抵当権に基づく不動産競売においては,抵当権の不存在又は消滅を売却許可決定に対する執行抗告の理由とすることはできない。
抵当権に基づく不動産競売において抵当権の不存在又は消滅を売却許可決定に対する執行抗告の理由とすることの可否
民事執行法71条1号,民事執行法74条1項,民事執行法74条2項,民事執行法182条,民事執行法188条
判旨
不動産競売において、抵当権の不存在または消滅は売却許可決定に対する執行抗告の理由とすることはできない。
問題の所在(論点)
抵当権の不存在または消滅が、売却許可決定に対する執行抗告の理由(民事執行法188条、71条1号)となるか。
規範
民事執行法188条により準用される同法71条1号の「不動産競売の手続の開始又は続行をすべきでないこと」には、抵当権の不存在または消滅といった実体上の瑕疵は含まれない。担保権の不存在・消滅を主張するには、同法181条に基づく開始決定に対する執行異議(同法182条)によるべきである。
重要事実
不動産競売手続において、債務者(抗告人)が抵当権の不存在または消滅を理由として、売却許可決定に対し執行抗告を申し立てた事案。
あてはめ
事件番号: 平成15(許)23 / 裁判年月日: 平成15年11月11日 / 結論: 棄却
1 不動産競売の入札の手続において,入札書の入札価額欄の記載に不備があり,同欄の記載内容からみて,入札価額が一義的に明確であると認められないときは,その入札書による入札は無効である。 2 不動産競売の入札の手続において,位ごとに区切られた入札価額欄の枠内に各位の数字を記載するものとされた入札書が用いられ,その千万から十…
執行裁判所は、抵当権の登記がある登記簿謄本等が提出されれば、実体的な存否を判断せず手続を開始する形式的審査権限しか有していない。また、制度上、実体上の瑕疵を争う手段としては開始決定に対する執行異議が別途用意されている。したがって、手続の最終段階である売却許可決定の段階において、実体上の事由を「手続の開始・続行をすべきでないこと」として主張することは、競売手続の迅速・安定を阻害するものであり認められない。
結論
抵当権の不存在または消滅は、売却許可決定に対する執行抗告の理由に当たらないため、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
担保権実行手続(競売)において、実体上の瑕疵と手続上の瑕疵を峻別する基準を示す重要な判例である。答案上は、売却許可決定に対する不服申立ての事由(71条各号)に実体上の事由が含まれないことを説明する際の根拠として用いる。民事執行法上の救済手段の体系(執行異議、執行抗告、請求異議の訴え等)の整理において不可欠な知識である。
事件番号: 平成13(許)30 / 裁判年月日: 平成14年6月13日 / 結論: 棄却
抵当権に基づく物上代位権の行使としてされた債権差押命令に対する執行抗告においては,被差押債権の不存在又は消滅を理由とすることはできない。
事件番号: 令和2(ク)275 / 裁判年月日: 令和2年9月2日 / 結論: 破棄自判
担保不動産競売の手続において,最高価買受申出人が受けた売却許可決定に対し,他の買受申出人は,特段の事情のない限り,民事執行法188条において準用する同法71条4号イに掲げる売却不許可事由を主張して執行抗告をすることはできない。
事件番号: 平成26(許)15 / 裁判年月日: 平成26年11月4日 / 結論: 棄却
不動産強制競売事件の期間入札において,最高の価額で買受けの申出をしたAの入札が無効であるのに,執行官がこれを誤って有効と判断しAを最高価買受申出人と定めたため,執行裁判所がAに対する売却不許可決定をし,これが確定した場合に,①上記期間入札において入札をしたのはAとBのみであった,②Bは,上記売却不許可決定の確定後,なお…
事件番号: 平成22(許)2 / 裁判年月日: 平成22年8月25日 / 結論: 棄却
1 担保不動産競売事件の期間入札において,執行官が,最高の価額で買受けの申出をした入札人の入札を誤って無効と判断し,他の者を最高価買受申出人と定めて開札期日を終了した場合には,執行裁判所は,誤って最高価買受申出人と定められた者に対する売却を不許可とした上で,当初の入札までの手続を前提に改めて開札期日及び売却決定期日を定…