令和元年7月21日施行の参議院議員通常選挙当時,平成30年法律第75号による改正後の公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,上記規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。 (意見及び反対意見がある。)
公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性
憲法14条1項,憲法15条1項,憲法15条3項,憲法43条1項,憲法44条,公職選挙法14条,公職選挙法別表第3
判旨
参議院議員選挙の定数配分規定の合憲性判定において、最大較差3.00倍の状態は、国会が較差是正の方向性を維持しつつ漸進的な是正を図っている過程にあると評価できるため、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にはなく、憲法14条1項等に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法14条および別表第3の参議院議員定数配分規定が、投票価値の不平等を理由に憲法14条1項等に違反し、本件選挙が無効となるか。
規範
選挙制度の決定は国会の広い裁量に委ねられるが、投票価値の平等は憲法上の要請であり、他の政策的目的と調和的に実現されるべきである。定数配分規定が憲法に違反するか否かは、①投票価値の著しい不平等状態が生じているか、②それが相当期間継続しているにもかかわらず是正措置を講じないことが国会の裁量権の限界を超えると認められるか、の二段階で判断する。
重要事実
令和元年7月の参議院議員選挙(本件選挙)当時の選挙区間最大較差は3.00倍であった。平成27年改正で「合区」が導入され、かつての5倍前後の較差から約3倍まで縮小していた。平成30年改正では、合区を維持したまま埼玉県選挙区の定数を2増し、さらに比例代表に「特定枠」を導入したが、抜本的な仕組み自体の見直しには至っていなかった。
あてはめ
最大較差3.00倍は、長年続いた5倍前後の水準から平成27年改正で大幅に縮小した結果を維持し、さらに僅かではあるが縮小させたものである。平成30年改正は、合区解消を望む強い意見がある中で、較差拡大を防ぐため合区を維持し、総定数増という手法で埼玉県を増員するなど、較差是正の方向性を維持する配慮が認められる。参議院の二院制上の役割や半数改選制等の性質上、是正が漸進的になる面は否定できず、立法府が是正を指向する姿勢を失ったとは断じられない。
結論
本件選挙当時の投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、本件定数配分規定は憲法に違反しない。
実務上の射程
参議院選挙における「較差3倍」が合憲性の重要な境界線であることを示唆しつつ、単なる数値のみならず「是正に向けた国会の姿勢(プロセス)」を重視する。答案では、抜本的改革が政治的に困難であることや、合区維持・微増といった是正の継続性を評価する文脈で活用する。
事件番号: 令和5(行ツ)54 / 裁判年月日: 令和5年10月18日 / 結論: 棄却
令和4年7月10日に行われた参議院議員通常選挙当時、平成30年法律第75号による改正後の公職選挙法14条、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、上記規定が憲法14条1項等に違反するに至っていたという…