岡山市議会の各会派に対する政務活動費の交付に関する条例(平成13年岡山市条例第1号)に基づいて交付された政務活動費について,その交付を受けた会派が同条例の定めに適合しない支出に相当する額の不当利得返還義務を負うとした原審の判断に違法があるとされた事例
判旨
政務活動費の収支報告書上の支出の一部に使途基準適合性を欠くものがあっても、支出総額から不適法な額を控除した額が交付額を上回る場合には、交付を受けた会派は不当利得返還義務を負わない。
問題の所在(論点)
政務活動費の支出の一部に使途基準違反が認められる場合において、当該不適法な支出額を直ちに不当利得として返還請求すべき「怠る事実に係る公金の徴収」にあたるか。支出総額と交付額の関係から不当利得の成否を判断すべきかが問題となる。
規範
政務活動費の交付に関する条例において、交付額から使途基準に適合する支出総額を控除した残余を返還すべきものと規定されている場合、不当利得返還義務の有無は個別支出の適否のみで決まるのではない。すなわち、収支報告書上の支出総額から、架空の支出および使途基準に適合しない支出の額を控除した額が、当該年度の政務活動費の交付額を下回らない場合には、会派は市に対する不当利得返還義務を負わないと解するのが相当である。
重要事実
岡山市議会の会派(ネクスト岡山、市民ネット)は、市から政務活動費の交付を受けた。各会派は年度末に収支報告書を提出したが、住民訴訟において一部の支出(印刷代や講座費用)が条例の使途基準に適合しない違法なものであると指摘された。原審は、不適法とされた支出額そのものが返還の対象になると判断したが、会派側は、不適法な支出を除いたとしても、なお適法な支出の総計が交付額を上回っているため、実質的な過払いは生じていないと主張して上告した。
あてはめ
ネクスト岡山については、報告書上の支出総額(15万3468円)から不適法な印刷代(14万0940円)を控除すると1万2528円となり、交付額(13万5000円)を12万2472円下回る。既に返還済みの5万2002円を差し引いた7万0470円についてのみ不当利得が成立する。他方、市民ネットについては、支出総額(451万7612円)から不適法とされた2万5300円を控除しても、なお交付額(445万5000円)を上回る。この場合、条例上の返還規定(交付額-適法な支出総額)に照らせば残余が生じないため、不当利得返還義務は発生しないと解される。
事件番号: 令和4(行ヒ)317 / 裁判年月日: 令和5年12月12日 / 結論: 破棄自判
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結論
支出の一部が不適法であっても、残りの適法な支出の総額が交付額を超えている限り、会派に不当利得は成立せず、市長が返還請求をしないことは違法ではない。
実務上の射程
本判決は、政務活動費の返還義務を「個別支出の違法性」ではなく「年度全体の収支バランス」で捉える枠組みを示した。答案上は、まず条例の返還規定を確認し、本判例の判断枠組み(差引計算)を提示した上で、不適法な支出を除いた後の「適法な支出の総額」と「交付額」を比較して結論を導く必要がある。ただし、補足意見が指摘するように、条例に「使途基準違反があれば個別に返還を命ずる」旨の特則がある場合には、本判例の射程が及ばない可能性がある点に注意を要する。
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