1 不動産競売の入札の手続において,入札書の入札価額欄の記載に不備があり,同欄の記載内容からみて,入札価額が一義的に明確であると認められないときは,その入札書による入札は無効である。 2 不動産競売の入札の手続において,位ごとに区切られた入札価額欄の枠内に各位の数字を記載するものとされた入札書が用いられ,その千万から十までの各位にはそれぞれ数字が記載されているが,一の位には何も記載がされていないときは,当該入札書による入札は無効である。
1 不動産競売の入札書の入札価額欄の記載の不備と入札の効力 2 不動産競売の入札が入札書の入札価額欄の記載の不備により無効であるとされた事例
民事執行法64条,民事執行法188条,民事執行規則38条2項4号,民事執行規則49条,民事執行規則173条1項
判旨
不動産競売の入札において、入札価額は入札書の一義的に明確な記載を要する必要的記載事項であり、記載に不備があり一義的に明確でない場合は、他の入札価額より高額であることが明らかであっても、その入札は当然に無効となる。
問題の所在(論点)
入札価額欄の一部(一の位)が空欄である場合、その余の桁の記載から最高価額であることが客観的に推認できるときであっても、民事執行法上の適法な入札として有効に認められるか。
規範
入札価額は、入札書における必要的記載事項(民事執行規則38条2項4号等)である。したがって、入札価額欄の記載に不備があり、記載内容からみて入札価額が一義的に明確であると認められないときは、そのこと自体により、当該入札は無効となる。
重要事実
不動産の期間入札において、抗告人は入札価額欄の「千万」から「十」の位までは数字を記載したが、「一」の位を空白のまま提出した。なお、当該入札価額は、一の位にいかなる数字(0〜9)を補填したとしても、他の入札者の入札価額を上回る状態であった。
事件番号: 平成26(許)15 / 裁判年月日: 平成26年11月4日 / 結論: 棄却
不動産強制競売事件の期間入札において,最高の価額で買受けの申出をしたAの入札が無効であるのに,執行官がこれを誤って有効と判断しAを最高価買受申出人と定めたため,執行裁判所がAに対する売却不許可決定をし,これが確定した場合に,①上記期間入札において入札をしたのはAとBのみであった,②Bは,上記売却不許可決定の確定後,なお…
あてはめ
本件入札書は位ごとに区切られた枠内に数字を記載する形式であるが、一の位が空白である以上、客観的な記載内容から入札価額を一義的に特定することはできない。一の位にどの数字を入れても最高価額になるという事情があっても、必要的記載事項である価額自体の不明確さは解消されず、記載不備による無効を免れない。
結論
抗告人の入札は無効である。一の位が空欄である以上、入札価額が一義的に明確とはいえないため、執行官が売却許可決定の前提となる適法な入札として取り扱うことはできない。
実務上の射程
執行手続の明確性・安定性を重視する判例である。答案上は、民事執行手続における書面主義・形式的審査の厳格さを論じる際の根拠として活用できる。特に「一義的に明確」であるか否かが無効判断の基準となる点に注目すべきである。
事件番号: 平成12(許)52 / 裁判年月日: 平成13年4月13日 / 結論: 棄却
抵当権に基づく不動産競売においては,抵当権の不存在又は消滅を売却許可決定に対する執行抗告の理由とすることはできない。
事件番号: 平成22(許)2 / 裁判年月日: 平成22年8月25日 / 結論: 棄却
1 担保不動産競売事件の期間入札において,執行官が,最高の価額で買受けの申出をした入札人の入札を誤って無効と判断し,他の者を最高価買受申出人と定めて開札期日を終了した場合には,執行裁判所は,誤って最高価買受申出人と定められた者に対する売却を不許可とした上で,当初の入札までの手続を前提に改めて開札期日及び売却決定期日を定…
事件番号: 令和2(ク)275 / 裁判年月日: 令和2年9月2日 / 結論: 破棄自判
担保不動産競売の手続において,最高価買受申出人が受けた売却許可決定に対し,他の買受申出人は,特段の事情のない限り,民事執行法188条において準用する同法71条4号イに掲げる売却不許可事由を主張して執行抗告をすることはできない。
事件番号: 平成18(許)21 / 裁判年月日: 平成18年10月27日 / 結論: 破棄自判
登録自動車を目的とする民法上の留置権による競売においては,その被担保債権が当該自動車に関して生じたことが主要事実として認定されている確定判決であれば,債権者による当該自動車の占有の事実が認定されていなくとも,民事執行法181条1項1号所定の「担保権の存在を証する確定判決」に当たる。