一 銀行甲が、輸入業者乙のする商品の輸入について信用状を発行し、約束手形の振出しを受ける方法により乙に輸入代金決済資金相当額を貸し付けるとともに、乙から右約束手形金債権の担保として輸入商品に譲渡担保権の設定を受けた上、乙に右商品の貸渡しを行ってその処分権限を与えたところ、乙が、右商品を第三者に転売した後、破産の申立てをしたことにより右約束手形金債務につき期限の利益を失ったという事実関係の下においては、甲は、右商品に対する譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として、転売された右商品の売買代金債権を差し押さえることができる。 二 動産譲渡担保権に基づく物上代位権の行使は、右譲渡担保権の設定者が破産宣告を受けた後においても妨げられない。
一 動産譲渡担保権に基づく物上代位権の行使が認められた事例 二 動産譲渡担保権の設定者が破産宣告を受けた後における右譲渡担保権に基づく物上代位権行使の可否
民法304条,民法369条(譲渡担保),破産法92条
判旨
信用状発行銀行は、輸入商品に設定された譲渡担保権に基づき、商品の転売代金債権に対して物上代位権を行使して差し押さえることができ、これは債務者の破産宣告後であっても妨げられない。
問題の所在(論点)
輸入商品の譲渡担保権者が、目的物の転売代金債権に対して物上代位権を行使することの可否、および債務者の破産宣告後における当該権利行使の可否が問題となる。
規範
動産譲渡担保権者は、目的物の売却により債務者が取得した代金債権について、民法304条1項の類推適用により物上代位権を行使することができる。また、この物上代位権の行使(差し押さえ)は、担保権の効力として認められるものであるから、債務者が破産宣告を受けた後であっても、別除権の行使として当然に認められる。
重要事実
輸入業者Gは、銀行(相手方)と信用状取引約定を締結し、輸入商品に譲渡担保権を設定した。銀行はGに輸入代金相当額を貸し付け、Gに対して商品の処分権限を与えて貸し出した。Gは商品を第三者に転売したが、その後破産宣告を受けた。銀行は、Gが取得した転売代金債権に対し、譲渡担保権に基づく物上代位として差押えを申し立てたが、破産管財人(抗告人)がこれを不服として争った。
事件番号: 平成11(許)23 / 裁判年月日: 平成12年4月14日 / 結論: 破棄差戻
抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。
あてはめ
本件では、銀行は輸入代金決済資金の貸付に伴い、適法に輸入商品に譲渡担保権の設定を受けている。Gは銀行から処分権限を与えられて商品を転売しており、その売却代金債権は目的物の価値変形物といえる。したがって、銀行は当該債権に対し物上代位をなしうる。また、破産法上の別除権は破産手続によらずに行使できるところ、譲渡担保権に基づく物上代位も別除権の行使の一態様であるから、破産宣告後であっても差押えは有効になしうる。
結論
信用状発行銀行は、譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として、転売代金債権を差し押さえることができる。このことは、債務者が破産宣告を受けた後であっても異ならない。
実務上の射程
譲渡担保における物上代位の可否を肯定した重要判例である。答案上は、まず譲渡担保の法的性質を(構成を問わず)担保権として把握した上で、民法304条の類推適用を認める文脈で使用する。また、破産手続との関係では、別除権(破産法2条9項、65条)の行使として構成する際の根拠となる。
事件番号: 平成10(許)4 / 裁判年月日: 平成10年12月18日 / 結論: 棄却
一 請負工事に用いられた動産の売主は、原則として、請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができないが、請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を右動産の転売による代金債権と同視するに足り…
事件番号: 平成22(許)14 / 裁判年月日: 平成22年12月2日 / 結論: 棄却
構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の効力は,譲渡担保の目的である集合動産を構成するに至った動産が滅失した場合にその損害をてん補するために譲渡担保権設定者に対して支払われる損害保険金に係る請求権に及ぶ。
事件番号: 平成13(許)30 / 裁判年月日: 平成14年6月13日 / 結論: 棄却
抵当権に基づく物上代位権の行使としてされた債権差押命令に対する執行抗告においては,被差押債権の不存在又は消滅を理由とすることはできない。
事件番号: 平成28(許)26 / 裁判年月日: 平成29年5月10日 / 結論: 棄却
銀行であるXが,輸入業者であるYの輸入する商品に関して信用状を発行し,これによってYが負担する償還債務等に係る債権の担保として当該商品につき譲渡担保権の設定を受けた場合において,次の(1)及び(2)の事情の下では,Yが当該商品を直接占有したことがなくても,Xは,Yから占有改定の方法により当該商品の引渡しを受けたものとい…