本件特別抗告理由は、原決定の違憲を主張するけれども、その実質は申立人にかかる傷害被告事件の原審公判廷において、傍聴人が大声を発し審理不能となつたことを理由として傍聴人全員に退廷を命じた裁判官の起訴指揮は違法であると主張し、また、被告人が朝鮮人であるから充分の資料に基いて日本語を使用せしむべきか否かを判断すべきに拘らず、これを怠り日本語を使用せしめようとしたことは法令に違反すると主張するのであつて、いずれも単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑訴四三三条所定の特別抗告理由に該当しない。
特別抗告理由にあたらない一事例 ―法延警察、訴訟指揮に関する裁判長の処分―
刑訴法294条,刑訴法433条,刑訴法175条,裁判所法71条,裁判所法74条
判旨
法廷で傍聴人が大声を発して審理不能となった際、裁判官が傍聴人全員に退廷を命じる訴訟指揮や、日本語の使用を促す判断は、憲法違反ではなく単なる訴訟法上の問題に留まる。
問題の所在(論点)
傍聴人の一斉退廷命令および被告人に対する日本語使用の強制が、憲法に違反する不当な訴訟指揮にあたるか。
規範
法廷の秩序維持のための訴訟指揮権(裁判所法71条等)の行使、および国語(日本語)を使用すべき原則(裁判所法74条)の運用に関する適否は、特段の事情がない限り、憲法違反の問題ではなく単なる訴訟法違反の問題として処理される。
重要事実
傷害被告事件の公判廷において、傍聴人が大声を発したことで審理不能な状況に陥ったため、裁判官が傍聴人全員に対して退廷を命じた。また、朝鮮人である被告人に対し、十分な資料に基づく判断を欠いたまま日本語を使用させようとした。
事件番号: 昭和27(し)31 / 裁判年月日: 昭和28年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判廷において傍聴人が大声を発し審理不能となった場合、裁判官が傍聴人全員に退廷を命じる訴訟指揮は適法であり、憲法違反にはあたらない。また、被告人の言語能力を考慮して日本語を使用させる判断も、適正な手続の一環として認められる。 第1 事案の概要:暴行傷害被告事件の原審公判廷において、傍聴人が一斉に大…
あてはめ
傍聴人が大声を発して審理を妨げた事実がある以上、全員退廷の措置は法廷秩序維持のための訴訟指揮の範囲内である。また、日本語使用の判断についても、言語能力に関する判断の是非は評価の適否に過ぎない。これらは憲法違反を実質的に基礎付けるものではなく、刑事訴訟法433条の特別抗告理由たる憲法違反には該当しない。
結論
本件訴訟指揮は違憲とはいえず、特別抗告理由に該当しないため、抗告を棄却する。
実務上の射程
法廷秩序維持のための傍聴人退廷命令の適法性が争われる場面や、裁判所法上の日本語原則の運用が問われる場面で、これらが広範な裁量を有する訴訟指揮の問題であることを示すために活用できる。
事件番号: 昭和27(し)34 / 裁判年月日: 昭和28年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の対象となる事由が存在するか否かは、原審において弁護人が異議を述べ、裁判所がこれに対し却下の決定をなしたという事実の有無に照らして判断されるべきであり、それらの事実が認められない場合には、特別抗告は不適法として棄却される。 第1 事案の概要:暴力行為等処罰に関する法律違反等に問われた被告人…
事件番号: 昭和27(し)41 / 裁判年月日: 昭和28年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が決定を下すに当たり、憲法に違反する憲法解釈上の誤りや、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反が認められない場合には、特別抗告を棄却すべきである。本件においては、憲法違反を主張する抗告人の主張に理由がないとして、特別抗告を棄却した。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して特別抗告を申し…
事件番号: 昭和51(し)22 / 裁判年月日: 昭和51年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟手続に関し判決前にした決定に対する異議申立てを棄却する旨の決定は、刑事訴訟法433条にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には当たらない。したがって、かかる決定に対して同条に基づく特別抗告を申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:弁護人は、公判期日において、検察官…
事件番号: 昭和34(し)39 / 裁判年月日: 昭和34年8月27日 / 結論: 棄却
刑訴第三九三条第二項が、控訴審における第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状に関する事実取調の必要の有無を裁判所の裁量に委ねたことは、憲法に違反しない。