銀行であるXが,輸入業者であるYの輸入する商品に関して信用状を発行し,これによってYが負担する償還債務等に係る債権の担保として当該商品につき譲渡担保権の設定を受けた場合において,次の(1)及び(2)の事情の下では,Yが当該商品を直接占有したことがなくても,Xは,Yから占有改定の方法により当該商品の引渡しを受けたものといえる。 (1) XとYとの間においては,輸入業者から委託を受けた海運貨物取扱業者によって輸入商品の受領等が行われ,輸入業者が目的物を直接占有することなく転売を行うことが一般的であったという輸入取引の実情の下,上記譲渡担保権の設定に当たり,XがYに対し輸入商品の貸渡しを行ってその受領等の権限を与える旨の合意がされていた。 (2) 海運貨物取扱業者は,金融機関が譲渡担保権者として当該商品の引渡しを占有改定の方法により受けることとされていることを当然の前提として,Yから当該商品の受領等の委託を受け,当該商品を受領するなどした。
銀行が,輸入業者の輸入する商品に関して信用状を発行し,当該商品につき譲渡担保権の設定を受けた場合において,上記輸入業者が当該商品を直接占有したことがなくても,上記輸入業者から占有改定の方法によりその引渡しを受けたものとされた事例
民法183条,民法304条,民法369条(譲渡担保),民事再生法45条,民事再生法53条1項,民事再生法53条2項
判旨
輸入取引において、輸入業者が目的物を直接占有せず海貨業者に受領等を委託する場合であっても、信用状発行銀行との譲渡担保設定合意及び輸入実情に基づき、占有改定による引渡しを認めることができる。これにより、銀行は譲渡担保権の対抗要件を具備し、再生手続開始後も別除権として物上代位権を行使し得る。
問題の所在(論点)
譲渡担保の設定者(輸入業者)が目的物を直接占有したことがない場合において、占有改定による引渡しが認められ、対抗要件を具備したといえるか(民法178条、183条)。
規範
譲渡担保権者が占有改定(民法183条)による引渡しを受けたといえるためには、設定者が目的物を直接占有している必要はなく、設定者の代理人(海貨業者等)が直接占有している場合であっても、取引の実情、当事者間の合意内容、及び受領の前提状況に照らし、設定者を介した占有移転の合意が認められれば足りる。
事件番号: 平成10(許)2 / 裁判年月日: 平成11年5月17日 / 結論: 棄却
一 銀行甲が、輸入業者乙のする商品の輸入について信用状を発行し、約束手形の振出しを受ける方法により乙に輸入代金決済資金相当額を貸し付けるとともに、乙から右約束手形金債権の担保として輸入商品に譲渡担保権の設定を受けた上、乙に右商品の貸渡しを行ってその処分権限を与えたところ、乙が、右商品を第三者に転売した後、破産の申立てを…
重要事実
輸入業者Aは、銀行Bとの間で、信用状発行対象の商品につきBを譲渡担保権者とし、Aに処分権限を与える「貸渡し」を含む基本約定を締結した。Aは海貨業者Cに本件商品の受領・通関等を委託し、Cは中国から到着した商品を受領して転売先へ運送した。A自身は一度も商品を直接占有しなかったが、Cへの委託はBが占有改定により引渡しを受けることを前提としていた。その後Aが再生手続を開始したため、Bは転売代金債権への物上代位権を行使して差押えを申し立てた。
あてはめ
まず、約定においてBが譲渡担保権の設定を受けつつAに商品の処分権限を与える合意がなされている。次に、輸入取引の実情として、輸入業者が直接占有せず海貨業者に委託することは一般的である。さらに、海貨業者Cによる受領等の委託は、Bが占有改定により引渡しを受けることを当然の前提としていたといえる。これらの事実によれば、Cの占有を通じてAが間接占有を取得したのと同時に、Bとの合意に基づきBが占有改定による引渡しを受けたものと評価するのが相当である。
結論
銀行Bは占有改定による引渡しを受けたものと解され、譲渡担保権の対抗要件を具備している。したがって、Bは別除権として物上代位権を行使し、売買代金債権を差し押さえることができる。
実務上の射程
集合動産譲渡担保等において、債務者が倉庫業者等に寄託しており直接占有していない場面でも、本判決の論理を用いれば占有改定による対抗要件具備を肯定できる。実務上、輸入金融における銀行の担保権確保を強く認めた射程の広い判例である。
事件番号: 平成18(許)13 / 裁判年月日: 平成18年9月11日 / 結論: 棄却
強制執行を受けた債務者が,その請求債権につき強制執行を行う権利の放棄又は不執行の合意があったことを主張して裁判所に強制執行の排除を求める場合には,執行抗告又は執行異議の方法によることはできず,請求異議の訴えによるべきである。
事件番号: 平成11(許)23 / 裁判年月日: 平成12年4月14日 / 結論: 破棄差戻
抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。
事件番号: 平成28(許)46 / 裁判年月日: 平成29年10月10日 / 結論: 破棄自判
債権差押命令の申立書に請求債権中の遅延損害金につき申立日までの確定金額を記載させる執行裁判所の取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者が当該債権差押命令に基づく差押債権の取立てとして第三債務者から金員の支払を受けた場合,申立日の翌日以降の遅延損害金も上記金員の充当の対象となる。
事件番号: 平成18(許)21 / 裁判年月日: 平成18年10月27日 / 結論: 破棄自判
登録自動車を目的とする民法上の留置権による競売においては,その被担保債権が当該自動車に関して生じたことが主要事実として認定されている確定判決であれば,債権者による当該自動車の占有の事実が認定されていなくとも,民事執行法181条1項1号所定の「担保権の存在を証する確定判決」に当たる。