執行抗告の抗告状が原裁判所以外の裁判所に提出された場合には、これを受理した裁判所は、民訴法三〇条を類推適用して事件を原裁判所に移送すべきではなく、執行抗告を不適法として却下すべきである。
執行抗告の抗告状が原裁判所以外の裁判所に提出された場合と裁判所のとるべき措置
民事執行法10条2項,民訴法30条
判旨
執行抗告却下決定に対し、原裁判所ではなく最高裁判所に直接抗告状を提出してなされた不適法な執行抗告については、民事訴訟法30条を類推適用して移送することなく、却下すべきである。
問題の所在(論点)
執行抗告の申立てにおいて、提出先を誤って抗告裁判所に直接書面を提出した場合に、裁判所は民事訴訟法の移送規定を類推適用して原裁判所に移送すべきか、あるいは不適法として却下すべきか。
規範
民事執行法10条2項の規定に違反して、抗告状を原裁判所ではなく抗告裁判所に直接提出した執行抗告は不適法である。この場合、民事訴訟法30条(移送)の規定を類推適用して事件を適法な裁判所に移送することはできず、受理した裁判所において直ちに不適法な申立てとして却下すべきである。
重要事実
抗告人は、不動産売却許可決定に対する執行抗告を却下する決定を受けた。これに対し、抗告人は本来「更なる執行抗告(民執法10条8項)」を原裁判所に申し立てるべきところ、最高裁判所に対し「特別抗告」と題する書面を直接提出した。
事件番号: 昭和57(ク)100 / 裁判年月日: 昭和57年7月19日 / 結論: 却下
執行抗告の抗告状が原裁判所以外の裁判所に提出された場合には、これを受理した裁判所は、民訴法三〇条を類推適用して事件を原裁判所に移送すべきではなく、執行抗告を不適法として却下すべきである。
あてはめ
本件申立ては、形式上は特別抗告とされているが、実質的には民執法10条8項の執行抗告と解される。しかし、執行抗告の申立ては同法10条2項により「原裁判所」に提出しなければならない。本件では最高裁判所に直接提出されており、専属管轄の誤り等とは異なり、申立ての手続自体が法定の方式に違反している。したがって、移送によって救済を図る余地はなく、不適法な申立てと評価せざるを得ない。
結論
本件抗告は不適法であり、却下される。
実務上の射程
民事執行法上の抗告手続における提出先(原裁判所主義)の厳格性を認めたものである。民訴法の移送規定が不適法な上訴の救済に当然には適用されないことを示す例として、手続法上の論点で活用できる。
事件番号: 昭和29(ク)101 / 裁判年月日: 昭和29年8月27日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所への抗告が許されるのは、不服を申し立てることができない決定または命令に対してのみである。抵当権実行による競売申立ての却下決定は即時抗告が可能であるため、直接最高裁判所に抗告することは不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、抵当権実行のために不動産競売の申立てを行ったが、裁判所によって…
事件番号: 昭和26(ク)137 / 裁判年月日: 昭和26年9月3日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、法律により特に許された場合に限られ、現行法上は憲法違反を理由とする特別抗告(旧民訴法419条の2、現行336条)のみがこれに該当する。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案であるが、その抗告理由は原決定における法律・…
事件番号: 昭和26(ク)247 / 裁判年月日: 昭和26年12月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許容された場合に限られ、民事事件においては憲法違反を理由とする特別抗告(旧民訴法419条の2)のみが認められる。 第1 事案の概要:抗告人が、下級裁判所の決定に対して最高裁判所へ抗告を申し立てた事案。抗告人が主張した抗告理由は、原決定における…
事件番号: 昭和26(ク)177 / 裁判年月日: 昭和26年9月29日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民事訴訟法(旧法)等の規定により特に許された場合に限り、かつ原決定における憲法判断の不当を理由とする場合に限って適法となる。単なる法律解釈の不当を主張するものは、実質的な違憲の主張に当たらず不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、原審が行った競売法および民事訴訟法に関…