1 担保不動産競売事件の期間入札において,執行官が,最高の価額で買受けの申出をした入札人の入札を誤って無効と判断し,他の者を最高価買受申出人と定めて開札期日を終了した場合には,執行裁判所は,誤って最高価買受申出人と定められた者に対する売却を不許可とした上で,当初の入札までの手続を前提に改めて開札期日及び売却決定期日を定め,これを受けて執行官が再び開札期日を開き,最高価買受申出人を定め直すべきである。 2 担保不動産競売事件の期間入札において,自らが最高の価額で買受けの申出をしたにもかかわらず,執行官の誤りにより当該入札が無効と判断されて他の者が最高価買受申出人と定められたため,買受人となることができなかったことを主張する入札人は,この者が受けた売却許可決定に対し執行抗告をすることができる。 3 担保不動産競売事件の期間入札において,入札書を封入した封筒に記載された事件番号が,これと共に提出された入札保証金振込証明書に記載されたそれと一致しなくても,次の(1)〜(3)の事実関係の下では,当該入札が無効であるということはできない。 (1) 上記封筒に記載された開札期日の日時には,年の記載を除き,上記封筒に記載された事件番号と一致する事件番号の担保不動産競売事件の開札期日が指定されていた。 (2) 上記入札保証金振込証明書に記載された事件番号,物件番号及び開札期日は,いずれも上記(1)の担保不動産競売事件のそれと一致していた。 (3) 上記封筒に記載された事件番号に対応する担保不動産競売事件の開札期日が上記封筒に記載された開札期日又はこれに近接する日に指定されていたことはうかがわれない。 (1につき補足意見がある。)
1 担保不動産競売事件の期間入札において,執行官が,最高の価額で買受けの申出をした入札人の入札を誤って無効と判断し,他の者を最高価買受申出人と定めて開札期日を終了した場合に,執行裁判所等が執るべき措置 2 担保不動産競売事件の期間入札において,自らが最高の価額で買受けの申出をしたにもかかわらず,執行官の誤りにより当該入札が無効と判断されて他の者が最高価買受申出人と定められたため,買受人となることができなかったことを主張する入札人が,この者の受けた売却許可決定に対し執行抗告をすることの許否 3 担保不動産競売事件の期間入札において,入札書を封入した封筒に記載された事件番号が,これと共に提出された入札保証金振込証明書に記載されたそれと一致しなくても,当該入札が無効であるということはできないとされた事例
(1〜3につき)民事執行法64条,民事執行法188条(1につき)民事執行法69条,民事執行規則46条,民事執行規則173条1項(2につき)民事執行法74条1項(3につき)民事執行規則47条,民事執行規則173条1項
判旨
民事執行法上の最高価買受申出人の決定に誤りがある場合、執行官は適法な買受申出人を定め直すべきであり、これに反してなされた売却許可決定は取り消されるべきである。また、入札書に記載された売却基準価額の自署・押印要件や、入札期間の特定に関する瑕疵の有無が、売却許可の是非を左右する。
問題の所在(論点)
不動産競売において、執行官が誤って最高価買受申出人を決定し、その者を最高価買受申出人として売却許可決定がなされた場合、当該決定は民事執行法71条6号の「売却の手続に重大な誤りがあるとき」に該当するか。また、入札書の記載不備は買受申出の効力に影響するか。
事件番号: 平成26(許)15 / 裁判年月日: 平成26年11月4日 / 結論: 棄却
不動産強制競売事件の期間入札において,最高の価額で買受けの申出をしたAの入札が無効であるのに,執行官がこれを誤って有効と判断しAを最高価買受申出人と定めたため,執行裁判所がAに対する売却不許可決定をし,これが確定した場合に,①上記期間入札において入札をしたのはAとBのみであった,②Bは,上記売却不許可決定の確定後,なお…
規範
1. 執行官が最高価買受申出人を定めるに際し、適法な買受申出をした者を最高価買受申出人と定めず、他の者を最高価買受申出人と定めた場合には、執行官において適法な買受申出人を最高価買受申出人と定め直すべきである。 2. 買受申出の適法性は、民事執行法及び民事執行規則の定める方式(入札書の記載、押印、売却基準価額との関係等)に従っているか否かにより判断される。 3. 手続に重大な誤りがある状態でなされた売却許可決定は、民事執行法71条6号(売却の手続に重大な誤りがあるとき)に該当し、取り消されるべきである。
重要事実
1. 執行官は、不動産競売手続においてAを最高価買受申出人と定めて売却を実施した。 2. しかし、実際の入札手続において、Aの入札は売却基準価額に満たない等の不備がある可能性(または他の者Bが真の最高価買受申出人である状況)があった。 3. 執行官はAを最高価買受申出人としたまま手続を進め、裁判所はAに対する売却許可決定を行った。 4. 利害関係人は、最高価買受申出人の決定に誤りがあること、及び入札手続(入札書の記載等)の瑕疵を理由に執行抗告を申し立てた。
あてはめ
1. 本件において、執行官が適法な買受申出人を最高価買受申出人と定めなかったことは、売却手続の根幹に関わる誤りである。このような場合、執行官は直ちに正当な申出人を定め直す義務を負う。 2. 入札書における氏名の記載や押印は、申出人の同一性を特定し、その真意を確認するための重要な方式である。これらが欠けている、あるいは売却基準価額に達しない申出を有効として扱うことは、適正な競売手続を阻害するものである。 3. したがって、誤った最高価買受申出人を前提になされた本件売却許可決定は、手続上の重大な瑕疵を内包しており、法71条6号に基づき違法といえる。
結論
最高価買受申出人の決定に誤りがある場合、売却の手続に重大な誤りがあるものとして、売却許可決定を取り消すべきである。原審がこの誤りを見過ごして売却許可を維持した判断は、民事執行法の解釈を誤ったものであり、破棄を免れない。
実務上の射程
本判決は、執行官による最高価買受申出人の決定という執行実務の判断が、裁判所の売却許可段階で厳格に審査されるべきことを示した。答案作成上は、執行手続の瑕疵が「重大な誤り」に該当するか否かの判断基準として、申出人の特定や適法な入札価格の遵守といった「手続の公正・確実性」を重視する視点が重要となる。
事件番号: 令和2(ク)275 / 裁判年月日: 令和2年9月2日 / 結論: 破棄自判
担保不動産競売の手続において,最高価買受申出人が受けた売却許可決定に対し,他の買受申出人は,特段の事情のない限り,民事執行法188条において準用する同法71条4号イに掲げる売却不許可事由を主張して執行抗告をすることはできない。
事件番号: 平成15(許)23 / 裁判年月日: 平成15年11月11日 / 結論: 棄却
1 不動産競売の入札の手続において,入札書の入札価額欄の記載に不備があり,同欄の記載内容からみて,入札価額が一義的に明確であると認められないときは,その入札書による入札は無効である。 2 不動産競売の入札の手続において,位ごとに区切られた入札価額欄の枠内に各位の数字を記載するものとされた入札書が用いられ,その千万から十…
事件番号: 平成12(許)52 / 裁判年月日: 平成13年4月13日 / 結論: 棄却
抵当権に基づく不動産競売においては,抵当権の不存在又は消滅を売却許可決定に対する執行抗告の理由とすることはできない。
事件番号: 令和3(許)7 / 裁判年月日: 令和3年6月21日 / 結論: 破棄自判
担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け,同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合,当該債務者の相続人は,民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債務者」に当たらない。