1 郵便の業務を担当する無期契約労働者に対して年末年始勤務手当を支給する一方で,郵便の業務を担当する月給制契約社員又は時給制契約社員である有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,両者の間に職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があることを考慮しても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たる。 (1) 上記年末年始勤務手当は,郵便の業務についての最繁忙期であり,多くの労働者が休日として過ごしている12月29日から翌年1月3日までの期間において,同業務に従事したことに対し,その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有するものである。 (2) 上記年末年始勤務手当は,上記無期契約労働者が従事した業務の内容やその難度等に関わらず,所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり,その支給金額も,実際に勤務した時期と時間に応じて一律である。 2 郵便の業務を担当する無期契約労働者に対して祝日を除く1月1日から同月3日までの期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で,郵便の業務を担当する月給制契約社員又は時給制契約社員である有期契約労働者に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違は,両者の間に職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があることを考慮しても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たる。 (1) 上記期間については,上記無期契約労働者に対して特別休暇が与えられており,これは,多くの労働者にとって当該期間が休日とされているという慣行に沿った休暇を設けるという目的によるものであるところ,上記祝日給は,特別休暇が与えられることとされているにもかかわらず最繁忙期であるために当該期間に勤務したことについて,その代償として,通常の勤務に対する賃金に所定の割増しをしたものを支給することとされたものである。 (2) 上記有期契約労働者は,契約期間が6か月以内又は1年以内とされるなど,繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく,業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれている。 3 郵便の業務を担当する無期契約労働者に対して扶養手当を支給する一方で,郵便の業務を担当する月給制契約社員又は時給制契約社員である有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,両者の間に職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があることを考慮しても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たる。 (1) 上記無期契約労働者に対して扶養手当が支給されているのは,当該無期契約労働者の生活保障や福利厚生を図り,扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものである。 (2) 上記有期契約労働者は,契約期間が6か月以内又は1年以内とされており,有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者が存するなど,相応に継続的な勤務が見込まれている。
1 無期契約労働者に対して年末年始勤務手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例 2 無期契約労働者に対して祝日を除く1月1日から同月3日までの期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で有期契約労働者に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例 3 無期契約労働者に対して扶養手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
(1~3につき)労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条
判旨
有期雇用労働者と無期雇用労働者との間の年末年始勤務手当、年始期間の祝日給、及び扶養手当の支給有無に関する相違は、各手当の支給趣旨が有期雇用労働者にも妥当する場合には、旧労働契約法20条にいう不合理なものに当たる。
問題の所在(論点)
有期雇用労働者である契約社員に対し、年末年始勤務手当、年始の祝日給、及び扶養手当を支給しないという労働条件の相違が、旧労働契約法20条にいう「不合理と認められるもの」に当たるか。
規範
同一の使用者と労働契約を締結している有期雇用労働者と無期雇用労働者との労働条件の相違が、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して不合理であるか否かは、各労働条件(手当等)の性質及び支給趣旨を個別に検討し、その趣旨が有期雇用労働者にも妥当するかという観点から判断すべきである。
重要事実
日本郵便において、正社員には年末年始勤務手当(最繁忙期の特殊勤務に対する対価)、年始の祝日給(特別休暇中の勤務の代償)、扶養手当(長期雇用を前提とした生活保障)が支給されていた。一方、郵便外務事務に従事する時給制・月給制の契約社員にはこれらが一切支給されていなかった。契約社員も正社員と同様に最繁忙期に勤務しており、契約更新を繰り返すことで相応に継続的な勤務が見込まれる実態があった。
あてはめ
1.年末年始勤務手当:最繁忙期かつ一般の休日における勤務の特殊性に対する対価であり、実際に勤務したこと自体を支給要件とするため、その趣旨は契約社員にも妥当する。2.年始の祝日給:慣習的な休日における勤務の代償という趣旨は、繁忙期に勤務する契約社員にも妥当する。3.扶養手当:継続的な雇用の確保という目的は、契約更新を重ねて継続勤務が見込まれる契約社員にも妥当する。以上より、職務内容や変更範囲の相違を考慮しても、これらを一切支給しないことは不合理である。
結論
年末年始勤務手当、年始の祝日給、及び扶養手当を正社員に支給する一方で、契約社員に支給しないという労働条件の相違は、労働契約法20条(旧法)に違反する不合理なものに当たる。
実務上の射程
手当ごとの支給趣旨を個別具体的に検討する手法(不合理性の個別検討)を確立した。福利厚生や生活保障的性格の強い手当については、職務内容の差異よりも「継続勤務の期待」や「特定の時期の勤務」といった事実関係を重視して不合理性を肯定する傾向を示す重要判例である。
事件番号: 令和1(受)1055 / 裁判年月日: 令和2年10月13日 / 結論: その他
私立大学の教室事務を担当する無期契約労働者に対して賞与を支給する一方で,同事務を担当する時給制のアルバイト職員である有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,次の(1)~(5)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当た…