登録自動車を目的とする民法上の留置権による競売においては,その被担保債権が当該自動車に関して生じたことが主要事実として認定されている確定判決であれば,債権者による当該自動車の占有の事実が認定されていなくとも,民事執行法181条1項1号所定の「担保権の存在を証する確定判決」に当たる。
登録自動車を目的とする民法上の留置権による競売において民事執行法181条1項1号所定の「担保権の存在を証する確定判決」に該当するための要件
民事執行法181条1項1号,民事執行法195条,民事執行規則176条2項,民法295条1項
判旨
不動産競売事件の債務者が、執行官が命じた執行補助者としての占有を継続している状態は、民事執行法188条・181条1項所定の「担保権者が目的物を占有していること」には該当しない。
問題の所在(論点)
民事執行法188条・181条1項4号にいう「担保権者が目的物を占有していること」という要件は、執行手続上の便宜として債務者が執行官の命令により占有を継続している場合にまで認められるか。
規範
民事執行法188条において準用する同法181条1項4号の規定に基づき、一般の先取特権を有する者が不動産競売を申し立てるには、法律上の要件として「担保権者が目的物を占有していること」が必要である。ここでいう「占有」とは、担保権者が目的物を事実上支配し、または法律上の義務に基づいて占有を継続している状態を指すべきであり、民事執行手続における執行官の職務補助としての占有維持は、これに当たらないと解する。
重要事実
本件において、債権者(抗告人)は、建物の賃借人(債務者)に対する給料債権等に基づき、一般の先取特権(動産保存・雇傭関係等)を主張して不動産競売を申し立てた。当該建物(不動産)については、先行する別の競売手続において、執行官が債務者に対し、建物の保管・占有を命じる「保管命令」を発し、債務者は執行補助者として当該建物を占有していた。債権者は、この債務者の占有を、先取特権の行使に必要な「占有」に当たると主張して競売を申し立てた。
事件番号: 平成11(許)39 / 裁判年月日: 平成12年3月16日 / 結論: 棄却
滞納処分による差押えがされた後強制競売等の開始決定による差押えがされるまでの間に賃借権が設定された不動産が強制競売手続等により売却された場合に、執行裁判所は、右賃借権に基づく不動産の占有者に対し、引渡命令を発することができる。
あてはめ
民事執行法181条1項4号が占有を要件とする趣旨は、担保権の存在を占有という外形的客観的事実によって裏付ける点にある。本件における債務者の占有は、執行官による民事執行法上の職務遂行を補助するためのものに過ぎず、債務者が自らの意思で担保権のために占有しているわけではない。また、執行官の監督下にある占有は、債権者(担保権者)による目的物の支配とは評価できない。したがって、本件の占有状態は、同号所定の「担保権者が目的物を占有していること」に該当すると評価することはできない。
結論
本件不動産競売の申立ては、民事執行法181条1項4号所定の要件を満たさない不適法なものであるから、却下されるべきである。
実務上の射程
一般の先取特権に基づく不動産競売申立ての適法性を判断する際の基礎となる。特に、債務者が執行補助者として占有している場合の「占有」概念の限界を示した。
事件番号: 平成17(許)22 / 裁判年月日: 平成17年11月11日 / 結論: 破棄自判
根抵当権者が競売の申立ての際に提出した登記簿謄本とみなされる登記事項証明書に,当該根抵当権の登記のほかに譲渡担保を原因とする同人への所有権移転登記が記載されていても,同登記事項証明書は,民事執行法(平成16年法律第124号による改正前のもの)181条1項3号の文書に当たる。
事件番号: 平成11(許)23 / 裁判年月日: 平成12年4月14日 / 結論: 破棄差戻
抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。
事件番号: 平成23(ク)166 / 裁判年月日: 平成23年10月11日 / 結論: 棄却
建物の区分所有等に関する法律59条1項に基づく訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合に,その譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない。 (補足意見がある。)
事件番号: 平成11(許)25 / 裁判年月日: 平成11年10月26日 / 結論: 棄却
競売の対象とされた土地上に競売の対象とはされていない建物等が存在する場合であっても、右土地の引渡命令を発付することは許される。