簡易裁判所がした、裁判の執行の異議申立を却下する決定に対し、特別抗告の申立があつても、右決定に対しては刑訴法第五〇四条により即時抗告をすることができるのであるから、直接最高裁判所に対しなされた右特別抗告は、刑訴法第四三三条第一項の要件を具えない不適法なものである。
簡易裁判所のした裁判の執行の異議申立却下決定に対する特別抗告申立の適否。
刑訴法502条,刑訴法504条,刑訴法433条1項
判旨
裁判の執行に関する異議申立てを却下する決定に対しては、刑事訴訟法504条に基づき即時抗告が可能である。したがって、これに対して直接最高裁判所へ特別抗告を申し立てることは、同法433条1項の要件を欠き不適法である。
問題の所在(論点)
裁判の執行に関する異議申立てを却下する決定に対し、即時抗告(刑事訴訟法504条)を経ずに、最高裁判所へ直接特別抗告(同法433条1項)を申し立てることの可否。
規範
裁判の執行に関する異議申立て(刑事訴訟法502条)に対する裁判所の決定については、同法504条により即時抗告をすることができる旨が規定されている。また、特別抗告(同法433条1項)は、法に不服申立てをすることができる規定がない決定等に対してのみ認められる例外的な救済手段である。
重要事実
申立人は、道路交通法違反被告事件に関する裁判の執行につき、刑事訴訟法502条に基づく異議の申立てを行った。これに対し、大口簡易裁判所は、昭和39年10月12日に当該異議申立てを却下する決定を下した。申立人は、この簡易裁判所の決定に不服があり、即時抗告の手続きを経ることなく、最高裁判所に対して直接、特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和36(し)36 / 裁判年月日: 昭和36年8月28日 / 結論: 棄却
一 検察官が裁判の執行指揮その他の処分をする以前になされた裁判の執行に関する異議の申立は不適法である。 二 裁判の執行に関する異議において、裁判の内容そのものの不当を主張し、あるいは現行刑罰制度ないし行刑制度を非難することは許されない。
あてはめ
刑事訴訟法504条は、裁判の執行に関する異議申立ての決定に対し、即時抗告をすることができると明文で規定している。本件において、申立人が不服を申し立てているのは簡易裁判所による異議申立て却下決定であり、同条の適用を受けるものである。しかるに、刑事訴訟法433条1項に基づく特別抗告は、他に不服申立ての手段がない場合に限定されるところ、本件決定には即時抗告という不服申立て手段が確保されている。したがって、本件特別抗告は同条の要件を具備しない不適法なものといえる。
結論
本件特別抗告は不適法であるため、刑事訴訟法434条、426条1項前段により棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法上の不服申立ての構造を再確認する基本的な判例である。答案上は、特別抗告の要件である「不服申立てをすることができない」の充足性を検討する際、個別規定(504条等)による即時抗告の可否をまず確認すべきことを示唆している。
事件番号: 昭和29(し)5 / 裁判年月日: 昭和29年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下において高等裁判所がなした決定に対しては、訴訟法上特に最高裁判所の権限に属すると定められた抗告のみが許され、同法564条後段に基づく最高裁判所への即時抗告は認められない。 第1 事案の概要:本件は、旧刑事訴訟法564条前段に基づき高等裁判所がなした決定に対し、抗告人が同条後段を根拠と…
事件番号: 昭和34(ク)142 / 裁判年月日: 昭和34年5月18日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】行政代執行の執行停止申請を却下した決定に対しては、民事訴訟法の規定に基づき通常抗告を行うことができるため、最高裁判所に対する特別抗告を提起することはできない。 第1 事案の概要:抗告人らは、長崎地方裁判所が行政代執行の執行停止申立事件について下した却下決定に対し、最高裁判所へ特別抗告状を提出した。…
事件番号: 昭和23(ク)40 / 裁判年月日: 昭和24年2月8日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法が特に定めた場合を除き、憲法判断の不当を理由とする場合に限って許容される。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。抗告申立書の内容からは、原決定における憲法判断の不当を理由とする特別抗告の要件を満たしていることが認められず、他に最高裁判所…
事件番号: 昭和38(し)46 / 裁判年月日: 昭和38年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所が抗告審として下した決定に対しては、その裁判所に異議の申立てをすることはできない。これは刑事訴訟法上の不服申立ての構造に照らし、重ねて同一裁判所による判断を求めることが認められないことを示したものである。 第1 事案の概要:申立人は、高等裁判所が抗告審として下した決定(昭和38年(く)第…