平成28年7月10日施行の参議院議員通常選挙当時,平成27年法律第60号による改正後の公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,上記規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。 (意見及び反対意見がある。)
公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性
憲法14条1項,憲法15条1項,憲法15条3項,憲法43条1項,憲法44条,公職選挙法14条,公職選挙法別表第3
判旨
参議院議員選挙の定数配分規定の合憲性は、投票価値の不平等が著しいか、および是正措置を講じないことが裁量権の限界を超えるかにより判断される。本件選挙は合区の導入により最大較差が3.08倍まで縮小し、抜本的見直しの決意も示されていることから、違憲の問題が生ずる著しい不平等状態にあったとはいえず、合憲である。
問題の所在(論点)
公職選挙法14条・別表第3の参議院(選挙区選出)議員の定数配分規定が、投票価値の平等の要請に反し、憲法14条1項等に違反するか。特に、合区導入後も依然として残る約3倍の較差が「著しい不平等状態」に該当するか、および国会の裁量権の範囲内か。
規範
憲法14条1項等は投票価値の平等を要求するが、選挙制度の決定は国会の合理的な裁量に委ねられる。具体的には、①人口変動の結果、投票価値の著しい不平等状態が生じ、かつ、②それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界を超えると判断される場合に、当該定数配分規定は憲法に違反する。参議院の特性(二院制、半数改選、長期の任期等)に鑑み、都道府県の意義や実体を要素として考慮すること自体は裁量の範囲内であるが、それが著しい不平等を長期化させる要因となる場合には、仕組み自体の見直しが求められる。
重要事実
平成28年施行の参議院議員選挙において、一票の較差が最大3.08倍に達していた。これに先立つ平成24年・26年の大法廷判決は、都道府県を単位とする現行方式を改めるなどの抜本的見直しを求めていた。国会は、平成27年改正により、参議院創設以来初めての「合区」(鳥取・島根、徳島・高知)を導入し、10増10減の定数改正を行った。その結果、5倍前後で推移していた較差が約3倍まで縮小した。また、同法附則には次々回選挙に向けた「抜本的な見直しについて必ず結論を得る」旨の規定が置かれた。
あてはめ
まず、①について、平成27年改正は単なる定数増減にとどまらず、合区という手法により都道府県を各選挙区の単位とする仕組み自体を見直したものである。これにより、長年5倍前後で推移してきた最大較差が3.08倍(基準時2.97倍)まで大幅に縮小した。この改正は、累次の大法廷判決の指摘に沿った是正措置といえる。次に、②について、改正法附則において将来の抜本的見直しに向けた立法府の強い決意が示されており、再び大きな較差が生じることを防ぐ配慮もなされている。多くの選挙区で都道府県単位が維持されているとしても、これらを総合すれば、本件選挙当時に違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえない。
結論
本件定数配分規定は、憲法14条1項等に違反するものではなく、合憲である。したがって、本件選挙を無効とする上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
参議院選挙における「合区」導入の合憲性を初めて認めた重要判例。較差3倍程度であれば「違憲状態」ですらなくなるとの判断を示しており、衆議院(2倍基準)よりも緩やかな基準が維持されている。答案では、国会の是正努力(合区の断行)と、附則による将来の是正の確約(抜本的見直し条項)を評価の重要ポイントとして用いるべきである。
事件番号: 平成20(行ツ)209 / 裁判年月日: 平成21年9月30日 / 結論: 棄却
公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は,平成19年7月29日施行の参議院議員通常選挙当時,憲法14条1項に違反していたものということはできない。 (補足意見及び反対意見がある。)