刑訴第三九三条第二項が、控訴審における第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状に関する事実取調の必要の有無を裁判所の裁量に委ねたことは、憲法に違反しない。
刑訴法第三九三条第二項の合憲性。
刑訴法393条2項,憲法98条1項
判旨
憲法37条2項は不必要な証人まで尋問することを義務付けるものではなく、控訴審における事実取調べの要否は原則として裁判所の裁量に委ねられる。
問題の所在(論点)
控訴審において被告人が申請した証人尋問等の事実取調べを裁判所が却下することが、憲法37条2項の証人尋問権に反しないか、および刑事訴訟法393条2項の規定が憲法に適合するか。
規範
憲法37条2項の証人喚問権は、裁判所に対し、被告人側が申請した証人を不必要と思われるものまでことごとく尋問することを義務付ける趣旨ではない。また、控訴審における事実の取調べは、刑事訴訟法393条1項但書の場合を除き、裁判所の広範な裁量に委ねられる。
重要事実
被告人Aほか1名が、控訴審において事実取調べ(情状に関する証人尋問等と推認される)を請求したが、控訴審裁判所(原決定)はこれを却下した。これに対し、被告人側は、裁判所が申請された証人を尋問しないことは憲法37条2項および刑事訴訟法393条2項に違反するとして特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和29(し)64 / 裁判年月日: 昭和29年12月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、被告人側が申請した証人をすべて喚問することを義務付けるものではなく、証拠調の必要性の判断は裁判所の合理的な裁量に委ねられる。当該証拠が唯一の証拠でない場合など、不必要と認められる証人の尋問を却下することは同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、第一審公判において、…
あてはめ
最高裁は、憲法37条2項が不必要な証人の尋問まで強制するものではないとの既往の判例を引用した。本件において原決定が事実取調べを不要と判断したことは、この判例の趣旨に照らし正当である。また、控訴審での情状に関する事実取調べの要否を裁判所の裁量に委ねた刑事訴訟法393条2項も、憲法の趣旨に反するものではないと判断される。
結論
控訴審における証人採用の要否は裁判所の裁量事項であり、不必要と判断された証人を尋問しなかった原決定に憲法違反はなく、特別抗告は棄却される。
実務上の射程
控訴審の事後審的性格を背景に、証拠採用の裁量を広く認める実務の根拠となる判例である。答案上は、控訴審における証拠調べ請求却下の違法性を論じる際、原則として裁判所の裁量に属することを指摘するために活用できる。ただし、393条1項但書の義務的取調べ事由に該当しないことが前提となる。
事件番号: 昭和37(し)19 / 裁判年月日: 昭和37年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟における証人申請の採否は裁判所の自由裁量に属するが、その却下が主観的専制や独断に陥り、健全な合理性や経験則に反する場合には憲法37条2項に違反する。本件では、申請された証拠が間接証拠に留まり、直接証拠等により既に十分な心証形成が可能であったことから、却下は違憲ではない。 第1 事案の概要:…
事件番号: 昭和47(し)78 / 裁判年月日: 昭和47年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が不公平な裁判をするおそれがあるとは認められない場合、刑事訴訟法24条1項に基づく忌避の申立ては却下されるべきである。本決定は、具体的な記録に照らし、憲法37条1項等の違反がないことを確認したものである。 第1 事案の概要:申立人は、背任被告事件の担当裁判長である金子裁判長に対し、不公平な裁…
事件番号: 昭和24(つ)93 / 裁判年月日: 昭和25年3月6日 / 結論: 棄却
所論は裁判長の被告人に對する個々の尋問に對する被告人の供述が他の共同被告人に不利益であつたにもかかわらず、裁判長がその都度當該他の共同被告人に反對訊問するように注意しなかつた措置又はその共同被告人又は辯護人に對しその都度現實に反對尋問する機會を與えなかつた措置は被告人の證人に對する基本的權利を規定した憲法第三七條第二項…
事件番号: 昭和27(し)41 / 裁判年月日: 昭和28年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が決定を下すに当たり、憲法に違反する憲法解釈上の誤りや、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反が認められない場合には、特別抗告を棄却すべきである。本件においては、憲法違反を主張する抗告人の主張に理由がないとして、特別抗告を棄却した。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して特別抗告を申し…