法上も訴訟法上も要請されてはないのである。
事件番号: 昭和24(つ)50 / 裁判年月日: 昭和24年7月27日 / 結論: 棄却
裁判所は公判手續において、事實審理に入るに先立つて、被告人又は辯護人から公判請求書に記載された罪名の基本である刑罰法令が違憲無効であるか否かについてその判斷開示の請求があつた場合においても、先づその判斷を示すことを要しないし、また裁判所が右の如き判斷を示すことなく事實審理に入ることをもつて、所論の如く、「有罪の豫斷を抱…
事件番号: 昭和27(し)34 / 裁判年月日: 昭和28年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の対象となる事由が存在するか否かは、原審において弁護人が異議を述べ、裁判所がこれに対し却下の決定をなしたという事実の有無に照らして判断されるべきであり、それらの事実が認められない場合には、特別抗告は不適法として棄却される。 第1 事案の概要:暴力行為等処罰に関する法律違反等に問われた被告人…