弁護士職務基本規程(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)57条に違反する訴訟行為について,相手方である当事者は,同条違反を理由として,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることはできない。 (補足意見がある。)
弁護士職務基本規程(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)57条に違反する訴訟行為につき,相手方である当事者がその行為の排除を求めることの許否
弁護士法25条1号,弁護士職務基本規程(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)27条1号,弁護士職務基本規程(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)57条
判旨
弁護士職務基本規程57条に違反する訴訟行為の排除を裁判所に求めることの可否
問題の所在(論点)
弁護士職務基本規程57条(共同事務所における職務制限)に違反することを理由として、裁判所に対し訴訟代理人の訴訟行為の排除を求めることができるか。
規範
弁護士法25条1号等の法律に違反する場合には、相手方当事者は訴訟行為の排除を求めることができる。しかし、日本弁護士連合会の会規に過ぎない「弁護士職務基本規程」57条に違反するにとどまる行為については、懲戒の原因となり得ることは別として、当該訴訟行為の効力に影響を及ぼすものではない。したがって、同規程違反を理由として裁判所に訴訟行為の排除を求めることはできない。
重要事実
相手方(製薬会社)の組織内弁護士として本件訴訟の準備を担当していたA弁護士が、抗告人(被告側)の代理人である阿部弁護士らが所属する法律事務所へ移籍した。相手方は、A弁護士が職務基本規程27条1号により職務を行い得ない事件について、同一事務所の阿部弁護士らが受任することは規程57条に違反すると主張し、阿部弁護士らの訴訟行為の排除を申し立てた。なお、A弁護士は申立て直後に当該事務所を退所している。
事件番号: 令和4(許)3 / 裁判年月日: 令和4年6月27日 / 結論: 破棄自判
株式会社である原告の設置した取締役責任調査委員会により、原告の取締役であった被告に対する事情聴取が行われた後、原告が、被告に対し、上記委員会の委員であった弁護士を訴訟代理人として、会社法423条1項に基づく損害賠償責任を追及する訴訟を提起した場合において、上記委員会が被告の上記責任の有無等を調査、検討するために設置され…
あてはめ
民事訴訟法上、弁護士は委任を受けた事件について訴訟行為をすることが認められている(54条1項、55条)。法律(弁護士法25条等)に違反する場合と異なり、基本規程57条は日弁連が制定した倫理・行為規範としての会規にすぎない。規程57条に違反する行為を具体的に禁止する法律の規定は存在しないため、同条違反は私法上の効力や訴訟法上の効力には直接影響せず、裁判所による排除の対象とはならないと解される。したがって、原審が排除を認めた判断は法令の解釈を誤ったものである。
結論
基本規程57条違反を理由として訴訟行為の排除を求めることはできないため、本件申立てを却下した第1審の判断を維持し、抗告を棄却する。
実務上の射程
共同事務所内でのコンフリクト(利益相反)に関する基本規程違反は、懲戒手続や内部規律の問題として処理されるべきであり、訴訟手続内での排除(代理権の剥奪)を基礎付けるものではない。ただし、弁護士法25条(個別弁護士の受任禁止)に直接抵触する場合については、引き続き裁判所による排除の余地が認められる点に注意を要する。
事件番号: 昭和37(ク)101 / 裁判年月日: 昭和37年5月31日 / 結論: 却下
裁判所法第七条第二号は、憲法第三二条に違反しない。(大法廷昭和二三年三月一〇日判決、同二五年二月一日判決参照)
事件番号: 平成29(許)6 / 裁判年月日: 平成29年10月5日 / 結論: 破棄自判
1 弁護士法25条1号に違反する訴訟行為及び同号に違反して訴訟代理人となった弁護士から委任を受けた訴訟復代理人の訴訟行為について,相手方である当事者は,裁判所に対し,同号に違反することを理由として,上記各訴訟行為を排除する旨の裁判を求める申立権を有する。 2 弁護士法25条1号に違反することを理由として訴訟行為を排除す…
事件番号: 令和7(マ)490 / 裁判年月日: 令和7年12月18日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】業務停止処分を受けた弁護士が、その期間中に代理人としてした不服申立ては、懲戒制度の公益的趣旨を没却するような重大な違反がある場合には、本人の追認により有効となる余地はなく、補正不能な不適法なものとして却下される。 第1 事案の概要:弁護士Aは、婚姻費用分担調停における書記官忌避申立てを却下する決定…