担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け,同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合,当該債務者の相続人は,民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債務者」に当たらない。
担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け,同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合における,当該債務者の相続人の民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債務者」該当性
民事執行法68条,民事執行法71条2号,民事執行法188条,破産法253条1項本文
判旨
担保不動産競売の債務者が免責許可決定を受け、被担保債権がその効力を受ける場合、当該債務者の相続人は民事執行法68条にいう「債務者」に該当しない。
問題の所在(論点)
担保不動産競売において、免責許可決定により被担保債権の弁済責任を免れた債務者の相続人が、民事執行法68条(188条準用)にいう「債務者」として買受けを禁止されるか。
規範
民事執行法68条が債務者の買受けを禁止する趣旨は、①債務者は被担保債権の全額を弁済する責任を負い、買受けより弁済を優先すべき立場にあること、②買受けを認めても配当後に再度の強制執行を受ける可能性があり買受けの必要性に乏しいこと、③代金不納付により手続を阻害するおそれが類型的に高いことにある。したがって、免責許可決定の効力により債務者の相続人が被担保債権の弁済責任を負わなくなった場合には、上記趣旨が妥当しないため、同条の「債務者」に含まれないと解すべきである。
重要事実
不動産所有者Aに対し担保権実行による競売が開始された。Aは破産手続において免責許可決定を受け、その後に死亡した。Aの子である抗告人らはAを相続したが、本件競売の被担保債権は免責許可の効力を受けるものであった。抗告人が本件競売で最高価買受申出人となったところ、執行裁判所は、抗告人が「債務者」の相続人として買受資格を欠く(民執法188条、71条2号、68条)とし、売却不許可決定を行った。
事件番号: 令和2(ク)275 / 裁判年月日: 令和2年9月2日 / 結論: 破棄自判
担保不動産競売の手続において,最高価買受申出人が受けた売却許可決定に対し,他の買受申出人は,特段の事情のない限り,民事執行法188条において準用する同法71条4号イに掲げる売却不許可事由を主張して執行抗告をすることはできない。
あてはめ
本件では、債務者Aが免責許可決定を受けており、被担保債権はその効力を受けている。そのため、相続人である抗告人は被担保債権を弁済する責任を負わず、債権者による強制的な実現も不可能である。これにより、①弁済を優先すべき義務はなく、②買受け後に同一債権に基づく再度の執行を受けることもないため買受けの必要性も認められる。また、③代金不納付による手続阻害の類型的蓋然性も認められない。よって、抗告人は民執法68条の「債務者」には当たらない。
結論
抗告人は買受資格を有し、抗告人に売却不許可事由があるとした原決定および原々決定は取り消されるべきである。
実務上の射程
免責許可決定により責任が「自然債務」化した後の債務者およびその相続人の地位に関する判断であり、民事執行法上の買受制限の範囲を限定する。相続人が債務を承継せず弁済義務を負わない実態を重視しており、競売実務において形式的な「債務者」概念に囚われず、免責の効力を考慮すべきことを示している。
事件番号: 平成18(許)21 / 裁判年月日: 平成18年10月27日 / 結論: 破棄自判
登録自動車を目的とする民法上の留置権による競売においては,その被担保債権が当該自動車に関して生じたことが主要事実として認定されている確定判決であれば,債権者による当該自動車の占有の事実が認定されていなくとも,民事執行法181条1項1号所定の「担保権の存在を証する確定判決」に当たる。
事件番号: 平成12(許)52 / 裁判年月日: 平成13年4月13日 / 結論: 棄却
抵当権に基づく不動産競売においては,抵当権の不存在又は消滅を売却許可決定に対する執行抗告の理由とすることはできない。
事件番号: 平成26(許)15 / 裁判年月日: 平成26年11月4日 / 結論: 棄却
不動産強制競売事件の期間入札において,最高の価額で買受けの申出をしたAの入札が無効であるのに,執行官がこれを誤って有効と判断しAを最高価買受申出人と定めたため,執行裁判所がAに対する売却不許可決定をし,これが確定した場合に,①上記期間入札において入札をしたのはAとBのみであった,②Bは,上記売却不許可決定の確定後,なお…
事件番号: 平成22(許)2 / 裁判年月日: 平成22年8月25日 / 結論: 棄却
1 担保不動産競売事件の期間入札において,執行官が,最高の価額で買受けの申出をした入札人の入札を誤って無効と判断し,他の者を最高価買受申出人と定めて開札期日を終了した場合には,執行裁判所は,誤って最高価買受申出人と定められた者に対する売却を不許可とした上で,当初の入札までの手続を前提に改めて開札期日及び売却決定期日を定…