根抵当権者が競売の申立ての際に提出した登記簿謄本とみなされる登記事項証明書に,当該根抵当権の登記のほかに譲渡担保を原因とする同人への所有権移転登記が記載されていても,同登記事項証明書は,民事執行法(平成16年法律第124号による改正前のもの)181条1項3号の文書に当たる。
根抵当権者が競売の申立ての際に提出した当該根抵当権の登記のほかに譲渡担保を原因とする同人への所有権移転登記が記載されている登記簿謄本とみなされる登記事項証明書と民事執行法(平成16年法律第124号による改正前のもの)181条1項3号の文書
民事執行法(平成16年法律第124号による改正前のもの)181条1項3号,民法179条1項,民法369条(譲渡担保),民法398条の2,旧不動産登記法(平成16年法律第123号による改正前のもの)151条ノ4
判旨
不動産担保権実行の申立てにおいて、法定文書が提出されていれば、登記簿上の記載から混同による消滅の可能性が疑われる場合であっても、執行裁判所は開始決定をすべきである。担保権の不存在や消滅等の実体上の事由は、債務者等の側からの執行抗告等の手続により審理判断されるべき事柄である。
問題の所在(論点)
不動産担保権実行の申立てにおいて提出された登記簿謄本等に、担保権者への所有権移転登記の記載がある場合、執行裁判所は混同消滅の可能性を理由に申立てを却下できるか。民事執行法181条1項所定の「法定文書」の意義と審査の範囲が問題となる。
規範
民事執行法181条1項が法定文書の提出を要求しているのは、執行裁判所が形式的審査により速やかに手続を開始できるようにするためである。したがって、法定文書(同項3号の登記簿謄本等)の提出がある限り、執行裁判所は担保権の存否について実体判断をすることなく開始決定をすべきであり、消滅等の実体不備は同法182条に基づく執行抗告等の手続で債務者側が主張・立証すべきである。
重要事実
事件番号: 平成18(許)21 / 裁判年月日: 平成18年10月27日 / 結論: 破棄自判
登録自動車を目的とする民法上の留置権による競売においては,その被担保債権が当該自動車に関して生じたことが主要事実として認定されている確定判決であれば,債権者による当該自動車の占有の事実が認定されていなくとも,民事執行法181条1項1号所定の「担保権の存在を証する確定判決」に当たる。
債権者(抗告人)は、本件不動産について根抵当権と譲渡担保権の設定を受けていた。その後、根抵当権の実行としての競売を申し立て、民事執行法181条1項3号所定の法定文書として登記事項証明書を提出した。当該証明書には抗告人を根抵当権者とする登記に加え、譲渡担保を原因とする所有権移転登記の記載も含まれていた。下級審は、同一人への所有権移転により根抵当権が混同消滅した蓋然性が高いとして、法定文書の不備を理由に申立てを却下した。
あてはめ
本件で提出された登記事項証明書には抗告人を根抵当権者とする登記が記載されており、形式的には181条1項3号の要件を満たす。また、同証明書に「譲渡担保の売買」を原因とする所有権移転登記があるとしても、譲渡担保権の取得のみでは所有権が確定的に移転したとはいえず、直ちに混同により根抵当権が消滅したとは断定できない。担保権消滅の実体判断は執行抗告等の手続に委ねるべきであり、開始段階で蓋然性の有無を審理して申立てを却下することは、形式的審査を旨とする担保執行手続の構造に反する。
結論
本件登記事項証明書は同号所定の法定文書に当たり、これに基づき競売手続を開始すべきである。混同消滅の有無は執行抗告等の手続で審理されるべき実体的事由にすぎない。
実務上の射程
担保権実行の開始手続において、執行裁判所には実体的な消滅事由を審査する権限も義務もないことを明示した射程の長い判例である。答案上は、担保権実行の要件充足性を検討する際、登記簿上の外観から実体上の疑問が生じる場面であっても「形式的審査権限」の限界を論証する根拠として用いる。
事件番号: 昭和57(ク)138 / 裁判年月日: 昭和57年7月20日 / 結論: 却下
執行抗告の抗告状が原裁判所以外の裁判所に提出された場合には、これを受理した裁判所は、民訴法三〇条を類推適用して事件を原裁判所に移送すべきではなく、執行抗告を不適法として却下すべきである。
事件番号: 昭和57(ク)100 / 裁判年月日: 昭和57年7月19日 / 結論: 却下
執行抗告の抗告状が原裁判所以外の裁判所に提出された場合には、これを受理した裁判所は、民訴法三〇条を類推適用して事件を原裁判所に移送すべきではなく、執行抗告を不適法として却下すべきである。
事件番号: 平成11(許)39 / 裁判年月日: 平成12年3月16日 / 結論: 棄却
滞納処分による差押えがされた後強制競売等の開始決定による差押えがされるまでの間に賃借権が設定された不動産が強制競売手続等により売却された場合に、執行裁判所は、右賃借権に基づく不動産の占有者に対し、引渡命令を発することができる。
事件番号: 平成12(許)52 / 裁判年月日: 平成13年4月13日 / 結論: 棄却
抵当権に基づく不動産競売においては,抵当権の不存在又は消滅を売却許可決定に対する執行抗告の理由とすることはできない。