判旨
特別抗告の対象となる事由が存在するか否かは、原審において弁護人が異議を述べ、裁判所がこれに対し却下の決定をなしたという事実の有無に照らして判断されるべきであり、それらの事実が認められない場合には、特別抗告は不適法として棄却される。
問題の所在(論点)
原審において、憲法違反を理由とする訴訟指揮への異議申し立ておよびそれに対する裁判所の却下決定という事実が認められない場合に、当該事由を理由とする特別抗告が適法か(刑事訴訟法433条、434条)。
規範
特別抗告が適法に成立するためには、原審の訴訟手続において憲法違反等の事由について適法な異議申し立てがなされ、かつ、裁判所がそれに対して却下等の決定を行ったという客観的な訴訟事実が存在することを要する。
重要事実
暴力行為等処罰に関する法律違反等に問われた被告人の事件において、弁護人は、①公判廷で多数の傍聴人が騒然とした際に裁判官が傍聴人全員に退廷を命じたこと、及び②朝鮮人である被告人に十分な検討なく日本語を使用させようとしたことが違憲であると主張した。これに対し、弁護人は原審で異議を述べ、裁判所が決定をもってこれを却下したとして特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件において、弁護人は原審の訴訟指揮が違憲であると主張して特別抗告を申し立てている。しかし、訴訟記録等の資料に照らしても、原審において弁護人が当該事項について異議を述べた事実は認められず、また裁判所がそれに対して却下の決定を下した事実も認められない。したがって、特別抗告の前提となる手続的基礎を欠いているといえる。
結論
本件特別抗告は不適法であるため、棄却を免れない。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(し)31 / 裁判年月日: 昭和28年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判廷において傍聴人が大声を発し審理不能となった場合、裁判官が傍聴人全員に退廷を命じる訴訟指揮は適法であり、憲法違反にはあたらない。また、被告人の言語能力を考慮して日本語を使用させる判断も、適正な手続の一環として認められる。 第1 事案の概要:暴行傷害被告事件の原審公判廷において、傍聴人が一斉に大…
特別抗告(刑訴法433条)を申し立てる際、原審での異議申し立て等の有無という訴訟手続上の事実関係が申立の適法性を左右することを示す。実務上は、上訴理由の前提となる原審での手続的対応の有無を慎重に確認すべきである。
事件番号: 昭和28(し)38 / 裁判年月日: 昭和28年12月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所が抗告審としてなした決定に対しては、異議の申立てをなすことができない。不適法な異議申立てを却下した決定に対し、実質的な異議理由を主張して特別抗告を申し立てることは、決定の趣旨に副わず認められない。 第1 事案の概要:本件において、申立人は高等裁判所が抗告審として下した決定に対し、異議の申…
事件番号: 昭和34(し)31 / 裁判年月日: 昭和34年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の理由として憲法違反を主張する場合、申立書において原決定のいかなる部分がいかなる理由で憲法のどの条項の解釈を誤っているかを具体的に明示すべきであり、これがない場合は不適法となる。 第1 事案の概要:申立人(弁護人)が、原決定には憲法解釈の誤りがあるとの主張を掲げて特別抗告を申し立てた。しか…
事件番号: 昭和24新(つ)5 / 裁判年月日: 昭和24年9月7日 / 結論: 棄却
公判期日において刑訴法第一四六條により証言を拒んだ証人並びに供述をした証人の檢察官に対する各供述録取書及び被告人の司法警察職員に対する供述録取書を、檢察官が証拠として提出したのに対して、弁護人から証人の右供述録取書は同法第三二一條第一項第二号に定める要件を備えていないものであり、被告人の右供述録取書は同法第三二二條によ…
事件番号: 昭和27(し)33 / 裁判年月日: 昭和29年6月30日 / 結論: 棄却
本件特別抗告理由は、原決定の違憲を主張するけれども、その実質は申立人にかかる傷害被告事件の原審公判廷において、傍聴人が大声を発し審理不能となつたことを理由として傍聴人全員に退廷を命じた裁判官の起訴指揮は違法であると主張し、また、被告人が朝鮮人であるから充分の資料に基いて日本語を使用せしむべきか否かを判断すべきに拘らず、…