所論の書面は、いずれも司法警察職員の作成した捜査報告書である、右書面は被告人以外の者が作成した供述書で供述者の署名押印はあるが刑訴第三二一條第三二四條所定の證據とすることのできる要件は一つも具えていない、檢察官は右書面は刑訴法第三二三條第一項第一號の書面であると主張するが同條の書面は、その成立並に内容において信用度が特に高い書面であるからこれを證據とすることができるものとしたのであるから本件警察職員の作成した捜査報告書の如きものは、右第三二三條所定の書面に該當しないことは明かである、してみれば右書面を辯護人の異議があつたに拘らず、これを受理し證據調をすることは違法である。
捜査報告書と證據調
刑訴法321條,刑訴法324條,刑訴法323條1項1號
判旨
司法警察職員が作成した捜査報告書は、特信性が認められないため、刑事訴訟法323条各号の書面に該当せず、321条等の伝聞例外要件を欠く限り証拠能力は認められない。
問題の所在(論点)
司法警察職員が作成した捜査報告書が、刑事訴訟法323条(特に1号)に規定する「特信書面」として証拠能力を認められるか。
規範
刑事訴訟法323条各号に掲げられる書面は、その成立および内容において信用度が特に高い書面であることを根拠に証拠能力を認めるものである。したがって、これに準ずる程度の高度な特信性が認められない書面は、同条所定の書面には該当しない。
重要事実
検察官が、被告人以外の者(司法警察職員)の供述書である捜査報告書を証拠として提出した。当該書面には供述者の署名・押印はあるものの、刑訴法321条、324条の伝聞例外要件を具備していなかった。検察官は刑訴法323条1号の書面に該当すると主張したが、弁護人は異議を申し立てた。これに対し、裁判所は異議を却下して証拠採用を維持したため、特別抗告がなされた。
事件番号: 昭和24新(つ)5 / 裁判年月日: 昭和24年9月7日 / 結論: 棄却
公判期日において刑訴法第一四六條により証言を拒んだ証人並びに供述をした証人の檢察官に対する各供述録取書及び被告人の司法警察職員に対する供述録取書を、檢察官が証拠として提出したのに対して、弁護人から証人の右供述録取書は同法第三二一條第一項第二号に定める要件を備えていないものであり、被告人の右供述録取書は同法第三二二條によ…
あてはめ
本件の捜査報告書は司法警察職員が捜査の一環として作成したものであり、戸籍謄本や公正証書のようにその成立や内容において当然に高い信用性が担保されているものとはいえない。そのため、刑訴法323条1号所定の書面には該当せず、他の伝聞例外要件(321条等)を充足しない限り、弁護人の異議を排して証拠採用することは違法である。原審が異議却下決定を行い証拠から排除しなかった措置は、刑訴法上不当である。
結論
司法警察職員作成の捜査報告書は刑訴法323条所定の書面に該当せず、伝聞例外の要件を欠く場合は証拠能力が否定される(ただし、本件特別抗告自体は憲法違反をいう実質を欠くため棄却される)。
実務上の射程
伝聞例外のうち、323条(業務書類等)の限定解釈を示す判例である。捜査機関が作成する報告書形式の書面は、職務上作成されたものであっても当然には323条の適用を受けず、原則として321条以下の厳格な要件(面前状況や不可欠性等)が必要となることを確認する際に用いる。
事件番号: 昭和24新(つ)11 / 裁判年月日: 昭和25年3月27日 / 結論: 棄却
辯護人が「訴訟の途中に於て本件公訴の提起が合憲性を有するや否やに付重大なる疑問を生じた」からといつて公訴棄却の申立をしても裁判所が事案を審理するに當り、これに關する辯護人の申立を却下するに際し、公訴提起の憲法適否につき理由を示さなければならぬことは憲法上も訴訟法上も要請されてはないのである。
事件番号: 昭和27(し)34 / 裁判年月日: 昭和28年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の対象となる事由が存在するか否かは、原審において弁護人が異議を述べ、裁判所がこれに対し却下の決定をなしたという事実の有無に照らして判断されるべきであり、それらの事実が認められない場合には、特別抗告は不適法として棄却される。 第1 事案の概要:暴力行為等処罰に関する法律違反等に問われた被告人…
事件番号: 昭和44(し)23 / 裁判年月日: 昭和44年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所のした保釈請求却下決定に対しては、刑事訴訟法428条2項に基づき異議の申立てをすべきであり、直接最高裁判所に特別抗告を申し立てることは同法433条1項の要件を欠き不適法である。 第1 事案の概要:窃盗被告事件に関し、東京高等裁判所が保釈請求却下決定を下した。これに対し、申立人は異議の申立…
事件番号: 昭和39(し)68 / 裁判年月日: 昭和40年2月9日 / 結論: 棄却
簡易裁判所がした、裁判の執行の異議申立を却下する決定に対し、特別抗告の申立があつても、右決定に対しては刑訴法第五〇四条により即時抗告をすることができるのであるから、直接最高裁判所に対しなされた右特別抗告は、刑訴法第四三三条第一項の要件を具えない不適法なものである。