担保不動産競売の手続において,最高価買受申出人が受けた売却許可決定に対し,他の買受申出人は,特段の事情のない限り,民事執行法188条において準用する同法71条4号イに掲げる売却不許可事由を主張して執行抗告をすることはできない。
担保不動産競売の手続において最高価買受申出人が受けた売却許可決定に対し他の買受申出人が民事執行法188条において準用する同法71条4号イに掲げる売却不許可事由を主張して執行抗告をすることの許否
民事執行法65条1号,民事執行法71条4号イ,民事執行法74条1項,民事執行法188条
判旨
担保不動産競売において、他の買受申出人は、最高価買受申出人が売却の適正な実施を妨げた(民執法71条4号イ)ことを理由に売却許可決定への執行抗告をすることは原則としてできない。
問題の所在(論点)
最高価買受申出人に売却不許可事由(民執法71条4号イ)がある場合、他の買受申出人は売却許可決定に対する執行抗告をする適格(民執法74条1項の「自己の権利が害されること」)を有するか。
規範
売却許可決定に対する執行抗告(民事執行法74条1項)は、当該決定により「自己の権利が害されることを主張するとき」に限り許容される。同法71条4号イに掲げる売却不許可事由がある場合、裁判所は改めて売却手続をやり直すべきであり、他の買受申出人は当然に売却許可を受けられる立場にはない。したがって、特段の事情のない限り、他の買受申出人は当該事由を主張して執行抗告をすることはできない。
重要事実
担保不動産競売の期間入札において、次順位の買受申出人(抗告人)が、最高価買受申出人の行為が売却不許可事由(民執法71条4号イ)に該当すると主張して、執行抗告を申し立てた。抗告人の主張によれば、最高価買受申出人は抗告人から入札予定額の開示を受けていながら、告知なくその額を上回る入札を行い、売却の適正な実施を妨げたというものである。
事件番号: 平成26(許)15 / 裁判年月日: 平成26年11月4日 / 結論: 棄却
不動産強制競売事件の期間入札において,最高の価額で買受けの申出をしたAの入札が無効であるのに,執行官がこれを誤って有効と判断しAを最高価買受申出人と定めたため,執行裁判所がAに対する売却不許可決定をし,これが確定した場合に,①上記期間入札において入札をしたのはAとBのみであった,②Bは,上記売却不許可決定の確定後,なお…
あてはめ
民執法71条4号イの趣旨は、売却の適正な実施を確保することにある。仮に同条の事由により最高価買受申出人への売却が不許可となっても、手続は原則としてやり直される。他の買受申出人が売却許可決定を受けられるわけではなく、再度の入札機会を失うにすぎない。本件抗告人は「あらかじめ告知があれば自らが最高価入札をした可能性がある」と主張するにとどまり、権利を害されたとする特段の事情は認められない。
結論
他の買受申出人は、特段の事情のない限り、民執法71条4号イの事由を理由とする執行抗告をなしえず、本件抗告は不適法として却下される。
実務上の射程
執行手続における「不服申立権者」の範囲を限定する射程を持つ。民執法74条1項の「権利が害される」とは、不許可事由の存在により反射的に受ける利益(再入札の機会等)の侵害では足りず、その決定によって直接的に法的地位が損なわれる必要があることを明確にした。答案上は、執行抗告の適格が問われる場面で「反射的利益の侵害」を排斥する論拠として活用できる。
事件番号: 平成12(許)52 / 裁判年月日: 平成13年4月13日 / 結論: 棄却
抵当権に基づく不動産競売においては,抵当権の不存在又は消滅を売却許可決定に対する執行抗告の理由とすることはできない。
事件番号: 平成22(許)2 / 裁判年月日: 平成22年8月25日 / 結論: 棄却
1 担保不動産競売事件の期間入札において,執行官が,最高の価額で買受けの申出をした入札人の入札を誤って無効と判断し,他の者を最高価買受申出人と定めて開札期日を終了した場合には,執行裁判所は,誤って最高価買受申出人と定められた者に対する売却を不許可とした上で,当初の入札までの手続を前提に改めて開札期日及び売却決定期日を定…
事件番号: 平成15(許)23 / 裁判年月日: 平成15年11月11日 / 結論: 棄却
1 不動産競売の入札の手続において,入札書の入札価額欄の記載に不備があり,同欄の記載内容からみて,入札価額が一義的に明確であると認められないときは,その入札書による入札は無効である。 2 不動産競売の入札の手続において,位ごとに区切られた入札価額欄の枠内に各位の数字を記載するものとされた入札書が用いられ,その千万から十…
事件番号: 令和3(許)7 / 裁判年月日: 令和3年6月21日 / 結論: 破棄自判
担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け,同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合,当該債務者の相続人は,民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債務者」に当たらない。